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楽園の孤島  作者: 青蛙
6/10

side:サカキ リョウヤ

メイ達が森の中を探索していた頃のお話し。





◆◆◆



「大丈夫だ。俺が何とかするから」


「それ何回目よ? 流石にもう信じられないわ」


「五月蝿い雪菜、黙ってろ。皆、俺についてこい」


「ふん………自分勝手な男」


 畜生、イライラする。

 何もかも思い通りに行かない。


「かれこれ半日以上、浜辺を離れてから飲まず食わずよ。私たちを飢え死にさせるつもり?」


「五月蝿い。お前は黙って俺に従え。俺の言うことを聞かずに死んだ()()()みたいになりたいのか?」


「確かに食われて死ぬのも嫌だけど、飢え死にだってしたくないわ」


「………雪菜、いい加減にしろ」


「……………ハイハイ、わかりました」


 無駄口を叩いてばかりの雪菜を睨み付ける。雪菜は股はゆるいが頭はゆるくない女だ。流石にこれ以上俺を怒らせたらどうなるか想像はついたのだろう。渋々ではあるが、口を閉じて後方の集団の中に入っていった。


 もう食料と水を探してかれこれ半日と数時間は経っている。

 浜辺から森の中まで逃げ込んだとき、最初こそは理性よりも恐ろしさの方が勝って何も考えられなかったが、今では落ち着いて思考を巡らせることが出来るようになった。


 逃げてきてから少し時間がたって、心に余裕が出てきたところでこれは良いチャンスだと思った。俺が残ったやつらを導いて食料や水を手に入れられれば、皆に尊敬の眼差しを向けられ、一部の女子生徒からの好意も手に入れられるかもしれない。どうせ法律もクソも無い、化け物ばかりの場所だ。ハーレムの一つや二つ、作ったところで咎められる筋合いもないだろう。


 もちろん雪菜はイイ女だが、他にも気になっている女は居る。例えば、俺のいたクラスで女子のリーダー格だった『皆川 沙也佳(みながわ さやか)』は、胸こそ控え目だがモデルにスカウトされる程の容姿の持ち主だ。

 他クラスの女子『新堂 理沙(しんどう りさ)』は、陰キャのオタクで性格こそ好みじゃないものの、中々に唆る身体をしている。あの大きな胸にはどうにかして、是非ともむしゃぶりつきたいものだ。顔も、眼鏡を外せばかなりの美人だと言うことが一目見ればわかる。

 他にも、何人も俺のものにしたい女は沢山居る。この状況はかなり不味いが、一人の男が何人もの良い女を自分のものにするという、現代社会のモラルからはかけ離れたことをするにはこれ以上に都合の良い状態は無い。


 だが、現実はこの有り様。


 共に行動していた32人の内、一人が今まで移動してきた中で小型の恐竜のような生き物に襲われて死亡し、更に逃げるなかで4人が行方不明になった。食料も水も手に入れられていない。


 後方に残った集団からも、いつまでたっても状況が良くならないことに対する不満が漂ってきている。いつ爆発されてもおかしくない。


「あー、あぁ…………クッソイライラする」


 今までで良かったことなんて、あのムカつく男『北条 夢唯』が恐らくもう死んでいるという事ぐらいだ。

 あいつは陰キャの癖にスポーツも勉強も出来る性格以外完璧人間だった上に、いざと言うときは周囲を纏めて皆の意見を纏めつつ行動を進めていけるだけのリーダーシップもあるムカつく男だった。体育やグループ学習の時間、定期テストがある度にそいつの事ばかり気になってストレスばかりが溜まった。

 あいつが居なければ良いのに。あいつが居なければ俺のリーダーの立場は完全なものになるのに。何度そう思ったことか。

 あの砂浜にいなかったと言うことは、恐らくあのアホみたいにデカいワニにでも食われて死んだのだろう。他に見つかっていない奴等も、きっと同じ理由で居ない筈だ。俺の鼻につくような行動をするからだ、ざまあみろ。


「ネットの情報通りに探してんのに、全然見つかんねぇ」


 しかし、これほど歩いているのにまだ見つからない。

 今は食料に関しては一度諦め、飲み水を探して森を抜けた先にあった崖の周りを歩いていた。以前ネットで見たうろ覚えの情報を頼りに湧き水を探しているのだが、湧き水どころか水が流れている気配さえしない。

 浜辺から移動を始めてから既に四時間以上経過した。日は傾き始め、一刻も早く野営するのに比較的安全な場所も欲しかった。


「あー、もう駄目だ! ついていけねぇよお前」


「確かになぁ………俺らもう別行動させて貰うわ」


 遂に我慢していたメンバーの中から何人かが声をあげた。

 おそらく、名前も知らない別のクラスの男子どもの集まりだ。


「どういうつもりだ? 俺たちについてこないで生きていけるとでも思ってるのか?」


「どうもこうもねぇよ。お前がどうにかしてくれるっつぅからついてきたのにこのザマだ。食料どころか水の一滴さえ手に入れられてない。おまけに人死まででる始末だ」


 聞いて呆れた。八つ当たりにも程がある。

 俺についてくると判断したのはお前たちだろうに、物事が上手く行かなければ他人のせいにするとは。

 大体俺がついてきて欲しいと思っていたのは使い勝手の良い捨て駒と、簡単にヤれるチョロい女だけだ。お前達みたいな思い通りにならない無能どもは要らない。


「そうか、なら勝手にすれば良い。後で俺たちが水場や食料を見つけても分けないからな」


「子供みてぇな捨て台詞………まぁいいや、許可もとれたしさっさと行こうぜ」


 名前も知らない男子生徒は、そう言うと共にメンバーから抜けるらしい男子生徒の一人の方に目を向ける。目を向けられた背が低めの男子生徒は、何処かあのムカつく野郎に似た雰囲気を纏っていて、見ていて不愉快に感じた。


「ああ、そうだな。さっき崖の上まで登っていけそうな坂道があっただろう。そこを目指そう」


「そうだな。じゃ、行こうぜ」


 メンバーの中から男女あわせて五人が離れていった。出ていくのは男だけだと思っていたのに、女が居たとわかっていたなら引き留めていた。しかもあの女は俺が目をつけていた女の内の一人だ。失敗した。


「……………チッ」


「リョーヤまたロクでもない事考えてるでしょ。こんな状況で馬鹿みたいなこと考えないで」


「うるせぇな………わかってるよ」


 考えを読まれたのか、雪菜にまた小言を言われた。

 残り22人。時間も遅い。今日はもう、とにかく安全に夜を過ごせそうな場所をさがさなければ。


 遠くの森の中から、気味の悪い遠吠えが聞こえた気がした。

 先を急ごう。



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