《護衛士認定式編》③
ヴィクトリア王家が主催する、年に一度の式典。
《護衛士認定式》。
現在、ヴィクトリア宮で開かれている式典は、学園首席の遅刻によって進行が遅れている。
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『世界大戦』が始まり、人族は混血者の育成に努めた。
他族に対抗できる血能を持つ混血者は、人族の力そのものである。
以前から重要視されていた彼らの存在は、大戦が始まって、更に不可欠な存在へと変わっていった。
混血者たちが戦争を支配し、「純血」が活躍する機会は徐々に無くなっていく。
王家を守護する、という由来から名付けられた、混血者の戦士。
それが「護衛士」である。
優秀な護衛士の存在は、戦況を支配し、他族の侵略を防ぎ、強大な力を示した。
護衛士は混血者たちの憧れとなり、人族の力の象徴となった。
また「護衛士」とは、「護衛騎士」と「護衛術師」をまとめた名称である。
血能による牙や身体強化を利用した物理的な戦闘スタイルを取る護衛士は、「護衛騎士」に分類される。
魔術や魔法などの血能を持つ護衛士は、「護衛術師」に分類される。
魔族やエルフ族との混血者である護衛士はこちらに分類されている。
「護衛士」は「護衛師」と表記されることもあり、「術師」と「騎士」に明確な優劣は無い。
「護衛士」を育成する目的で、創立されたのが「王立護衛士育成学園」。
名前の通り、王家が中心となって創立させた、護衛士を目指す混血者を入学させる学園である。
入学直後、「護衛術師候補科」と「護衛騎士候補科」に分かれ、成績優秀者は卒業後、正式に「護衛士」となる。
年に一度、ヴィクトリア宮で開かれる《護衛士認定式》は、その年の優秀な卒業者を「護衛士」として認める公の場である。
魔族との混血者であるユータは「護衛術師候補科」の生徒として、歴代最高成績を残して卒業した。
意味するのは、
『最強護衛士』の誕生。
『世界大戦』の真っ只中、心踊らない者などいない。
今年の《認定式》は、最強への期待、未知への畏れが広間を満たし、静かな盛り上がりを見せている。
ベルが立場を忘れ、「楽しみ」と評するのも無理の無いことだった。
◇◇◇
ユータがヴィクトリア宮にたどり着く、その少し前。
式典の参加者達は違和感を感じ始めていた。
式典というのは、一定の形式に則り、開催される儀式である。
食事や音楽会などの宴は、あくまでも前座であり、その後の式こそが本命である。
その形式に則るならば、宴をそこそこに切り上げ、本命が始まるはずなのだが、一向にその気配が無かった。
原因は、式典の主役であるユータの遅刻である。
しかし、原因を知っているのは式典の主催側、ヴィクトリア宮の者達だけであった。
人族の各主要都市から招かれた人々は、長すぎる前座に疑問を持ちながら、本命を待ち続けた。
結局、ユータが到着したのは、その二時間後だった。