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見解の相違

次の日。

約束の時間より早めに待つことにし、お気に入りのミルクセーキを飲んでいると、からんからんとドアの

に付いている鈴が鳴った。

見るとそこには可愛らしい女の子がきょろきょろと挙動不審気味に周りを見ていた。

確かに小学生が一人で喫茶店に来ること自体あんまりないから仕方ないよな。

早く安心させてあげたくなり、俺は声を出して呼びかけた。

すると小学生女子はほっと安心した顔でこちらに向かって走ってきた。

「雨乃さんですか!?私、昨日電話した小鳥遊目白です!人違いだったらすいません!」

「いやいや、俺は君が電話してくれた人だよ。まっ、とりあえず座ってね」

優しく諭すように声をかけると、少女はニコッと笑って座った。

さっそくだけど、と話を始めようかと切り出したが、少女は俺の顔をガン見してくる。

ずっと。

じーーっと。

小学生が見たことない物を興味津々に見るあの感じだ。

正直あまり小学生とはいえ、異性に顔を見られる照れてしまう気持ち悪い自分がいるので、俺は反射的にスッと顔をそらすと、またも俺の顔を一生懸命覗き込んでくるのだ。

「あのー、俺の顔がそんなに気になる?」

「はい!私はてっきり、もっと年を取っている人だと思っていたので!すごく若いんだなーと驚いていました!それか、若作りをしている人かと思って観察していました!」

「そ、そうなんだ。あのね、一つ君に教えてあげておくよ。君の今後のためにも。あまり人の顔はじろじろ見ないようにしたほうがいいよ」

「えーーっ!何でですか??」

「まぁ、何ていうか。いずれわかるよ」

そうなんですか、まぁわかりました。

と、軽く聞き逃された感は否めなかったがとりあえず話をする。

「さて、さっそくだけど、君の悩みを聞かせてもらうよ」

は、はい!と急に緊張しだす小学生女子を見て、まだまだ子供だなと思った。

「あの、実はですね。欲しい物があるんですけど、パパとママにに言えなくて・・・」

「あぁ、そういえば君のご両親には話してないって言ってたね。というと、何か話すと怒られちゃうような物なのかな?」

「いや、そうじゃないんですけど・・・。物というより、場所が問題で・・・」

「場所?っていうと?いまいちよくわからないな」

「あの、その場所って言うのは、その、ゲームセンターなんですけど・・・」

「あぁゲーセンか!ん?それで、何か問題なの?」

「はい、私、まだ一度もゲームセンターに入ったことがなくて。ショッピングモールの中にあるので、よく前は通るんですけど・・パパとママが、あんな場所入っちゃダメだって言うんです。ガラス張りで中が見えるんですけど、その時に、おっきいカピバラのぬいぐるみがあって。どうしても欲しいんですけど、あの場所に入る事は許してくれなくて・・・。」

ゲームセンターぐらいいいだろうとは思うけど、もしかしてけっこうお嬢様なのかな、この子。言葉遣いもけっこうシッカリしてるような気がするし。

親御さんがそういう人だったら、多分そう言うかもしれないし。

「うーん。そのぬいぐるみが普通に売ってたら問題ないんだけど、ゲームセンターだけにしか置いてない物も多いし。だから、俺にそのぬいぐるみを取ってほしいって事か」

「そうです!お願いします!絶対に欲しいんです!」

「よし、じゃあそのぬいぐるみを取りにいくか!」

おーーっ!と二人で声を合わせてハイタッチした時だった。

あれ?待てよ。これお金ってどうなるんだ。

ふと我に返った。と同時に、俺は目白ちゃんに恐る恐る聞いた。

「あのね、目白ちゃん。ちょーっと聞きたいんだけど、お金って俺に払ってくれるの?かな?」

「えっ?お金?」

「うん、お金」

「・・・・・」

「・・・・・」

喫茶店に再び静寂が訪れた。心地いい音楽だけが鳴っている。

この沈黙を破ったのは目白ちゃんだった。

「えっと、お悩みを相談したら、解決してくれるって書いてたので電話したんですけど・・」

わかった。小学生女子。ていうか、小学生全体に言える事かもしえないけど、都合のいい部分だけを見ちゃったんだな!うん!まさかとは思っていたけれど、小学生がそんなにお金持ってるとは思えなかったから、変だなーと思っていたよ!よ、よし。ここは非情になってお金の事を伝えよう。小学生にも、大人の世界は厳しいんだぞって事を教えないとな。

なんてことを考えていたら、目白ちゃんが涙目になりながら

「お金払わないと、ぬいぐるみ取ってもらえないんですか・・?」

と俺に訴えてきた。

お金がなきゃ無理なんだよ!!と冷酷に現実を教えてあげるのがいいのかなと思ったが、やっぱりそんな事小学生に言えるわけなかった。かわいそうだもん。そこで俺はすぐにこう返した。

「い、いや!違うよ!全然違う!わかった!それじゃ、明日お兄ちゃんがぬいぐるみ取ってあげるからね!

だからほら!泣かないで!」

「は、はい!わかりました!じゃあ、明日は学校終わるのが昼の三時なので、その時間にまたこの場所で集まりましょうね!」

目白ちゃんは再び最初に出会った頃のようにキラキラした眼差しで俺を見つめながら、明日の時間指定までしてきた。

まっったく。小学生ってのは厄介なものだな。本音を言うと、こんな金にならない仕事は御免だ。

しかも俺の金を使ってる時点でもうおかしいからな。

稼ぐどころか、貢いでるようなものだし。

おかしいんだけど。

けど。小学生の切なるお願いを断る訳にはいかねーじゃねーか。俺も鬼じゃないからね。

だから、今回だけは俺のお金で悩みを解決してやるよ。

そう自分に言い聞かせて、俺は目白ちゃんとお別れした。


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