私のことが嫌いなお嬢さん5
「今日は買い物したかったんですが、この怪我じゃ難しそうですね」
「何か買う予定でも?」
「本を買いたかったんですけど」
ハルムはお茶目に笑い、少女は「別の日にすれば大丈夫」と話した。「そうですね」と微笑み、ハルムは考え込んだ。
「今日の予定が狂ってしまいました。今日はどうしましょうか……」
「ゆっくりしていた方がいい」
「あ、では食べ終わったらお互いの事話しませんか?」
「お互いの事まだ何も知りませんし」と微笑み、少女は少し驚いたが暫くして頷いた。
二人で食器を片付けながら、アルムは口を開き「そう言えば、私の自己紹介をするのを忘れてました」と恥ずかしそうに笑い、片付け終えた少女の前に立った。驚いた少女は手で口を隠し数歩下がって、アルムを見た。
「私はアルム・クロースです。以後お見知りおきを」
とアルムは頭を下げると少女はワンピースの裾を摘まんで、お姫様のように頭を下げた。
「ルナです」
「素敵な名前ですね」とアルムは顔を上げて、ルナの顔を見るとルナは恥ずかしそうに目をそらし、もじもじとワンピースの裾を握りしめた。
それから、お互い恥ずかしくなって、 ルナは本を読み、 アルムは布団に潜った。そして、そこから一歩も進展することはなく、一日が終わった。
ーーー
「ルナさん、朝ですよ。起きて下さい」
「あと少し」
「全く……」
アルムの怪我が治った頃には『朝が苦手』『子ども扱いすると怒る』『すぐに寝る』というルナの性格を理解したアルムはその性格に悩んでいた。
昨日は無理矢理起こして、午前中はとても機嫌が悪かったことを思い出してため息をつく。
するとルナは布団から手を出して、起こして欲しいアピールをする。アルムは仕方ないなと笑いながら手をとり、布団から出した。何気ないやり取りがアルムにとってはとても嬉しかった。
「今日は早く食べて、隣の町へ一緒に買い物に行きましょう」
「ん……」
ルナは椅子に座り、食事をとった。うとうとしながらも手を動かして、アルムはハラハラとしていた。
髪がスープに入らないか、パンと間違えて指を食べてしまわないかと。
だが、そんな心配は無用でルナは目を閉じながらも器用に食事をした。そして、当たり前のように片付けて、鏡の前に座った。髪を解かして欲しい合図だ。
少し前なら戸惑っていたが今ならルナの考えてる事が分かり、とても 嬉しかった。
「ちょっと待ってて下さい。今行きます」
食べ終えて、食器を片付けるとルナの後ろに立ち、二番目の引き出しから、クシを取りだし髪を解かした。細くてすぐに絡まってしまう髪を優しく。そして、丁寧に解かすと光で更に美しくなる。
するとだいぶ目が覚めてきたルナは前髪を整えて、立ち上がる。そうすると、そこからはルナ一人で出来るからアルムは離れて、ただ見守るだけである。
「終わりましたか?」
「うん」
アルムはベットから立ち上がり、ルナは羽織を羽織って部屋の外へ出た。使用人は二人をまじましと見て、「お出かけですか?」と聞いた。アルムは「夜までには帰るよ」と話し、早歩きで玄関に向かった。