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勇者のモンスター退治より心配なこと

作者: ことは
掲載日:2016/07/21

『勇者のモンスター退治より心配なこと』


 ゲームにはAIという機能がある。

 人口知能といわれて、コンピューターが自動で判断してゲームを進めていくのだ。ゲーム初心者やレベル上げを目的にしている時に使われることが多い。


 俺はそのゲームキャラ。主人公の勇者だ。AI知能をもっている。そしていつの間にか意思も持っていた。

 なぜかは分からない。だが俺は今日もおまえを心配している。


 俺を操作する、おまえだおまえ。


 おまえ、四六時中ゲームをしているが、一体どんな生活を送っているんだ。

 メシは食ってるか。友達はいるのか。

 俺は心配だ。


 おまえのゲームプレイはなかなかねちっこい。

 新しい町にくれば町の中も家の中も、全て調べる。

 樽を投げては壊す。壺も投げては壊す。タンスはあさる。そうしてアイテムを見つける。

 言っとくがおまえのやってることは破壊と強奪だからな。

 3ゴールドとか戻せよ。へそくりだろ。そっと戻せよ。かわいそうだろ。

 つーか、勇者の俺にこんなコソドロみたいなことさせるなよ。

 隈なく捜索するおまえの執念深さには引くぞ。ゲームをするやつはみんなそうなのか。

 俺は心配だ。



 今日もずっとプレイをしているな。

 無表情で画面を見るのやめろ。ちょっとこわいぞ。口も閉じろ。まぬけだぞ。

 それから、近い近い近い。どんだけ顔を近づけるんだよ。眼鏡かけろ。目は大事にしろ。ブルーライトがいいぞ。毎日15時間はやってるからな。

 俺は心配だ。


 今日もいつもと変わらないプレイ時間。

 おまえ、完全に昼夜逆転生活だな。深夜のアニメをリアル制覇が日課とは。

 アニメ見ながらゲームするな。どっちかに集中しろ。RPGなめるな。アニメも人気RPGゲームからのアニメだけどな。いいなー。俺も出たい。

 いやいやいや。それよりおまえゲーム画面やテレビ画面ばかり見てないで、ちょっと人と会話しろよ。親とも兄弟とも話さないのはよくないぞ。

 俺は心配だ。


 あれ? 今日はプレイ時間が短い。

 11時間。どうした。どうした。

 それに、いつもより顔色がいいな。なんかいいことがあったか。


 それからのおまえは日に日にゲームする時間が減ってきた。

 いや。いいんだ。元々やりすぎてたくらいだし。

 でもさ、ほぼ毎日一緒にいたからやっぱ気になるだろ?


 そして、俺は知る。

 それはプレイ中にかかってきた携帯の着信音。

 おまえはゲーム機片手に通話ボタンを押して喋り出した。

 ……。なるほど。友達からか。おまえの顔に笑顔が見える。

 そうか。おまえはそうやって笑うんだな。

 いいぞ。携帯はアプリゲームをするものじゃない。人と会話するために使うものだ。

 俺は安心した。


 あれから数週間、おまえは変わらず毎日ゲームをしているが、やっても数時間になった。

相変わらず、町や城での破壊と強奪を繰り返しているが、まあいい。ゲームとはそういうものなんだろう。

 夜は寝てるし、学校にも行ってるし、家族とも話してるし、友達とも電話してるし。

 いいことだと思う。

 おまえは俺なんだから、もっとしっかりしろよ。

 頼むぜ分身。


 ああ、それから、おまえは俺の嫁さん候補を幼なじみとお姫様で悩んでいるけど、俺は断然幼なじみ派だ。


 そこんとこ、ミスるなよ。


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