勇者のモンスター退治より心配なこと
『勇者のモンスター退治より心配なこと』
ゲームにはAIという機能がある。
人口知能といわれて、コンピューターが自動で判断してゲームを進めていくのだ。ゲーム初心者やレベル上げを目的にしている時に使われることが多い。
俺はそのゲームキャラ。主人公の勇者だ。AI知能をもっている。そしていつの間にか意思も持っていた。
なぜかは分からない。だが俺は今日もおまえを心配している。
俺を操作する、おまえだおまえ。
おまえ、四六時中ゲームをしているが、一体どんな生活を送っているんだ。
メシは食ってるか。友達はいるのか。
俺は心配だ。
おまえのゲームプレイはなかなかねちっこい。
新しい町にくれば町の中も家の中も、全て調べる。
樽を投げては壊す。壺も投げては壊す。タンスはあさる。そうしてアイテムを見つける。
言っとくがおまえのやってることは破壊と強奪だからな。
3ゴールドとか戻せよ。へそくりだろ。そっと戻せよ。かわいそうだろ。
つーか、勇者の俺にこんなコソドロみたいなことさせるなよ。
隈なく捜索するおまえの執念深さには引くぞ。ゲームをするやつはみんなそうなのか。
俺は心配だ。
今日もずっとプレイをしているな。
無表情で画面を見るのやめろ。ちょっとこわいぞ。口も閉じろ。まぬけだぞ。
それから、近い近い近い。どんだけ顔を近づけるんだよ。眼鏡かけろ。目は大事にしろ。ブルーライトがいいぞ。毎日15時間はやってるからな。
俺は心配だ。
今日もいつもと変わらないプレイ時間。
おまえ、完全に昼夜逆転生活だな。深夜のアニメをリアル制覇が日課とは。
アニメ見ながらゲームするな。どっちかに集中しろ。RPGなめるな。アニメも人気RPGゲームからのアニメだけどな。いいなー。俺も出たい。
いやいやいや。それよりおまえゲーム画面やテレビ画面ばかり見てないで、ちょっと人と会話しろよ。親とも兄弟とも話さないのはよくないぞ。
俺は心配だ。
あれ? 今日はプレイ時間が短い。
11時間。どうした。どうした。
それに、いつもより顔色がいいな。なんかいいことがあったか。
それからのおまえは日に日にゲームする時間が減ってきた。
いや。いいんだ。元々やりすぎてたくらいだし。
でもさ、ほぼ毎日一緒にいたからやっぱ気になるだろ?
そして、俺は知る。
それはプレイ中にかかってきた携帯の着信音。
おまえはゲーム機片手に通話ボタンを押して喋り出した。
……。なるほど。友達からか。おまえの顔に笑顔が見える。
そうか。おまえはそうやって笑うんだな。
いいぞ。携帯はアプリゲームをするものじゃない。人と会話するために使うものだ。
俺は安心した。
あれから数週間、おまえは変わらず毎日ゲームをしているが、やっても数時間になった。
相変わらず、町や城での破壊と強奪を繰り返しているが、まあいい。ゲームとはそういうものなんだろう。
夜は寝てるし、学校にも行ってるし、家族とも話してるし、友達とも電話してるし。
いいことだと思う。
おまえは俺なんだから、もっとしっかりしろよ。
頼むぜ分身。
ああ、それから、おまえは俺の嫁さん候補を幼なじみとお姫様で悩んでいるけど、俺は断然幼なじみ派だ。
そこんとこ、ミスるなよ。




