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アルム  作者: 鈴木将太
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私が気になるお嬢さん1



「そういえばルナさんはこちらに来て初めての外出ですよね」

「最後に外を見たのは捕まった時」


悲しそうな顔をするルナを励ますようにアルムは大きな扉を両手で開けた。「さあ、外の世界へようこそ」と青空をバックにアルムは話すとルナは目を輝かせた。


「さあ、走りましょうか。夜になってしまいます」


ルナはアルムの手を引かれて走り、山道に入ると沢山の荷物を台車で運んでいるおじさんがいた。


「すみません。どこまで行きますか?」

「エーカ町までだよ」

「私達、途中のアヌ町まで行きたいんですけど、乗せてもらえますか?」

「ああ、いいよ」


「ありがとうございます」とアルムはおじさんにお金を渡して、ルナを乗せ、アルムも隣に座った。


「20分くらいで着きますから、大人しくしててくださいね」

「子ども扱いしないで、それくらい余裕だし」

「大人なら、一人で髪を解かして下さいね」


冗談で話すとルナは頬を膨らませて、アルムを蹴った。アルムはヴッと声を漏らして、ルナは鼻で笑うとアルムは普通の顔に戻した。


「仲良しな兄妹だね」おじさんは優しい笑顔で話しかけて、ルナは口をモゴモゴさせると「そうですか?」とアルムは蚊に刺されたのか腕を掻いて笑った。


「本当、毎日喧嘩ばかりで……」

「喧嘩するほど仲が良いってことさ。さて、着いた」


おじさんは大声で笑い、足を止めた。ルナはジャンプして下り、馬をじっと見た。「ありがとうございました」と頭を下げた。おじさんは手を振り、ルナも顔の横で手を小さく振った。姿が見えなくなるとアルムは振り返り、後ろにある町を見た。


「そんな大きくない町ね……」

「私の地元が大きすぎるだけですよ」

「そうなんだ……。ところで何を買う?」

「秘密です」


アルムは唇に人差し指を当てて、歩き出した。どきどき振り返るとちょこちょこと小さい体で付いていく姿はとても可愛いらしいかった。


「ルナさん、迷子にならないで下さいね」

「私が迷子になるわけない」


「はいはい。そうですね」と笑うとルナは背中をポコポコと殴り、「また子ども扱いする……」と拗ねるとルナの幼い顔が更に幼くみえた。それを見たアルムは嬉しいと同じくらいの安心を感じた。


「ねえ、さっきなんで兄妹って嘘言ったの?」

「私は主人と犬より、あなたとは兄妹のような関係でいたいんですよ」

「答えになってない。もしかして、説明がめんどくさかったとか……?」

「女性ってそういうの鋭いですよね」


アルムは苦虫を噛み締めたような顔をして、ルナを見ると嬉しそうににこにことしていた。


「さあ、入りますよ」


少し暗い路地裏を入り、看板や郵便受けもないドアを開けると賑やかな音楽と笑い声が入ってきた。


「アルムじゃない」と朝からお酒を呑み、ゲラゲラと笑ってる人を見て、ルナはアルムの後ろに隠れた。


「呑み過ぎは体に毒ですよ。いつから呑んでいらっしゃるのですか」

「酒は私の空気みたいなものよ」


息を吐くようにため息をつくと店の主人が軽く笑いながら、「朝からここに来ていてね」と話した。


「今日は何のご用で?」と透き通った目でアルムを見た。すると、その声を被せるようにお客はお酒の呑んでる手を止めて、アルムの肩を強く叩いた。


「アルムにも、ついに彼女が出来たんだね!

ねえ、彼女。名前は?」

「ルナです」

「ルナちゃんか。今いくつ?」

「15です……」


「お嬢さんが怯えてるじゃないか。もっと優しくしなよ」とガタイの良い男の人が困ったように横から話した。

「うるさいわね。この下戸」

「僕は呑まないだけだ!」


アルムの後ろに隠れてると、「この人達は変わった方だけど良い方ですよ」と言って「変わったは余計かな」とガタイの良い人は笑って、ツマミをパクリと食べた。


「僕はミツハ。で、この酔っぱらってるのはガレ」

「ルナです」


店の主人に気付いたアルムは「オレンジジュースを一つ下さい」と人差し指を一本立てた。


「アルムくん今日は呑まないないのかい?」

「はい。ちょっとマスターと話がありまして」


店の主人はアルムの目を見ると店の手伝いをしている娘とバトンタッチして、アルムと共に店の奥に入っていった。

ルナも立ち上がり、着いていこうとするとガレとミツハに止められ、寂しそうに席についた。


「あんたら、付き合ってるっていうより兄妹だね」

「あ、あの! 本当は付き合ってない……です」


ルナは顔を赤くして、恥ずかしそうな様子をガレは見て大声で笑った。そして、数回ルナの背中を叩くと残ってる酒を飲み干した。


「そんなの知ってるよ!」

「え?」

「このガレ様が良いこと教えてあげる」と立ち上がり、自分の胸を強く叩いた。


「あの子のお母さんと同じで嘘をつくと腕を掻く癖があるのよ」とルナの耳にこっそりと話しかけた。


「お母さんと?」

「ああ、雰囲気似てるよな……」


ガレとミツハは品定めをするのかと思うくらい、じっと見た。こういう状況不慣れなルナはもじもじとさせて、小さい声で話した。


「私は奴隷なので貴族の方と似てるとか恐れ多い……」

「ここの店は身分とか関係ないのよ。

私は元宝石商人の一般市民だし、ミツハは傭兵だしー。もちろん、この子も」と、カウンターに立っている店の主人の娘を指差した。


「私はマスターに拾われるまで孤児でした」とコップを店の主人の娘は丁寧に拭いて、後ろにしまった。


「ここにはいろんな人生のやつらがいるから、ルナちゃんも気にしなくてもいいのよ」

「実際、アルム結構苦労してるしな……」


ミツハは腕を組んで、数回頷くと何も知らないルナを見て、 少し残念そうに「アルムの10年前に母さん強盗に殺されちまったんだよ。しかも、アルムの目の前で」と話した。


「あの時からアルムは少し変わってしまったわね」

「今は元気そうにしてるけど、まだ引きずってるみたいだしな……」


湿っぽい話になってしまったルナは責任を感じたのか、少し残念な顔をするとガレはバックの中を漁り、小さな箱を取り出した。


「ルナちゃんは何も悪くないわよ。食べると元気になるよ。ほら、チョコレート食べな」

「ありがとう」


ガレに言われるまま、オレンジ色のチョコレートを口に入れると、何というか食べたことない味で、鼻にツーンとくる不思議な味がした。


「ルナさん、終わりましたよ」


奥の部屋からアルムと店の主人は出てきて、アルムは少し膨らんだバックを持っていた。


いつものクールで感情をあまり出したがらないルナの面影はなく。ふにゃふにゃと笑っている少女がいた。


「アルム」

「ルナさん? どうかしましたか?

……もしかして、何か食べさせましたか?」

「ルナちゃんにはチョコレートをあげただけだよ?」


ガレが見せた箱の中には宝石のようなカラフルなチョコレートがあり、「頂いていいですか」と聞くとガレは頷いてアルムはチョコレートを食べた。


「これ、お酒入ってませんか?」


箱の裏を見るとボンボンショコラと書いてあった。ガレは「あれ」と声を漏らして、手のひらで額を叩いた。

アルムは少し眠そうなルナを持ち上げ、ソファーに座らせるとアルムの上着を掛けると即座に眠りに落ちた。


「ごめんね。アルム。気づかなくってー」

「ああ、大丈夫ですよ」

「その代わり、今日は私の奢りで呑んでいいわよ」


アルムはルナの座っていた席に座り、お茶を頼んだ。ミツハは「ジュースじゃないんだね」と言うとアルムはミツハを見た。


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