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#003 克己の選択

「それで、生き返るというのは具体的にどういった形になるんですか?」

「詳細を話す前に、まずは魂の所属を我々の監視下に変更していいかい?」

「それは何です?先に話を聞くことはできないんですか?」

「残念ながらできないんだ。詳細を話す前に所属を切り替えてるのが決まりでね」

 カルマは困ったもんだとばかりに顔を振る。なんかわざとらしい…

「ふむそうか、奈落(アビス)を選択するならそれも良いだろう。明日は鬼どもと仲良く晩飯だな。自分の肉が入ってなきゃいいけど」

 地獄にそんなコースがあったか知らないが、下手な脅しをかけてきた。さっきの鬼どもが現実かどうかすら分からないけど、アビスとやらに落ちるのと魂のなんたらを変えてどうなる?どうせ今の状況は分からないなら強くなれる方に賭けてみたい。それにどうせ今でもほぼ最底辺なんだ。これ以上底なんてねーよ。

「わかりました。やってください」

「よし」

── パンッ

 カルマが微笑を浮かべて楽しそうに両手を合わせた。

「完了」

 とくに何も変わった様子はない。

「何も変わらないんですね?」

「いや、ステータスが振られたよ。君にも見えるはずだ」

「ステータス?」

「ああ。この世界の住人になって、この世界の常識(システム)に組み込まれると自分の能力を数値化した値を見られるようになる。ステータスを見たい。って考えれみてくれ」

「ふむ」

 よくあるゲーム世界のアレかな?ステータスが見たい。ステータスを見たい。見たい、見るとき、見るべき。

「おっ!ゲームのウィンドウみたいな物がでたっ」

 視界に半透明のメニューのような物が現れた。マジか。ゲーム世界きたわー。

「人によって見え方は違うんだ、視界に表示される者もいれば、情報だけ頭に流れてくる者もいるよ」

 俺の場合は視界にでるわけか。どれどれ、表示されているのもは名前や能力値のようだ。


  ■情報

    名前:竹宮克己、年齢:17、性別:男、職業:死者、レベル:6、攻撃力:2、防御力:1


  ■魂魄(ゴースト)

    (スピリット):51、(ソウル):0


  ■肉体能力値(ステータス)

    生命力:0、持久力:0、筋肉:0、敏捷:0、頑強:0


  ■精神能力値(ステータス)

    マナ:11、知能:8、創造:6、記憶:7、深淵:16


  ■知識系技術(スキル)

    日本語(地球):6、数学(地球):5、科学(地球):5、文学(地球):6、歴史(地球):5、音楽(地球):5.8、木工:3、料理:4、...


  ■技術系技術(スキル)

    運動:5、格闘、体術:5、格闘、ナイフ:3、...


  ■特殊能力(タレント)

    能力値可視化:3


 えーと、こんだけゲームっぽいのに経験値が無い。レベルはあるのに。あとスキルがやたら細かい。肉体系能力値が全部0なのは死んでるからなんだろうか?つーか職業が死者ってなにさ。

「とりあえず見えましたけど、意味は全然わかりませんね」

「ま、おいおい説明するさ、君はゲームが好きみたいだから自分でメイキングしてみるかい?」

 まだ隣に座るカルマがいつの間にか手にしていたタブレットを渡してくる。よくあるMMORPG系のキャラメイク画面みたいなのが映っていた。ただし、画面内に映っているキャラは俺だ。今現在の自分とは違い、画面の中の俺は肉体系のステータスも十前後になっていた。

 思わずごくりとつばを飲み込むと、その音がやけに周囲に響いた気がした。

「ここで設定した通りになるんですか?」

 自分の声が震えているのが分かる。

「ああ、もちろん」

 よっしゃキタコレ!ぐっと心でガッツポーズを決める。いや、まだだ。ステ振り用のボーナス値が0でこのまま復活しても何も変わらない。

「スキルポイントとか無いようですけど、何を振り分けるんです?」

「残念ながら、この世界では普通のゲームみたいに経験値を貯めたらレベルがあがるようなシステムじゃなくてね」

 レベルはあるのに?

「レベルってのは能力の高さを表しているだけさ。殴り合いが弱くても学者さんとかはレベルが高くなる」

 ふーん。

「でまあ振り分けなんだが、この世界で奪うのは経験値ではなくて魂魄(ゴースト)。それを消費する事で能力値を強化できる」

「このスキルってのはどうするんです?」

「スキルと特殊能力は普通、魂魄(ゴースト)と変換は出来ない。それらに変換するには特殊な技能や儀式が必要だ」

 ステにしかふれねーのか。クソゲーかよ。しかも今ほぼゼロだっつーの。

「…が、今回はスキルや特殊能力も取れるようにしてある。感謝してくれよ」

 よし!よし!だんだん希望が沸いてきた。

「ええ、こんな機会をくれたあなたには感謝してますよ。それでですね、割り振る魂魄の方が少ない気が…」

「そうだな、いくらくらい欲しい?」

 カルマが悪戯っぽい口調で聞いてきた。その顔は相変わらず楽しそうに微笑んでいる

 いくらかだって?決まってる。いくらでも欲しい!このステータスやスキルを一上げるのにどの位の魂魄が必要なのかも分からないのに。

「各ステータスに必要な値は上がる先の数値の二乗だ。次のレベルが五なら五×五で二十五になる。スキルや特殊能力もほぼ同じだ。ただ、こちらは多少上下するが」

 ステータスやスキルを九から十に上げるのに百必要だから、最悪百×十の千あればいいわけか。細かい計算は省略だ。

「ちなみに能力値もスキルも最大値は百だ。零から上げると三十三万八千三百五十必要だよ」

「わかってるよ。そのくらい」

 電卓があれば俺にも計算できるさ。えーと、凸に1つ当たり三四万弱必要だから、ステータス十種で三百四十万。あとはスキル一個あたり三十四万か。

 キャラメイクできるタブレットを操作すると、獲得可能なスキルや特殊能力の一覧が表示されている。消費魂魄の係数は半分から数倍と色々差があるが、元の二乗と比べると数個分程度の計算で済みそうだ。しかしスキルがやたら細かい。戦闘に限っても長剣だの短剣だのと武器種ごとに分かれている。魔法系のスキルもあるなぁ、魔法がある世界なんだ。

 そして特殊能力。こっちはもう不死やら不老やらのオンパレードだ。ダメージ無視、レーダー等の能力も捨てがたいがそれだけ倍率も高い。不死なんて百倍になっている。レベル百にしたら三千四百万だよ。ん?これ、なんかおかしくないか?

「不死のレベル一と百って何が違うんですか?」

「それはやってのお楽しみ」

 ふっと鼻で笑うカルマ。答える気は無さそうだ。これだけスキルが分かれてると百種類くらいは必要だろう。三千四百万×百で三億四千万…くらい?まあ全てが不死レベルじゃないだろうし…三億でいいか。いや、これは交渉だ。まずは大きく出よう。

「うーん、最低でも五億程度は必要かな」

 俺はできる限り平静を装って話した。ケチってきたら三億くらいまでは譲歩してやろう。

「ん?五億ぽっちでいいのか?みみちいなぁ」

「はい?」

「どうせならきりのいい十億くらいいっとけ。ほら」

「十億?」

 カルマが俺の手にあるタブレット画面をさっと撫でると、魂魄の欄の数字が十億ずつに変化した。

「は?」

「ほら、たっぷりあるんだ。ガンガン使え」

 ハハハと下品に笑うカルマの声が遠く聞こえる気がする。マジか。好き放題取り放題じゃん!ありがとうカルマ!俺は初めてこの女に感謝した。

「ありがとう。色々選んでみるよ」

「ああ、ゆっくり選んでくれ」

「うん」

 さっきまではウザかったカルマの笑顔も今は天使の微笑みのように見える。俺はまずステータスを全振りして全てを最大値の百にした。それでも魂魄は全然減っていない。いくつかスキルを取ってみて分かったが、精神系/知識系は魂を、肉体系/技術系は魄の数値を消費するようだ。

 俺は必要そうな剣や弓などの戦闘系スキルと魔法系スキルをまず取る。それから特殊能力系だ。この手の転生物で基本の言語翻訳系、さっきも言った不死、不老から、属性攻撃の耐性、反射、吸収、無効とかの防御系。さらに逆の能力、不死殺し、老化攻撃、属性耐性無効、反射無効…などとキリが無い。注意も必要だ、スキルや能力には日光に弱い、流れる水を渡れない、ドジ、うっかりとかの不利な能力も紛れ込んでいる。普通であればこういうのは逆にポイント取得できるもんだろうが。クソゲーめ!

 変わったところでは聖印、邪印、とか謎の能力もあるが、詳細が不明でカルマに聞いても答えてくれないのは基本パスでいいか。透明化、巨大化、縮小化、等の外見変化系も取っておきたい。これらもコストが凄い。さらに感覚系、透明看破、気配遮断看破、レーダー感覚、危険察知 ………………………

「………?」

 ギシリという椅子の悲鳴が聞こえた気がして我に返ると、いつの間にかカルマが自分の椅子に戻ってコーヒーを飲んでいた。どのくらいの時間が経ったのか分からないが、もう必要そうなスキルや能力は大体取った気がする。

「終わったかい?」

「ええ、大体。まだポイントは余ってますけど」

「見せてくれるか?」

 カルマはそう言うが、椅子から立つ気配はない。仕方なく俺が立ってカルマのほうに歩いて行き端末を見せる。カルマは俺が持ったままの端末を操作し、取ったスキルとかを見ていった。

「ほうほう、なかなかいい取り方してるじゃないか」

「効果が分からないから適当ですよ」

 口ではそういうものの、褒められて悪い気はしない。

「無敵見つけちゃったかー。しかもレベル百。こりゃやられたわー」

 カルマが大げさに額に手をあてて困った表情で叫んだ。無敵は特殊能力の一つだ。説明がないので効果が不明だが、係数が×1なので期待せずに取っておいただけの能力だったはず。係数的に全く期待できなさそうだったが、やはり取っておいて正解だったようだ。

「ふふ。一応全部めぼしい物は取っておきましたから」

 数が多くて全部見切れた自信はないが、ある程度それっぽいのは全部取れたはずだ。

「うーん、たしかにそのようだ。…あれ?でも外見は変えなくて良いのかい?」

「へ?」

 変えられるのか?端末を手元に引き寄せて自分が映っている部分をタップする。すると外見エディット画面に移った。

「まじか!!!」

 試しに身長を百八十センチにしてみる。実際は百六十八だったはずだ。多分。今年の身体測定ではそのくらいだった気がする。だが、変更しても特に何も変わらない。身長を上げたり下げたりしても、画面の中の俺は伸び縮みするが俺本体に影響はないようだ。

「ちぇっ」

「スキルとかも含めて、その端末内の数値反映は生き返った後に反映してやるよ」

 確かに魔法のスキル取っても魔法を使えるようになった気はしない。そういう物か。気を取り直して外見の調整をしよう。身長は高め、すらっとした体型だけど肩幅は大きめ。顔はイケメン、髪はやや茶色のくせっ毛で………。ここまで設定した段階でどこかの大手メーカーゲームの主人公みたいに見えてきた。だが没個性なんて気にするな、この世は『ただしイケメンに限る』のさ。

 しかしこの体型エディット、魄も結構消費するんだけど、足の長さや手の長さ、指の長さ、髪の質や量とかとにかく細かいところまで調整出来るようになっている。極めつけはアレの長さや太さだ。俺はカルマに見られないように端末を体で隠して設定を済ませた。

「男っていうのは、見栄を張る生き物だよねぇ」

 一通り設定を済ませて端末をカルマに返すとそう言われた。うるさい。女だってそうだろ。

「男は愛嬌、女は度胸さ」

「んん??」

 俺がなにも言っていないのにカルマが続けて会話を繋ぐ。さっきから何度かこんなやりとりがあった気がする。どういうことだ?

「見事に残りが一ずつかあ。これは最早なんというか、芸術だな」

 そう、外見調整後に余った魂魄で気になった能力やスキルを取っていくと、たまたま魂魄が一ずつ余った。適当なスキルのレベル一を取っても良いんだが、なんとなく面白いと思ってそのままにしておいた。

「うん、やっぱり良い勘してるよ克己くんは。悪魔的なほどに」

「あまり褒めないでください。調子にのりますから」

「そうかい?まぁ私的にもつまらない結果で終わらなくて良かったよ」

「?」

 カルマがまたよく分からない返答をする。こいつは時々意味不明なことをいう。こいつが俺にこんなボーナスを与える理由を含めて全く分からない。単純に捉えれば『つまらない結果』は『しょぼいステ振り』なのかもしれないが、そんなハズはないだろう。

「さて、これで一通り手続きも終わって、あとは生き返りを残すところだな」

 あいも変わらずカルマは楽しそうだ。その笑顔が俺にも伝染したのか、俺もだんだん気分が高揚してきた。そう、俺の勝ち組人生が始まるんだ。

「そう…ですが、生き返るって具体的にはどうなるんです?赤ん坊から?」

「いや、それは無理だ。さっき作って貰った外見で肉体を作成し、そこに魂を入れる」

「そうですか。大商人の次男坊とかに生まれて、一生遊んで暮らすってのも悪くないと思ったんですが…」

「さっきの魂魄を全て使えば、そう言った生まれ変わり方もできるかもしれないが、どっちがいい?」

 にたりという表現が似合いそうな笑みでカルマが俺に聞いてくる。そんなの決まってる。

「それなら、俺が決めた強い方でお願いします」

「そうかい。残念だ」

 当たり前だ。強けりゃ稼げるが、商人の次男坊ってだけでは金銭以外の魅力が無い。しかも弱かったら安全の保証も無い。金でなんとか出来るかも知れないが。

「では、このステータスで良いか最終確認してくれ」

「はい」

 最後に確認かよ。私はあなたの設定を弄りましたって言ってるようなものじゃないか。

「………」

 相変わらずカルマは楽しそうに、人を馬鹿にしたような笑みを浮かべて俺を見ている。やっぱり何か仕掛けたんだ。俺は必死になって確認する。ステータスの値、スキルの種類、レベル、能力、不利な能力が増えていないか……………………

 キャラメイクと同じくらいの時間をかけてチェックしたが、俺がやった設定を変えられた形跡はなかった。全てのう項目を覚えていられないほど数が多いので、特に不利な設定が追加されたような項目は無かった、というのが実情だ。身長の設定単位が実はミリメートルじゃないかとか、そういう疑いもかけてみたが特に問題はなさそうだった。

「………」

 カルマはのんびりと椅子に座ってコーヒーを片手にファッション雑誌のような物を読んでいる。机に転がる雑誌は日本語のもいくつかあるが、大半は知らない言語の雑誌だ。アルファベットですらないので全く分からない。あんな雑誌も全言語解読の能力を持ったら読めるようになるんだろうか?

「お、終わったかい?」

 俺の視線に気がついたカルマがコーヒーと雑誌を置いて立ち上がった。俺もソファに座っていたが、なんとなく立ち上がってカルマに端末を手渡した。

「はい、問題ありませんでした」

 カルマは受け取った端末をしげしげと見ている。画面には俺が設定した生まれ変わり後の俺の姿が映っているはずだ。

「しかしまあ、外見を今とはかなり変えたねぇ…」

「変えられるっていうのなら、変えたくなるじゃないですか」

 カルマの外見はかなり美人だ。目つきを除けば。だから外見を変えたいと思わないんだろう。でも目つきは変えた方が可愛くなると思う。

「そういうものかな」

 勝ち組め。爆発しろ。いや、俺ももうすぐ勝ち組の仲間入りだ。だから許そう。そのくらい、可愛いもんさ。

「そういうものですよ」

「そうか。そこまでいうなら、生まれ変わったらまず外見を確認してみてくれ。楽しめると思う」

「はい」

「んじゃ、今から君の肉体を作って魂を移す。心の準備はいいか?」

 よし、これで俺も生まれ変わる。誰にも嫌なことを強制されない、俺が強制出来る側の人間に。

「ええ。いつでもどうぞ」

「よし」

 カルマは立ったままの俺にすっと近づいてきたと思うと、自分の顔を俺の顔に近づけてきた。わ!わ!ちょっと近すぎる!何考えてんだよこいつ!

「わっ!ちょっ!」

 慌てて身を反らせた俺はバランスを崩して倒れそうになる。が、こっちはソファがあったはずだ。このまま倒れてしまおう。

「なんだ。別れのキスくらいサービスしてやろうと思ったのに」

 俺は倒れながらカルマの声を聞いた。

「…ざ〜んねん…」

 ソファーに手を突くつもりがそこにソファーは無く、俺は床に倒れ込んだ。

「痛っぅ!」

 手を変な角度で突いてしまい体も床に打ち付けた。少し脇腹も痛い。

「ちょっと変な冗談は止めてくだ…」

 言葉が止まる。

「………」

 周囲が真っ暗になっていた。何も見えない。床もなんだかじゃりじゃりしている。さっきまでは理科室みたいにコーディングされた床だったはずなのに。

「カルマ…さん?」

 返事は無い。倒れたときに打った手首や脇腹にたいした問題が無い事を確認して立ち上がった。真っ暗だと思ったが、左の方、遠くに明るい場所が見える。照らされている所は石積みで出来た広い通路のようだ。その通路がこちらまで続いているのだろう。

 だが、あの女はどこに行ったんだ?俺を生き返らせるんじゃ無かったのか?

「カルマさ───ん!」

 大声で叫んでみるが案の定返事は無い。もう俺は生き返ったのだろうか?真っ暗闇の中で自分の体が設定通りになったか色々確認してみる。

 顔、触っただけじゃよく分からない。髪の毛、長めに設定したのに短いままな気がする。肩幅、足の長さ、そしてアレ。どこも特に変わった感覚が無い。

 やはり俺をからかっていただけか。いやまて、まだ生き返っていない可能性もある。ステータスはどうだ。


  ■情報

    名前:竹宮 克己、年齢:17、性別:男、職業:学者の卵、レベル:11、攻撃力:4、防御力:3


  ■魂魄(ゴースト)

    (スピリット):1、(ソウル):1


  ■肉体能力値(ステータス)

    生命力:12、持久力:13、筋肉:8、敏捷:11、頑強:11


  ■精神能力値(ステータス)

    マナ:11、知能:8、創造:6、記憶:7、深淵:16


  ■知識系技術(スキル)

    日本語(地球):6、数学(地球):5、科学(地球):5、文学(地球):6、歴史(地球):5、音楽(地球):5.8、木工:3、料理:4、...


  ■技術系技術(スキル)

    運動:5、格闘、体術:5、格闘、ナイフ:3、...


  ■特殊能力(タレント)

    能力値可視化:3、亜人種言語全理解:7、卓越した五感:20


 やられた!あれだけ苦労して設定したのに全く変わってねえええ!外見も、ステータスも!あれだけ期待させておいて!

 俺の中で何かがブチンと弾けた。

「ふっっざけんなカルマ!でてこいやカスがぁ!」

 殺す!

 殺す!   

 あの女は絶対殺してやる!

「カルマ!カルマ!カルマ!カルマ!カルマ!カルマァアアア!」

 手近に殴るものがなかったので床をガンガンと殴りまくる。拳から血が飛んでいる気がするが気にせず殴り続けた。何かを殴っていないと正気を保てそうに無い。あの女!あの女!いけすかない顔!あの綺麗な顔の形が変わるまで殴って殴ってぎったぎたにしてやる!

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 何をどうやったのか分からないがこんな所に放り込みやがった。すでに不幸のどん底だと思っていたがまだ底があるのか。いや、そもそもあれは現実だったのか?俺はまだ夢の続きを見ているのか?もう自分が生きてるのか死んでるのかなんてどうでもいい状況だ。そう、状況。ゲームや小説なんかだとあの地下っぽい石積みはやばい。ダンジョンか?モンスターは?怒りが収まってきたせいか右手がジンジン痛み始めた。拳から血が落ちていく感触がする。

「!?」

 俺はなんとなく違和感を感じて右手をズボンのポケットに突っ込む。そこには入れた覚えの無い紙切れのようなものが入っていた。

「読めねぇよ!」

 取り出してみるが当然周囲は真っ暗。紙を力一杯丸めて捨ててしまう。ステータスをもう一度見てみると、肉体系のステータスに値が入っている。生き返ったのかもしれない。だが一体それがどうしたってんだ。


── ギィガァ


「!!!!」

 何かの叫び声が聞こえた気がして俺は慌ててしゃがみ込んだ。やばい。まじか。


── ギィガァ


 似たような叫び声が聞こえた。複数だ。こっちで声がしたぞと言っているような気がする。さっき叫んだ声を聞かれたか?俺は見つからないようにゆっくりと壁際に移動しながら遠くの明かりが付いている通路の方を見続ける。真っ暗闇の中で手を伸ばして壁らしきものに触れたとき、遠くの明るい空間にも動く影が現れた。

 明かりに照らされたそれらの影は小さく、針金のような細い手足をした小さな妖精のようなシルエットに見えた。だが、その妖精達は花やラッパの代わりに剣のような物を手に持っているように見えた。

「まじか…」

 遠くに見える、四角く切り取られた小さな光の世界の中でうごめく妖精の影は、どことなく子供の頃にみた影絵の人形劇を思い出させる。沢山の妖精が動くと、それに合わせて通路に伸びた長い影が踊る。いち、にぃ、さん、しぃ。リズム良く踊る。


 ── ガァ!ガァ!ガァ!


 光り輝く舞台で踊っていた妖精達が踊るのに飽きたのか、俺を踊りに誘おうというのか、次々と舞台を降りて俺の方へ向かってきた。

 俺はその光景に目を奪われ、呆然と近寄ってくる妖精を見続けていた。

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