<1> 学校の日常
夏が近いせいか最近はすごく暑い。
学校に行くのも面倒なのに、こんなに暑かったらさらに行くのが面倒になる。
それに太陽が輝いている。普段は引きこもりの俺からしたら眩しすぎて目が開けられない。まるで土から出てきたもぐらの気分だ。
太陽は明るいが俺の気持ちは暗めだ。なぜこんな思いをしてまで学校なんかに行かなければいけないんだ。
「あき君そんなに下を向いていたら危ないよ」
「眩しくて目が開けれないんだよ」
「じゃあ手繋いで行く?」
手を繋いで行けば、下を向いていても電柱とかにぶつからないから楽だな。
けど恥ずかしいからやめよ。それに朝からクラスのやつらにからかわれるのは面倒だ。
「やめておくよ」
「残念、せっかく手を繋いで行けると思ったのに……」
太陽が輝くなかなんとか学校につき、教室に向かった。ちなみに俺と優奈は同じクラスだ。
席につくなり俺は体を前に倒し机に伏せる形になった。窓から入る日光が眩しい、でも席を立ってカーテンを閉めに行くのは面倒。
誰か閉めてくれないかと考えていたら優奈が来た。優奈に頼んでカーテンを閉めてもらおうかな。
「どうしたの目をパチパチさせて」
「窓の日光が眩しくて、だからカーテンを閉めてくれない?」
「いいよ、閉めてきてあげる」
優奈はなぜかよく俺の言うことを聞いてくれる。普通はカーテンぐらい自分で閉めろと文句を言われるだろう。
今に始まったわけではない、昔から優奈は俺の言うことをよく聞いてくれた。
前に俺が独り言でアイスが食べたいと言ったら、優奈がアイスを買ってきたこともあった。それも俺が食べたかったものだ。
今思えば誰かの世話をするのが好きなのかな。将来はいいお嫁さんになりそうだ。旦那様はきっと養われるだろな、羨ましい。
勝手に優奈の将来を想像していたら優奈がカーテンを閉め帰ってきた。
「カーテン閉めてきたけど、ボーとしてどうしたの」
「いや将来優奈の旦那様になる人は羨ましいなって思って」
「なんで羨ましいの」
「だって優奈って人の世話するの好きだろ」
「そんなことはないけど、世話をしたいと思うのは誰でもいいってわけじゃないよ」
「そうなんだ」
「そろそろチャイム鳴るから戻るね」
「うん、カーテンもありがとう」
優奈が席に戻り、チャイムも鳴った。面倒な授業が始まると思うと眠くなってくる。
優奈は誰にでも世話をやきたいというわけではないなら、なんで俺にはあんなに世話をやくのだろ。俺がだらしないからだろな。
こんな事を考えていたら1時間目の終わりのチャイムが鳴った。ノートをまったく書いてなかった。あとで優奈に見せてもらうことにしよう。
休憩時間だから机に顔を伏せて目をつぶっていたら、だんだん眠くなりそのまま眠ってしまっていた。
「あき君お昼だよ、そろそろ起きて」
「もうお昼か」
優奈に起こされ顔をあげた。お昼まで眠ってしまっていたようだ。
俺たちは屋上に行き、いつもように優奈が作った弁当を食べる。屋上には二人しかいない、以外にみんな屋上が開いていること知らない。
登校時は暑かったが、今は涼しい風がふいている。太陽も雲に隠れ、ちょうどいい明るさでまぶくしない。
優奈はシートを敷いて弁当を広げていた。いつも思うが準備もいいし、手際もいい。
「あき君準備出来たよ、食べよ」
「うん」
弁当に入っているものは俺が好きなものばかりだ。それにちゃんと栄養面のことも考えてある。
毎日弁当を作ってくれるが、俺が弁当を作ってくれと頼んだわけではない。ある日突然弁当を作ってきて、それからは毎日作るようになった。
お昼も食べ終わり、まだ時間も余っている。残りの時間の過ごし方は決まっている。
「今日もお昼寝する?」
「眠たいからする」
昼食のあとは優奈の膝枕で昼寝をしている。今日は涼しいからよく寝れそうだ。
チャイムがなる五分前には起こしてくれるので安心して寝ていられる。俺は眠りに落ちていった――
最近は決まって同じ夢を見るようになった。夢の内容は昔俺がいじめられていた頃の話だ。
俺が無気力になったのもこれが原因でもあるかも知れない。そして優奈が尽くすようになってきたのもこの頃だ。
それからはずっと優奈に甘えている。優奈はなにも言わないが本当は面倒になってきてるかも知れない。
もし捨てられたらどうなるんだろか、自分で生きようとするのかそれとも死を選ぶのか。
「あき君そろそろ起きて、チャイム鳴るよ」
「もう終わりか」
昼休みも終わり教室に戻り、午後の授業が始まった。午後の授業はなんとか起きていられた。
授業もすべて終わりあとは帰るだけだ。もちろん優奈と帰る。
帰り道今日の夜はどうしよかと考えていたら優奈が「今日の夜ご飯は一緒に食べよう」と誘ってきた。俺はいいよと答えた。
家が隣同士なだけあって夜は少し帰りが遅くなっても問題ない。
優奈の親は泊まってきてもいいと言っているらしい。俺の親も前から好きな時に泊まっていっていいと言っていた。
べつに優奈が家に泊まってもなんの問題もないから俺もべつにいいと思っている。
気がつけば家にそろそろつく頃だ。帰っても特に何もしないけど。