<31>彼女の誕生日
お久しぶりです!
今回の話は、優奈の誕生日です!
ではどうぞ!
夏休み終盤の八月二十日。
今日は俺の幼馴染みであり、彼女でもある蒼羽優奈の誕生日である。
そして、俺は今、その本人の部屋にいる。
別に驚かそうとか、不法侵入をしたとかではない。
今朝、いつも通り優奈に起こされ、着替えさせられ、顔を洗い、歯を磨いたら、優奈の家に連れてこられ、自室に通され、待っていてと言われ、待っている状況だ。
うん。俺にもよく状況が分かってない。
いつもなら、朝ごはんを用意してくれ、食べているのに。
「はーい、お待たせ~。朝ごはんできたよー」
「今日は優奈の家でご飯食べるんだな」
「うん。ほら、今日って」
「優奈の誕生日だろ」
「うん! だからね、あきくんのお家でも良かったけど、たまには私の家で一日を過ごしてもいいかなって」
まあ、今日の主役は優奈だし。
優奈のしたいこと、やりたいことを叶えてあげよう。
いつも俺を優先してくれているだろうし。
「たまには彼女の家で過ごすのもいいな」
「でしょ! えへへ」
朝ごはんを食べ、優奈は下で皿などを洗っている。
俺はと言うと、彼女の部屋でごろごろとしている。
分かっているさ。
今日は優奈の誕生日なのに、場所が違うだけで、いつもやっていることが変わらないことぐらい。
でもさ、俺ができることってあまりないんだよ。
逆に何かやろうとしたら、余計に優奈の仕事を増やす可能性だってあるじゃん?
それなら、いつも通りに過ごしている方がいいかと。
優奈も、
「あきくんは私の部屋でゆくっりしてていいよ。眠たくなったら、ベッド使っていいからね」
と言っていた。
何もしないと言っても、こう見えてちゃんとプレゼントは用意してある。
何かはまだ秘密だ。
「そういや……優奈の部屋に来るの久しぶりだな」
去年のテスト勉強を教えてもらった以来だ。
今年は、俺の部屋で教えてもらった。
確か、去年は――優奈が教師のコスプレをしていた。
「また見たいな……」
おっと、心の声が漏れてしまった。
コスプレの他には……そうだ、タンスを漁ろうしたんだ。
タンスを漁るってワードがすごいな。
あの時、優奈にバレたけど、見てもいいよと言われたんだよな。
普通なら嫌われ、フラレても仕方がないけどな。
そして、一番下の引出しを開けようしたら違うって止められんだよな。
「あの時の優奈の反応からして、俺に見られたらダメなやつ系だよな」
まあ、女の子だし。女の子特有のものとかあるし。
う~ん……開けてはいけないと言われると開けたくなる。
パッと開けて、見たらまずいものだったら、パッと締めればいいか。
優奈は……まだ来ないな。
「よし……いざ、パンドラの箱ならぬ――パンドラ引出しを開けるか」
四段あるタンスの一番下の引出しに手を掛ける。
そして、ゆっくりと手を引いていく。
パンドラの引出しの中身は――数冊のノートだった。
手に取り、見ると『あきくんとの思い出』と書かれていた。
「日記か?」
日記か……これはこれで、中身を見るのは躊躇うな。
日記なんてものは、内容を見られるのが一番恥ずかしいものだ。
しかし! こういうのが一番見たい!
しかし、やはり、勝手に見るのは不味いと思う。
(日記うんぬの前にタンスを開けちゃっているけど)
気が付けば、俺の手は勝手に表紙を捲っていた。
コスプレテスト勉強の話は<14>です。
暇だったら読み返して見てください。
決して、女の子の部屋のタンスを勝手に開けたらダメだからね?
あきくんと優奈だから許されるものだ。