六.整理整頓は顔ではない
何の用事かと思いきや、とんでもなくぶっ飛んだラブレターを持参してきたあおい。彼にラブレターのチェックをしてもらった後も、彼女は帰る様子を見せなかった。
「もう用事は済んだんだろ?だったら、帰ってくれないか」
彼はイライラを顔に映しつつ、居据わり続けるあおいを追い出そうとする。
「待ってよー。もうすぐ用事ができる予感がするから」
「用事を予感するなよ!」
しつこく追い出そうとする彼に、あおいはブーブーと口を尖らせながら駄々をこねる。
「こんな愛らしい女の子に出て行けなんて、あんた、胸が痛まないわけー?」
「おまえが帰ってくれたら、胸が痛むどころか、支えが取れてスーッと楽になるよ」
彼の無礼千万の言葉は、あおいの心にまったく響くことなどない。彼女はニヤニヤしながら、愛情の裏返しだろうと、こたえる様子すら見せることはなかった。
「そんなに追い出そうとするのに、何か理由でもあるの?やることがあるなら、一言一句正確に述べよ」
あおいに問いただされて、思わず口ごもってしまう彼。今日一日、熱中しているテレビゲームを楽しもうとしていた彼にとって、それをあからさまに打ち明ける勇気はなかった。
彼はあおいにバカにされまいと、部屋の後片付けをするつもりなのだと、それらしい理由でこの場を乗り切ろうと企んだ。
「あんたが部屋のお片付け?・・・その顔で!?」
「片付けに顔は関係ねーだろ!!」
後片付けぐらいなら、ちょっぴり手伝ってあげると、いらないところで親切さを垣間見せるあおい。引くに引けなくなってしまった彼は、苦悶の表情を浮かべながら、本当に部屋の後片付けを始める羽目となってしまうのだった。