<11>普通の一日
腕を組ながら教室に入ると一瞬で皆の視線を集めた。
「みんな見てるね」
「そうだな」
視線を気にすることなく俺は椅子に座った。
優奈は鞄を机に置いて、俺の膝の上に座ってきた。
これはまるでカップルがイチャついているようだ。まあ、カップルだけど。
クラスメイト達がなにやら言っている。
『あいつらいつも以上に距離近くないか』『周りを気にしないバカップルだな』『見てるだけでなんかイラつくな』
と、クラスメイト達がこそこそ言っているのが聞こえる。
「もう少しで1時間目が始まるぞ」
「う~ん」
あの優奈さん、そろそろ自分の席に戻って下さい。
先生がこっちを見ているから。
「優奈また後でね」
「うん、分かった。チュッ」
優奈は俺の頬にキスをして席に戻った。不意打ちのキスはヤバイよ。頬でも少し恥ずかしい。
1時間目が始まった。
俺は黒板を見ながらノートを取っていた。優奈はずっと俺を見ていた気がする。
毎回10分休憩は俺の膝に座ってイチャついていた。
周りは呆れている気がする。
まあ、優奈が楽しそうならどうでも良いけど。
俺は優奈のいい匂いと柔らかいお尻や太ももをひっそり楽しんでいる。
キーンコーンカーンコーン――
「あき君お昼食べよう」
「屋上行くか」
「うん」
「秋の風は気持ちいいな」
「そうだね。涼しくなったもんね」
「ふわぁ~」
夏は暑くて嫌い、冬は寒くて嫌い、でもその間の春と秋は涼しい。
今日は少し暖かくて、風が心地よい。
まさにお昼寝日和だ。そんな日に俺は、
「はい、あき君あ~ん」
「あーん」
「美味しい?」
「美味しいよ」
「良かった」
俺は優奈の膝枕で優奈に弁当を食べさせて貰っている。
実に充実した生活だ。
え? 前よりダメになっていないかって?
俺は元々怠け者でダメだよ?
だけどこれ以上ダメになったらヤバイ……のか?
「なあ、優奈」
「どうしたの?」
「もし、もしもさ俺がこれ以上ダメ人間になって将来働かなかったらどうする」
「私が一生養ってお世話する!」
「お、おうそうか」
やっぱりもうちょっとちゃんとしようかな。
優奈選択は最終手段として置いておこう。たぶん最終手段使うことになると思うけど。
風が心地良いな。寝るか。
「少し寝る」
「起こしてあげるから時間を気にせず寝てていいよ」
「ありがとう。お休み」
「お休み」
ナデナデ。
昼休が終わり午後の授業開始のチャイムが鳴った。
ふわぁ~。昼寝たけどまだ眠いな。
二学期になったからと言って授業が面白くなったわけではない。
早く授業終わらないかな。ノート書くの面倒だな。
授業中喋っているやつ注意しないのかな。うるさいのに。
帰ったら何しようかな。漫画、ゲーム、寝るのどれかか。
ふわぁ~。本当眠いな。
――放課後。
「やっと授業終わったー」
「あき君ずっと眠そうだったね」
「授業がつまらないんだよ」
「そうだね、面白くないよね。あれぐらいだったら私があき君にもっと分かりやすく教えられるのに」
「優奈は頭良いもんな」
「そ、そんなことないよ~」
あき君に褒められた。嬉しい!
「帰るか」
「うん」
当たり前かのように手を繋いで帰った。
女の子の手って柔らかいよな。それに細い。
「ただいま」
「お邪魔します」
「母さん達は今日も帰るの遅いってさ」
「知ってるよ。だから今日も私がご飯作ってあげる」
「そっか、ありがとう」
旅行から帰って来てもあまり変わらない親達だ。
まあ、別に困ることはないからいいけど。優奈が全部してくれるし。
ふわぁ~。ご飯ができるまで寝るか。
「ちょっと寝るからご飯できたら起こして」
「分かったー」
「すぅーすぅー」
「可愛い寝顔だな~」
ご飯作ろう。今日は何が良いかな。
「あき君ご飯できたよ」
「ふわぁ~」
「ご飯食べよう」
「「いただきます」」
「今日はカレーか」
「明日はカレーうどんだよ」
「カレーライスもいいけど、カレーうどんも美味しいよな」
カレーというものは作った日も美味しいが次の日はもっと美味しくなるという食べ物だ。
不思議な食べ物だ。
「「ごちそうさまでした」」
「お風呂沸かしてくるね」
「はーい」
ご飯も食べたし、あとは風呂に入って適当にテレビを見て寝るだけだ。
「…………」
なんか夏休みからずっと優奈が居る気がするな。
ここ最近優奈が居なかった日ってあるっけ。
夏休み初日は俺と優奈の親が旅行に二週間行って、優奈は二週間俺の世話をしてくれた。
二週間後に親が帰ってきた。俺の親も優奈の親も帰ってきた。
でも優奈は俺の家にいた。俺の親は「優奈ちゃん好きなだけ家にいていいわよ。もう私たちの家族みたいなものだし」って言っていたな。
優奈の親も「あき君も好きなだけ家に泊まっていいからね」と言っていたな。
あれ、優奈帰ってなくね? ずっと家にいるな。
まあいいけど。俺は楽できていいし。何でもしてくれて至れり尽くせりな生活だ。
「あき君お風呂沸いたよ。一緒に入ろう」
「うーん」
「体と髪洗ってあげる」
「ありがとう」
人はこうやってダメになっていくんだろうな。しかたないよな。
「体拭くね」
「は~い」
風呂から出て俺たちはリビングで寝る時間までくつろいでいた。
学校は楽しくないけど、家は楽しい。好きなときにトイレに行けて、好きなときに寝れて好きなときに起きれる。
何もしなくていい、何もできなくていい、だって全部彼女がやってくれるから。1から10まで全部やってくれる。
だから俺は彼女を離さない。彼女を一人にしない。
「あき君そろそろ寝よっか」
「うん」
今日は学校でいっぱいあき君とイチャイチャしました。
周りは私たちを羨ましそうに見ていました。
私があき君のお膝の上に座ってイチャイチャしている光景を。あき君も私と一緒に入れて楽しいそうでした。
私がお膝に座るとあき君は私のお尻とか太ももを楽しんでいました。言ってくれたらいつでも好きなだけ触っていいのに。
お昼は屋上であき君に膝枕をして愛情たっぷりのお弁当を食べさせてあげました。
お昼寝中にあき君が「これ以上ダメ人間になって将来働かなかったらどうする」って聞きました。
あき君は何を言っているのでしょう。あき君は全然ダメ人間なんかじゃないのに。
あき君は私をとーっても大事にしてくれているから全然ダメ人間なんかじゃないよ。
それとあき君は働かなくていいんだよ。私が一生お世話するんだから。
きっとあき君は私の愛を確かめたかったんだよね。
今日の学校もあき君といると楽しかったです。
だけど寝る前は少し悲しかったです。どうしてかと言うとあき君がなんだか悲しそうな顔をしていたからです。
昔のことを思い出したのかな。私を助けてくれたときのことを。
あき君になにかあったら今度は私が助けるからね。
世界中の人が敵になっても私だけはあき君の味方だからね。