<12>昔のこと
「ねぇねぇ見てー、小さい頃のあき君の写真が出てきたよ」
「何歳頃だろうな」
「私とあき君の写真もあるよ」
俺と優奈が今見ているのはアルバムだ。
部屋を少し片付けていたら奥からアルバムが出てきて、優奈が夢中になっている。
俺も懐かしいなと思いながら一緒に見ている。
俺と優奈は生まれた病院も一緒で幼稚園、小学校、中学校そして高校もずっと一緒だ。
偶然なのかクラスもずっと一緒だった。
一時期優奈とあまり関わらなかった時もあった。別に優奈を嫌いになったとかではなく思春期特有の少し恥ずかしいかったからだ。
だけどまた優奈と関わるようになった。あの日から。
「小学生のあき君だ。すごく可愛い。こっちの水着姿も可愛い。この寝顔も可愛い~」
「なんか恥ずかしいからやめてくれ」
「えー、だってすごく可愛いんだもん。次のページは…………」
ん? どうしたんだ、急に静かになった。
俺はそっと覗き込み写真を見た。それは中学校の頃の写真だった。
「……優奈」
「っ!どうしたのあき君?」
「いや、急に静かになったから」
「あ、あはは。ちょっとはしゃぎすぎて疲れただけだよ」
「少し休憩するか」
「うん・・・」
中学の頃の写真。優奈にとっては嫌な思いで。
「ねぇ、あき君」
「なに?」
「中学校の頃のこと覚えてる?」
「覚えてるよ」
「私が真夏の体育倉庫に閉じ込められて、それをあき君が助けてくれたんだよね」
「そんなこともあったな」
中学の頃の話だ。
当時優奈はいじめに遭っていた。
別に優奈が誰かに何かをしたわけでもなく、誰かをいじめていたこともない。
優奈はよく男子から告白をされていた、だけど優奈は毎回断っていた。
そんなある日学校に行くと下駄箱の上靴が無くなっていた。
優奈は職員室でスリッパを借り教室に行った。教室に入ると誰も優奈と目を合わそうとしなかった。
「ねえ・・・」
優奈が友達の所に行くと、その友達も優奈と目を合わさずどこかに行った。
「なんで……」
なんでみんな私を避けるの。誰も目を合わしてくれないの。
優奈はその日ずっと一人で過ごした。
次の日も誰も優奈と目を合わさず、誰も近づこうとしなかった。
それだけではなく机には落書きをされていた。
優奈はなぜこんなことをされているか分からなかった。
ある日優奈がトイレに入っていると会話が聞こえた。
「あいつなんで毎日学校にくるだろうね」
「あいつって優奈のこと?」
「そうそうそいつ」
「あいつよく男子から告白されるからって他の女子のこと見下しているのよ」
「それ少し分かる。なんか余裕って感じ出してるよね」
「自分が少しモテるからって調子に乗ってるよね」
全部女子たちの勝手な想像だった。
優奈は少しも調子になど乗っていなかった。
だけど毎日少しずつメンタルが弱ってきている優奈はそう思わなかった。
私知らないうちに調子に乗っていたのかな
だからみんな私を嫌うんだ。仕方ないよね。
「…………」
――優奈の心は壊れた。
真夏の暑い日。その日は体育があった。
その日日直だった優奈は先生に体育で使った道具の片付け任せられた。
道具を体育倉庫で片付けていたら急に扉を閉められた。
扉を開けようとしたが開かなかった。外から棒のような物で押さえられていたからだ。
真夏の暑い日、密室の体育倉庫はサウナのような暑さだ。
体育で動き、水分補給をしていない優奈は危険な状態だった。
教室では次の授業が始まっていた。
先生がみんなに優奈をことを聞くと、女子が「お腹が痛いってトイレに行っています」と言った。これは嘘だ。
だが先生はそれを信じて授業を始めた。
その頃、優奈は暑さで倒れそうだった。
扉の方から音がして急に体育倉庫の扉が開いた。
「あき……くん?」
「優奈大丈夫か!」
「うん……」
「そうか良かった。これ少しずつ飲んで」
俺が持っていたお茶を優奈にゆっくり飲ませた。
「ありがとう」
「歩けるか?」
「うん……」
「ゆっくりでいいから保健室行こう」
優奈に肩を貸しゆっくり歩いた。
保健室に着くと先生がおり、体育が終わったあとからずっと体育倉庫に閉じ込められていたこと話した。
優奈は軽い熱中症だったが大人しく寝ていれば大丈夫だと言われた。
その後優奈を閉じ込めた女子たちは先生や親に怒られた。
優奈はしばらく学校を休んだ。
これで終わりかと思えば女子たちは反省などしておらず今度は俺がいじめに遭った。
優奈のように閉じ込められたりはしなかったが、暴力はあった。
俺は不登校になった。俺がいじめに遭った理由は優奈を助けてヒーローになったつもりで調子に乗っていると言う理由だ。
俺は一回も自分がヒーローになったって思ってない。
俺は理不尽ないじめに遭いなにもかもやる気を無くした。
そんな幼馴染み二人ともいじめに遭ったある日優奈が家に来た。
「あき君」
「優奈どうしたの?」
「私がずっとあき君のお世話をしてあげる」
「中学校の頃は酷かったな」
「うん。私ねあの日からあき君のことが好きになったんだ」
「そうなんだ」
「そういえばどうしてあのとき私が体育倉庫にいるって分かったの?」
「えっ!それは……秘密」
「どうして、教えてよ~あきく~ん」
「教えない」
「う~、あき君なんて嫌い……嘘、やっぱり大好き」
どっちだよ。
なんで優奈が体育倉庫にいるって分かったのかって?
それは、ずっと優奈のことを見ていたからだよ。
俺は優奈が先生に片付けを頼まれたのを知っていて、授業が始まっても優奈は戻ってこなくてあの女子たちが先生に理由を言ったあと笑っているのを見てまさかと思って俺は授業を抜け出した。
倉庫に行く途中自販機で冷たいお茶を買って倉庫に走って行った。
そしたら扉が棒で開かないようになっていた。扉に開ければそこに優奈がいた。
俺は先生たちに褒められ、優奈の親には礼まで言われた。
ただ俺は優奈が無事ならそれで良かった。
だって好きな人が困っていたら助けるだろみんなだって。
今日は昔の写真を見ました。小さい頃のあき君もとても可愛かったです。
写真を見て少し昔のことを思い出しました。昔と言っても中学の頃です。
私が真夏の暑い日に体育倉庫に閉じ込められて倒れそうだったときあき君が助けに来てくれました。
なぜか手には冷たいお茶を持っていてそれを飲ませてくれました。
どうしてお茶を持っていたのかは謎です。それにどうして閉じ込められていることも知っていたのかも謎です。
あき君は教えてはくれませんでした。本当は知りたいですけど、今回は良いです。
あき君が私を助けてくれたと言うだけで嬉しいからです。
あの日から私は幼馴染みの男の子から一人の男の子として見るようになりました。
きっとあのときあき君が助けてくれなかったら私は死んでいたかもしれません。
それに私のせいであき君もいじめに遭いました。体はボロボロでした。傷跡もアザもたくさんありました。
私はあき君に救われました。今度は私があき君を救いたいです。