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 第8話 「賭け」

◆モレノ旧街道(フィフス村跡地)


挿絵(By みてみん)


※大まかな配置図です。



 【ケイリィエリア】


 ラスカは上手くやってるかな。

 勘だけど、ラスカ、セルゲィさん、ジムさんが担当している辺りだと思うな、ゴブリンの巣は。


 それはジムさんやリーダーも分かってるんだ。だからこそこの配置。巣の殲滅じゃなく、場所の特定が目的だからだ。

 おそらくだが、ロンさんとザキエフさんは『索敵』を持ってないんだろう。

 可能性の高いエリアは『索敵』持ちが担当すると。

 事件発生現場から考えて、俺やラスカのエリアが怪しいと見てるんだろうな。


 『フクロウの尻尾』が俺たちに求めているのは、広域殲滅が目的の大規模魔術ではなく、巣の場所を特定する為に必要な『索敵』だ。


 今回の案件は短期勝負だから、巣の場所を特定するのに時間を食われるのを避けたんだ。

 ハリチコさんは『索敵』を使えるだろうけど、彼女を森に入れて危険に晒すよりは、拠点の周囲、ようは事件現場周辺の監視にあたらせるつもりなんだろう。タチワナさんはその護衛と。


 人族の考えることは、相変わらずだ。

 実に隙がない。


 得意な者が得意な場所を担当する。

 適材適所ってやつだろう。


 一見当たり前のことなんだけど、俺たちエルフ族は、この当たり前のことが自然に出来ないんだ。

 何というか――


 『自分だけ損しているような気分』


 というのが、本音だったりする。

 

 だって、報酬は頭割りだろ。

 どう考えても、ジムさん、俺、ラスカ、セルゲィさんが割りを食ってる。特に俺とラスカは両サイドをフォローする可能性もあるから、一番荷が重い配置になってる。

 ハリチコさんとタチワナさんなんて、ほとんど意味が分からない。探索は拠点から放射状に進めるわけだから、拠点が危険に晒される可能性は極めて低い。


 でも、これは多分、差別とか搾取とか、そういう類のものじゃない。単純に、俺たちの能力を対等以上と認めた上での、ごく自然な(・・・・・)成り行き。

 

 俺たちエルフ族が拒否感というか、どうしても、「え?」という感情が想起するのを止められないのは、誰かをフォローする、ということを経験的に学んだことがないからだ。

 エルフ族は誰かにフォローされる、という体験が少なすぎるんだ。他の種族と感情を共有するにはね。

 

 それゆえの被害妄想。

 

 たかだか8人程度。

 そんな少人数による作戦行動でさえ、ある種の被害妄想にふけってしまう。

 そのくせ、自分たちが得する側に回った時は、黙ってその得を享受するんだ。損に回った側を、馬鹿だ間抜けだと、内心貶しながらね。


 全くのところ、ラスカの言う通りだ。

 エルフ族はいずれ絶滅する。


 今、何かを始めないと。

 

 セルゲィさんが何を考えているのかは分かんないけど、多分、同じように思っているはず。もしかすると、今では無感情になってるかも知れないけどね。きっと昔は思ったと思うよ。


 ようは、今始めるか、始めないか。


 

 さて、さっきからちょこちょこ『索敵』にゴブリンらしき魔物が引っ掛かってるけど――哨戒役というよりは、単に、食い物を探して単独でうろついてるだけ、って感じだよな。

 はぐれ個体っぽいし。


 北大陸には『コボルト』はほとんどいない。

 黒狼なんかの狼系の魔物との生存競争に負けたからだ。この大陸には、他の大陸に比べて、狼系の魔物が多い。

 だから、この反応はゴブリンで間違いないと思う。

 一般にゴブリンとコボルトは間違えやすいって言われてる。

 

 同じ群れのゴブリンって可能性もあるけど、うーん、迷うなぁ。

 どれか一頭を『尾行』したいところだけど、どれにするか。

 食糧を持ってたら、間違いなく巣に戻るんだろうけど、森の中をぶらぶらしてるだけに見えるんだよな。


 俺の『索敵』はレベル4。ちなみにラスカはレベル3。レベル4だと対象の魔物の種類が、何となく判断できる。オーガやオークと間違えることはない。


 だとするなら、俺のエリアには20頭以上の規模のゴブリンの巣はない。

 ジムさんのエリアに流れた可能性はあるけど、やはり、本命はラスカかセルゲィさんのエリアだな。



 ◇◆◆◆◇



 【ラスカエリア】


 さっきの巣は10頭前後だったから、この群れはその倍はあるな。

 どうやら、俺のエリアでビンゴらしい。

 セルゲィとジムのエリアは事件現場から遠すぎる。

 おそらく、俺かケイリィのエリアが本命で、ジムさんとセルゲィさんのエリアは用心の為だったんだな。6分割した上で、2箇所を潰せるんだから、仮に今日中に巣を特定できなくても、明日以降楽になる。

 

 配置を考えたのがロンかジムかは分からんけど、たかがD級パーティーで、大したもんだ。


 最初の10頭の巣は帰りに潰すか。

 さすがに10頭前後の群れが馬車を襲うとは思えん。


 「(……)」


 ……いや、いかん、いかん。

 短慮はマズい。

 ケイラン商会には護衛が二人いたんだ。一人は足を怪我して役立たずだったとしても、最低、一人はいたわけだ。戦闘で数を減らしただけかも知れん。10頭前後の群れだからと言って、討伐対象の群れじゃないとは言い切れんぞ。


 しかし、ゴブリンの数が多すぎだな。

 フィフス村が廃村になって、野生化した家畜なんかが繁殖してんのかな。これだけのゴブリンの腹を満たすくらいなんだからな。

 あとはあれだな。

 

 人族の住む村は、魔物にとっても住みやすい。


 これだ。

 人族は、実に良い土地を持ってる。

 自分たちで自分たちが住みよい環境に整えたんだろうけど、それにしたって、最初は森か原野だったわけだろ。森の侵食具合を見るに、フィフス村は元は森だったはずだ。

 それを、長い時間を掛けて、住みやすいように切り拓いていったんだ。

 やっぱ、凄ぇわ。


 むぅ。

 このゴブリンは、明らかに、さっきの群れとは違う群れのゴブリンだな。

 本当に数が多い。


 そもそも、ケイラン商会の馬車だけが襲われたってのも変だ。これだけの数がいるなら、事件発生の前後に、似たような事件があってしかるべきだ。


 事件か。

 まぁ、ゴブリン側にしてみれば、食糧を求めての、自然な行動に過ぎないんだけどな。くふふ。


 自然な行動か……。


 フクロウの連中、本気で(さら)われた商会の娘に同情してんのかな。

 多分、本気で同情してんだろうな。


 頭では分かってるんだけど、難しいんだよなぁ。


 同情。


 つまり、事件自体に感情移入しちゃだめなんだ。つか、事件自体に感情移入できるわけがないんだから。他人に同情するんなら、対象を「分析」しては駄目だ。

 事件を分析したら、どうやったって、被害者のアラが見えてしまう。


 同情とは、もっとこう、直感的なもののはずだ。


 娘の――ホルダだっけか、ホルダに感情移入するんだ。感情は机上で創作したものではなく、現場の生の感情なんだからな。


 そうだなぁ――



 ――雨の降る昼下がり。

 時間は14時くらいだ。

 馬車は先を急いでいる。

 旧フィフス村は当然通過する予定。陽が落ちる前に、エルグレン村の中心部まで着かなくてはならないんだ。半分森に包まれつつある廃村に用などあるはずがない。

 だが、土がぬかるみ、なかなか距離を稼げない。

 そうこうしている内に、前方に土砂崩れの跡。

 

 ここでブッハルト・ケイランは選択を迫られる。

 先を急ぐか、来た道を戻り、新街道を行くか。

 ただし、来た道を戻れば、すぐさま出発は出来ない。

 一日無駄にすることになるだろう。

 

 ここでブッハルト・ケイランに、もう一つの選択肢が生まれた。

 俺たちが今回拠点を張っている場所だ。

 あそこに俺たちと同じように拠点を張り、半日潰すつもりで、土砂崩れの処理をやる。

 護衛と使用人がいるんだから、馬車一台が通るだけの土砂を片付けるくらい、やって出来ないことはない。


 (1)拠点は作らず、とにかく土砂を片付け、先を急ぐ。

 (2)引き返す。

 (3)拠点を作り、その日は片付けにあたり、翌日朝一で出発する。


 ざっとこんなところか。

 だが、ブッハルト・ケイランは(1)を選んだ。

 片付けは予想外に時間が掛かった上に、護衛の一人が足を怪我してしまう。

 拠点を作っていないということは、野営は最初から考慮されていないんだよな。


 まぁ、その後、ゴブリンの群れが襲ってきて、事件は起きるわけだが、事件の分析はここまでだ。

 ここで止めると、結局、関係者の誰にも感情移入していないわけで、「間抜け」という感想しか抱かない。


 そうじゃないんだ。


 事件の関係者に感情移入してみる。


 襲われた8人の中で、戦闘力という点で、攫われたホルダは最も不安だったはずだ。

 雨はそれだけで気分を暗鬱にするし、まして、土砂崩れで通行止め。

 8人の中に土系魔術を使える者はいただろうか。

 土砂を片付けるにしても、満足できる道具なんて無かったはずだ。彼らは商人であって、百姓ではないんだからな。

 厚い雨雲で、日没前でも、辺りは暗かっただろう。

 ホルダの不安はどんどん大きくなっていったはず。

 護衛や使用人たちが急いで作業をすればするほど、一生懸命であればあるほど、不安は増したはずだ。

 いっそ、自分も作業に加わりたいと思っただろう。

 だが、父ブッハルトに止められる。


 その時、護衛の一人が足を怪我。


 ホルダ以外にも絶望感が広がる。

 土砂はまだかなり残っている。

 この時点で、ブッハルト・ケイランは選択を誤ったことを悟る。それが娘ホルダにも伝わる。


 不安で心細いのに、自分は何も出来ない。

 役に立てない寂しさと不安。

 人族は、役に立てないことを、強く気に病む種族だ。


 ゴブリンには『夜目』がある。

 魔物なら多くが持っているスキルだけど、人間にとっては『暗視』がその代わり。しかし、『暗視』は取得条件が解明されているにも関わらず、意外に持っている者は少ない。

 獣人族は持っている者も多いけど、人族はほとんど持ってないんだよな。町に住む者なら、尚更か。

 夜、活動しなくても生きていけるから、ってのがその理由。


 ブッハルト・ケイランは足元に火が点いているのに、次なる指示を出せないでいた。


 そこに謀ったように、ゴブリンの群れが襲い掛かる。

 少なくとも20頭以上いたはず。

 かたや、人間側は、まともな戦力に数えられるのは、護衛一人。

 8人もいて、実に7人が足手まといという絶望。


 護衛は孤軍奮闘するも、『暗視』を持っていないか、あるいは持っていても低レベルか。いずれにしても、状況は悪くなる一方。


 ホルダにまで手が回るわけがない。

 使用人が殺される。

 もしかしたら、気が(はや)ったゴブリンの一頭が、死んだ使用人に噛り付いたかもしれない。


 パニックになるホルダ。


 ホルダの叫び声を聞いたゴブリンたちの視線が、一斉にホルダに集中する。


 俺たちが良い女を見ると性欲が高まるように、パニックになったホルダを見たゴブリンたちの性欲が、一気にそそり立つ。ゴブリンの種族特性スキル『他胎』がアクティブ化。

 ゴブリンにとって、ホルダが食糧ではなく、『他胎』の対象になった瞬間だ。


 襲い来るゴブリンたちの攻撃は激しさを増し、また一人使用人が倒れる。

 もはや彼らに残された手立ては撤退しかない。

 だが、結局、ブッハルト・ケイランの決断は一手遅かった。


 一人娘のホルダが攫われたのだ――



 ――とまぁ、想像してみるんだが、別に、巣は落ち着いたもんなんだよな。


 倒木を集めて、洞窟の入り口を隠してる。

 ゴブリンの浅知恵ってとこか。


 しかし、あれだけの倒木、持って来るにしたって、結構な重労働だぞ。群れの為とは言え、あそこまでやるんだな。

 それに、何とも落ち着いたもんじゃないか。

 子ゴブリンをあやしたり、何か、石を加工したり。

 それぞれがそれぞれの役目を果たしている。

 浮ついた空気もないし、とても洞窟の奥に壊れた女がいるとは思えん。

 群れが群れとして、正しく機能している、って感じだ。


 それに引き換え、俺たちエルフ族と来たら……。

 何だか恥ずかしくなっちゃうね。


 しかし、やっぱ、20頭以上はいるな。

 巣の規模としては、こいつらが襲ったと考えるのが普通だけど、巣の位置が悪い。


 このまま巣を眺めていても仕方ないか。

 食い物を探しに出ている個体が戻ってきたら、見付かる可能性も増える。見付かれば、戦闘になる。

 そろそろ戻るか。

 この先はもうセルゲィのエリアだ。やつに任せよう。


 俺のエリアで候補の巣は二つ。

 『索敵』レベル3じゃ、洞窟の中までは見通せん。

 最初の、10頭前後の規模の巣が第一候補だな。

 こいつらと比べると、巣の周囲の雰囲気が変だったような気がする。帰りにもう一度見ていくつもりだけどな。

 それに、事件現場の位置を考えれば、この巣のゴブリンたちが事件現場まで遠出していたとは思えん。

 ここのゴブリンが事件現場まで行くとしたら、最初の群れの縄張りを横切ることになるし、下手したらゴブリン同士の争いになる。


 ここは基本通り、現場に一番近い巣を第一候補として報告しよう。

 サクッと討伐して、遺品を回収したら、適当に『神聖シンバ皇国』の名を売る。

 今回の案件はそれで十分だろう。



 ◇◆◆◆◇



 【セルゲィエリア】


 ・10頭前後のゴブリンの巣が一つ。

 ・5~6頭の黒狼の群れが一つ。

 ・はぐれのトロールが一頭。


 どうやら、私のエリアじゃないようです。

 事件現場の位置を考えれば、ラスカ君か、ケイリィ君のエリアで間違いないでしょうね。

 一応、可能性は潰しておきますが、距離的に、ここから事件現場までゴブリンが狩りに行くとは思えません。


 とっとと拠点に戻って、武具の手入れをしたいですね。

 トロールを斬った時についた血脂が気になって、鞘に戻すのも憚られます。



 【ロンエリア】


 やべぇな。

 何をやってるんだ、俺は。

 「探索」だってのに、俺、普通に狩りをしてるわ。

 しかも、おそらくここはもうケイリィのエリアだし。魔物の群れも一つや二つあったんだろうが、全く気付かねーわ。


 『索敵』が使えないと、ほんと役に立てないな。


 とりあえず、拠点に帰ってメンバーたちの報告を聞いた後、ジムと明日の作戦を練ろう。

 これ以上、殺気を振りまいて森を荒らしちまったら、皆に迷惑を掛けるだけだ。明日の討伐に悪影響を及ぼしかねない。


 はぁ……。


 依頼を受ける時は自信満々な態度を取ったけど、失敗したらシャレじゃ済まんぞ。

 供託金は22万5000セラ(日本円で約225万円)。

 没収になったら、ウチとしてはかなり痛い。


 戦闘なら自信はあるが、この手の「探索」、「捜索」の類はどうにも性に合わねぇ。いつまで経っても、初心者の頃と変わりない。

 今や、パーティーのリーダーだってのに、何とも締まらない話さ。


 ジムがいなかったら、『フクロウの尻尾』はとっくの昔に終わっていただろうな。


 ジムの話を聞いた時には、柄にもなく俺も「義憤」に駆られたもんだが、よくよく考えれば、ラスカの言ってた「裏がある」ってのも、もっともらしい話だ。実際、ありえそうだ。


 もともと娘が攫われるのは算盤ずくで、むしろそれはケイラン商会の希望だったとか。

 商会の代表が、わざわざ娘を連れて急ぎ旅する理由が分からん。嫁さんは一緒じゃなかったんだろ?


 仮に娘に商売を教えるためだったとしても、もっと良いケースはあるはずだろ。何で野営になるかも知れん営業に一人娘を付き合わせたのか。

 

 大体、何を運んでいたのやら、見当もつかない。

 

 ルート的にはエルグレン村より先に目的地があったんだろうが、そもそも旧街道はショートカットにはならない。直接エルグレン村に行きたいってのなら話は別だが、ケイラン商会にとって、エルグレン村に特別な用事があるとも思えないしな。

 

 エルグレン村は3000~4000人の村だ。元フィフス村の連中がかなり含まれているからな。村としては結構大きい規模だが、だからと言って、ケイラン商会にとって、一刻を争うほどの商機があったとも思えん。


 まぁ、考えても意味のないことか。

 ジムには、この角ウサギ二羽で許してもらおう。晩飯に8人でつまむには、丁度良いサイズだろう。



 【ザキエフエリア】


 だめだ。

 完全に見失ってしまった。

 せっかく()けてたのに、何つぅ逃げ足だ。

 

 狩りじゃないんだから、追い掛け回すのは下策だ。第一、巣まで追いかけたとして、それからどうするんだ。ゴブリンとは言え、群れの規模によっては、俺程度、数で潰される。

 4頭までだろうな。

 俺がソロで相対して、無傷で帰れる規模は。

 5頭だと、ちょっとキツい気がする。

 相手が一頭なら、オーガにだって立ち向かえるんだが。

 

 獣道はあるし、魔物の足跡もある。

 ゴブリンの痕跡はあるにはあるんだ。

 間違いなく、ゴブリンはこの辺りを縄張りにしてる。


 だが、巣を特定できん。

 たかがゴブリンの巣の特定、こんなに難しかったか?

 今までどうしてた?


 ジムか。


 あいつが全部やってたんだな。

 俺ぁ馬鹿だから、毎回勘違いしそうになる。

 俺がD級になれたのだって、結局のところ、ジムのお陰だ。

 リーダーは強いが、だからと言ってジムがいなきゃ、C級にまでなれたかどうか怪しいもんだ。多分、無理だろ。


 俺は断言できる。

 このパーティーはジムでもってる。

 今まで、全部、ジムがお膳立てしてくれてたんだ。


 リーダーは巣を特定できただろうか。

 俺だけ何の手柄もなく拠点に戻るのはちょっと勇気がいるな。

 タチワナあたりに馬鹿にされそうだ。



 【ジムエリア】


 ・7~8頭のトロールの巣が一つ。


 俺のエリアじゃねぇな。

 ゴブリンをほとんど見ねぇ。

 もっとも、トロールの巣があるんじゃ、ゴブリンは立ち退くしかねぇけどな。

 多分、トロールたちのせいで、ゴブリンの群れが北(=ケイリィエリア)か、東(=ラスカエリア)に押し出されたんだ。


 ラスカ・ヴォロノフの言ってた、馬車を襲うなら30頭前後は必要だという話。あながち間違い、ってわけでもねぇ。

 確かに一理ある。

 トロールのせいで、群れが拡大したんだ。

 トロールの巣は予想外だったが、ゴブリンの方は予想通り、ラスカかケイリィのエリアに巣がある。

 事件現場から逆算して、間違いないだろう。


 南はセルゲィが南を潰してくれてるはずだから、俺のエリアはもう良いだろ。

 ゆっくり一晩休んだら、明日一気にかたを付ける。


 ラスカ・ヴォロノフとケイリィ・レグルスがいれば、全く問題はない。大規模魔術で一手詰めだ。


 『神聖シンバ皇国』さんよ、期待してるぜ。

 今回の案件は俺たちが世に出るチャンスでもあるんだ。

 俺はお前たちが冒険者登録をしてから、ずっと見させてもらってた。お前たちは間違いなく大物になる。


 俺は北の果ての支部で一生を終えるつもりはねぇ。

 勝手な話で悪いが、わずか15歳のお前たちに、俺の……俺たちの未来を賭けさせてもらうぜ。

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