貴方は
ルナは今までの雑巾のような服を脱いで着替え始めた。ボタンを丁寧に取り、足を入れて服を持ち上げ丁寧にボタンをつけて、くるっと鏡の前で一周をした。
「アルム、終わったよ」
カーテンを開けて、ルナは顔をひょこりと出すとアルムは振り返り、少し顔が固まった。
「どうかな……変なところない? なんか着せられてるぽい感じするけど」
アルムは静かにルナの元に寄ると優しく抱きしめた。ルナはびっくりして、固まっているとアルムは耳元で小さく呟いた。
「とても似合ってますよ。世界で一番美しいです」
アルムは声を震えさせて、暫く何も話さなかった。 ルルナはアルムを抱きしめて「ありがとう」と何度も言った。
ーーー
翌日。
アルムは朝早くから、準備をしていた。ルナは眠い目を擦って、起き上がると既にきっちりとしていたアルムがいた。
「アルムこんな朝早くにどうしたの?」
「今日はおば様がいらっしゃるんです」
ルナは立ち上がり、アルムの襟を整えて優しく肩を叩いた。
「どんな方なの?」
「昔は王族の家庭教師をやっていたので、とても厳しい方です。兄上や私もよく叱られてますね」
ルナは驚き、動きを少し止めると小さく笑った。
「もしかして、アルムに嫉妬でもしてるんじゃない?」
「なんで私に?」
「非の打ち所がないから、少しでも嫌なところがあったら怒りたくなっちゃうのよ」
「そうだと有り難いですが」
アルムは深呼吸すると、シャツをまっすぐ引っ張り、シワを整えた。
「それでは行ってきます」
「いってらっしゃい。頑張ってね」
ーーー
アルムは深呼吸をするとドアを叩いて、部屋に入った。すると、獲物を捕らえる鷹のようにアルムを睨み付けてきた。
「おひさしぶりです。おば様」
「ああ、アルムね。どうぞ」
席に案内されて、アルムは「失礼します」と座った。ハルムは引きつった笑顔で、父は小さく小動物のようにびくついていたなっていた。
「今ちょうどアルムの話をしてたんだよ」
「そうなんですか」
すると、叔母は真剣な口調に変わり、アルムを目を見つめた。
「最近、アルムが変な少女を連れているって聞いてね。今日はその話を詳しく聞くために来たのよ」
叔母はフフッと微笑んでいたが、その笑顔の裏は今にも怒るような表情が隠れていた。
「まさか、あのアルムがどこか知らない娘を連れ込んでいるって訳ないわよね」
アルムは口をモゴモゴとさせて、父はネズミのように小さくなっていた。
「私はアルムを責めたい訳じゃないのよ。貴方たちには間違った道を歩んで欲しくないの」
アルムは息を吸い込み、真剣な目で叔母を見た。
「おば様、私は間違った道を歩んでいると思っていません」
「アルム。貴方まで変になってしまったの?」
アルムは目をじっと見つめて、変わらない口調で淡々と話した。
「私はルナのことを愛しています」
場の空気が固まった。それでもアルムは淡々とルナへの愛を語り続けた。周りまで恥ずかしくなるような台詞を述べた。すると、叔母は少女のようにくすくすと笑った。
「まるで25年前に戻ったみたいだわ」
叔母は父の方を見ると父は恥ずかしそうに笑い、叔母はため息混じりで話した。
「アルムがいいと言うならばいいわ。好きにしなさい」
アルムは過多をほっと下ろして、「ありがとうございます」と微笑んだ。すると、叔母は立ち上がり、帰る支度をした。
「もうお帰りになるんですか」
「今日は様子を見に来ただけですからね。そろそろ失礼します」
叔母がドアを開けると目の前にはルナがいた。にこやかに微笑んでルナを見つめた。
「また会えて嬉しいですわ。ルナ・ミューフ皇女」
すると、父とハルムは立ち上がってルナの方を見た。アルムは周りをキョロキョロとさせて首を傾げた。
「ルナ・ミューフ!?」
ハルムはぼーっとしているアルムの肩を揺らして、アルムは前後に揺れた。
「おい、アルム。ルナ・ミューフだってよ」
「え?」
ハルムはため息をついて、「隣の国の皇女だろ」と話した。
「そうなんですか?」
「これだから、本の虫は」
アルムは急に顔を赤くさせて、ルナを見た。自分が恥ずかしくなったのだ。
「ルナ皇女。国に帰る時はいつでも連絡をしてくださいね」
「はい。わかりました」
「ごきげんよう」と叔母は去って、部屋には四人が静かに立っていた。父は咳払いをして、「皆部屋に帰りなさい」と言った。
「ねぇ、アルム」とルナは歩いているアルムの服を引っ張った。アルムが振り返ると、ルナは「髪にホコリがついてるから、しゃがんで」と指差して、ルナはアルムの頭を触れて、頭を撫でた。
「ありがとう。私、アルムと会えて良かった」
「ルナさん……。私もです」
アルムは顔を上げると、真っ赤な顔をしているルナがいた。
「それでね……。アルムはどっちがいいと思う?」
「何がですか?」
「苗字……。アルム・ミューフ か ルナ・クローク」
「ルナさんは皇女ですからアルム・ミューフの方が良いですね」
するとルナは首を振って「王位は弟が継ぐから……私は捨てられたから、苗字はどっちでもいいの」と少し悲しそうに微笑んだ。アルムはルナの頭に触れて「あちらの国は勿体無い事しますね。こんな綺麗な女性を見捨てるなんて」と話した。
「そして、私にとても勿体無いお方です。貴方のようなとても美しくて優しい方が私のお嫁さんになってくれるなんて、バチが当たりそうですね……」
「私こそ幸せよ」
アルムは手を差しのべて、ルナを立ち上がらせた。ルナはアルムの手を取り、歩き出した。
End.