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はじめてまともに書き始めた小説だったのですが、すっかり放置してしまっていました。それも2年ほど……。
今回無事に完結させる事ができましたので、投稿してあったモノを改稿しつつ、順次更新していきたいと思っております。よろしければ、コメントをいただけると、単純な作者は泣いて喜びます。
それでは『罰ゲームに偶然を添えて』におつき合い下さい。
「好きです、付き合って下さい。」
こんな、何の飾り気もない告白に、彼女は「はい。」って答えたんだ。
これが。
この告白が。
罰ゲームだとは知らないで。
―― 罰ゲームに偶然を添えて ――
俺の後悔はあの日の放課後から始まった。
なんの変哲もない普通のチャイムがホームルームの終わりを告げて、授業をすべて消化した俺は、帰る準備に余念がなかった。
どうせ予習も復習もしやしないのに、鞄に教科書を詰め込む。適度な重さがないと不安になるというのも可笑しな話だ。
少し人がまばらになったのを見計らって教室を出ようとしたとき、後ろから声がかかった。
「遊馬、お前期末テストどうだった?」
振り返ると、同じクラスの麻倉と中野が立っていた。今、俺に声をかけたのは中野の方だろう。
ちなみに俺の名前は真壁遊馬。麻倉と中野は大親友とまではいかないものの、なかなかに気の合うやつらだ。
期末テストという単語に、俺はさっきのホームルームで返却された、二学期の期末テストの順位のことを思い出した。
「眉間にしわがよったってコトは、あんまりよくなかったみたいだね」
麻倉のセリフに中野の瞳が怪しげにきらめく。こういうときはろくなコトが起こらない。
「で、どうだったんだよ」
麻倉の言うとおり、結果はあまりよくなかった。
見せたくなかったから後ずさりをしてみたものの、いつの間にか背後に回っていた麻倉に退路をふさがれていた。
「……わかった。観念する」
渋々鞄から小さな紙切れを取り出すと、中野がすぐさまそれをひったくる。麻倉も俺の前に回り込んで中野の手元をのぞき込んだ。
しばらくすると、予想通り二人の口元がゆるみ始めた。
「残念だったな、俺たちの方が賢かったみたいだ」
「たった3番しか変わらなかったくせに」
俺に勝ったという優越感を隠しもしない中野の頭を軽くはたくと、麻倉は俺に3枚の紙切れを渡した。一枚はもちろん俺の順位、残りは麻倉と中野のものだった。
俺が負けた事実は変わらないし、これ以上順位という非常にわかりやすい現実を突きつけられたくなくて、俺は麻倉に紙を突き返した。
「で、何をすればいいんだ?」
なかばやけくそにそう言うと、二人は顔を見合わせた。
「なんだ、やけに素直だな」
どうやら驚いているらしい、というのは二人の表情から読み取れた。
「どうやったって逃げられやしないからな。どうせ中間の時に昼飯おごらせたの、根に持ってたりするんだろ」
あからさまに中野の表情が強ばり、麻倉は妙に迫力のある笑顔で続けた。
「その前の期末の時は夏休みの宿題の肩代わりだったしね」
そう言えばそんなこともあったかもしれない。
3人でつるむようになってから、テストで一番順位が悪かったやつが『罰ゲーム』をするのが暗黙の了解のようになっていた。今までのつけが回ってきたというわけだ。
「それで、お前らのことだからどうせもう決めてあるんだろ?」
ため息混じりに聞くと、示し合わせたかのように満面の笑みが返ってきた。
「いっとくけど、俺ができる範囲のことを言えよ?」
こいつらなら、逆立ちで町内一周とか平気で言いそうだ。
「大丈夫。心配しなくてもこれは誰でもできることだ」
笑いがこらえられないといった様子の中野の言葉を、麻倉が引き継いだ。
「遊馬にはこれから、告白をしてもらおうと思う」
「……は?」
頭が真っ白になるというのは、たぶんこういうコトなのだろうと思った。