表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/31

五.トイレの後はチェックしよう

「さぁさぁ、感想聞かせて。原稿用紙1ページ分ぐらい」


 こんなラブレター読ませて、400文字も感想述べろというのも、ほとんどイジメに近い話だ。彼は困惑めいた表情で心からそう思う。致し方なく、彼は当たり障りのない返答でこの場をやり過ごすことにした。


「まぁ、ギャグとしては秀作じゃないか。次作に期待というところだ」

「あたし、感想聞いてるんだけど。何で審査結果みたいな答えなわけ?」


 彼に突っ返されたラブレターを、ほくほく顔でまじまじと眺めるあおい。


「いやー、それにしても、ここまで立派な恋文が完成すると思わなかったなぁ。これでますます、あたしの恋の成就貢献度ランキングがアップするねー」

「おまえの立派の判断基準がよくわからんな。・・・恋の成就貢献度ランキングって、誰が、どこでそんなの集計してるんだ?」


 本気なのか冗談なのかわからないが、あおいがお友達のために書いたラブレター。内容はまぁ・・・どうであれ、こんな感じでラブレターを書く人など、最近はずいぶん少なくなったものだ。


「でも手紙で告白なんて、今時珍しいよな。最近じゃ、メールで告白とかが多いんじゃないかな」

「メールかぁ。それなら、直接本人に言いにくいことでも言いやすいよねー」


 うんうんと頷いて、あおいは一人で納得しているようだ。すると、次の瞬間、彼女は唐突に手提げかばんから、ストラップをたくさんぶら下げた、ピンク色の携帯電話を取り出した。

 いきなりの彼女の行動に、彼は何事かと慌てるように尋ねてみた。


「おいおい、どうしたんだ?」

「あ、このストラップかわいいでしょー?この前、甥っ子がくれたんだよぉ。言っておくけど、あげないからね!」


 ストラップじゃなくて、携帯電話そのもののことを尋ねてるの!と、彼は苛立つように言い放った。


「あのね。ちょっと言いにくいことがあるから、彼に伝えておこうと思って、メールすることにしたの」


 あおいはドキドキしながら、携帯電話を操作し始める。彼は彼で、いったい誰に、どんなメッセージを送るのだろうかと、気が気でならない様子だ。

 メールを入力すること1分ほど。あおいは送信完了と声を発し、言いにくい思いを相手へと送り届けたのだった。


『ピロロ・・・ピロロ・・・』


 間髪入れずに、彼の携帯電話から着信音が鳴り響いた。

 彼はよっこらしょと腰を上げて、充電器に装着されている携帯電話を握り締める。そして、携帯電話の画面に目を据えると、一通のメールを着信していた。


「え、まさか・・・」


 彼は後ろへと振り向き、はにかんでいるあおいのことを見つめる。彼に届けられたメールは、あおいからの言葉にできないメッセージだったのだろうか!?

 心拍数を激しくしながら、ゆっくりと慎重に携帯電話を操作する彼。そして、ついに、彼は届けられたメール本文を読んでみた。


”おまぬけさんへ― ズボンのチャック開いてるよ。あおいより”


「こういうことは、直接言ってくれーー!!」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ