私が気になるお嬢さん2
視線を感じ取ったミツハは少しびくついていた。
「アルムくん?」
「アルム、もう呑める年齢なんだから呑んでもいいのよ」
「枝豆追加でお願いします」
二人を無視してアルムは枝豆を頼んだ。店の主人は即座に枝豆を出した。アルムはペロリと平らげると、お茶をいっきに飲んだ。
「私まで酔ったら、帰り道困りますからね」
コップを置くとルナは少しシワのついた上着を持って、アルムの後ろにいた。目を擦って、アルムの上着を渡した。
「ありがとう」
「どういたしまして」
アルムは上着を羽織り、ルナはアルムの隣の椅子に座った。
「ルナちゃん、好きなの頼んでいいわよ。私の奢りだから」
ルナはメニューを見て、少し悩むと「パフェがいい」とぱあっと明るい顔をした。すると、店の主人は瞬間的にパフェを出して、ルナは目をパチクリさせた。
「魔法使いみたい」
「初めは皆驚くわよね」
ルナはパフェを食べるとまるで宝石を見つけたかのような笑顔で笑った。その様子を見て、イライラしていたアルムの顔は少し優しくなった。
「美味しいですか?」
「とっても」
アルムは鼻で笑うとルナは頬を膨らませた。頬杖をついたアルムは前を向いて、小さい笑顔を見せた。
「食べたら分かるよ」
「私も小さい時食べましたよ」
ルナはアルムの肩を叩くと、横を向いた。すると、冷たい物が口の中に押し込められた。ルナを見ると目を輝かせて、まるで感想を求めているようだった。
「美味しいですね」
スプーンを返すと、ルナは嬉しそうに続けて食べた。
「いちゃつくなよ」
「リア充爆発しろ」
アルムの後ろで醜い嫉妬が気付いたのはそれから少し後のことだった。ルナは満足したように食べ終えると、アルムは立ち上がって、袋を持った。
「それでは帰りましょうか」
「うん」
「じゃあねー」とガレは手を振り、アルムは頭を下げ、ルナは手を振ってドアを閉めた。
「楽しかったですか?」
「面白い人ばかりだった」
「そうですね」
伸びていく影をアルムは時々悲しそうに見つめながら、ルナの話を聞いていた。
ーーー
アルムは静かな部屋で出でベランダで月がはっきりと見えていた。時折鼻唄を歌ってワインを注いで呑んでは遠い目で水滴を見た。眼鏡をかけていてはっきりと見える景色に悲しそうに見つめていた。
「俺が強かったら、母上も死なずにすんだのに。全く俺はクローク家の恥だな」
アルムは嘲笑った。アルムは椅子から立ち上がり、下を見たが、この高さでは死ぬことは出来ず、骨折程度だろうと思うとまた椅子に座った。
「この家に迷惑はかけられないし、もう婿に行こうかな……」
「アルム?」とパジャマ姿のルナが立っていた。
アルムは慌ててシャツをズボンにしまい、脱いでいた靴をきちんと履いて、姿勢を正した。
「まだ起きてたんですか。早く寝ないと背が伸びませんよ」
「ねえ、婿にもらってあげる」
「寝てから言って下さいね」
アルムはルナの背中を押して、布団に寝かせてアルムはポンポンと布団を優しく叩いた。
「あのさ、そんな自分を責めなくてもいいと思うよ」
「ありがとうございます」
「私だって、ここに来る前病気や事故で亡くなる人を沢山見たし……助けられなかった」
アルムは遠くを見て、ルナを話を受け流すように頷き、やがてルナの話し声が聞こえなくないなるとアルムはルナを見た。
ルナは手で自分の顔を隠して、蚊の声のようなか細い声で話し、時々震えた声と鼻をすする音が聞こえた。
「私怖かったの、貴方に何されるか分かんなかった。だから、ここに来た時、私の主を殺して私も死のうかと思った。でも……貴方が優しくしてくれたから、ここで生きていく決心ができたの。だから、私の好きな人を虐めないで、私に接したように自分にももっと優しくしてあげて」
「優しくありませんよ。ただの偽善者です。それに私と居ても貴方は幸せになれません」
「幸せかどうかは私が決める」
ルナは体を起こすと、アルムはため息をついて、眉間にシワを寄せた。
「もういいから、早く寝なさい」
アルムは空になったワインを机に置いて、部屋の外へ出た。眼鏡を外し、髪をかきあげてドアにもたれ掛かりため息をつくと横から声が聞こえた。