二十九.占いと呪いは紙一重
彼とあおいの二人は、思い出のいっぱい詰まった卒業アルバムを見入っていた。一ページ一ページめくりながら、同級生だった頃の出来事を思い起こしていた二人。
二人が懐かしそうに眺めていた写真は、クラブごとに撮影した集合写真であった。
「そういえばさ、あんたってどんなクラブ所属してたんだっけ?」
あおいから問いかけられて、彼は嘘偽りなく正直に告白する。
「俺は陸上部だよ。でも、途中で退部しちゃったけどな」
少し訳ありげに語る彼を見つめて、あおいはなるほどねーと一人納得して、パチンと手を叩いていた。
「ああ、あんた、どんくさいから辞めさせられたんでしょー?」
「そんな理由じゃねー!俺はおまえよりはどんくさくねーよ!」
陸上部を辞めた理由は、練習中にアキレス腱を痛めてしまい、全速力で走ることができなくなってしまったことだと、彼はほろ苦い青春時代を寂しそうに振り返っていた。
「へー、そんなことあったんだぁ。それはよかったねー」
「ぜんぜん、よくねーよ!」
自分のことばかりでは癪なので、彼はあおいにも、所属していたクラブについて尋ねてみた。すると彼女は、とあるクラブの集合写真を指差しながら答える。
「あたしはねー、写ってないけど占い部にいたんだよ。形だけ所属してたんだ。いわゆる、ゾンビ部員ってヤツだね」
「・・・それを言うなら、ユーレイ部員だろ?ゾンビだと、何だか臭ってきそうだぞ」
彼はあおいの言い間違いを指摘しつつ、”占い部”という意味不明なクラブ活動について首を捻っていた。
”占い部”とはいったいどんなクラブなんだ?と、あおいにさりげなく尋ねてみる彼。
「あのさ、占い部ってどんな活動してたんだよ?」
「その名の通り、いろいろと占うの。こっくりさんとか、睡眠術なんかを使って、人生相談に乗ってあげるんだよ」
オカルトチックなあおいの告白に、彼は思わずブルッと身を震わせてしまった。
クラブ活動を話していたあおいは、ふと、彼の相談にも乗ってあげたことがあることを思い出していた。そのことを問うてみると、彼もおぼろげながら、記憶の片隅にその時のことが残っていたようだ。
「おお、そういえば思い出したよ。確か、俺の憧れの女の子が、俺のことどう想ってるか占ってもらったんだっけ」
あおいに相談に乗ってもらったところ、その女の子のことは諦めた方が身のためだと助言されたという彼。しかし、諦め切れなった彼は、失恋覚悟で、その女の子に告白をしてみたが、ものの見事に撃墜されてしまったとのことだ。
「いやはや、おまえの占い通りでびっくりしたこと、今でも鮮明に覚えているよ」
「えへへ。やっぱり当たったでしょー?」
自分の占いに余程自信があったのだろうか、彼女は不気味なまでに不敵な笑みを浮かべていた。
「あの女の子に、あんたの告白断らないと、絶対に不幸になるって占っておいたからねー」
「てめーの仕業じゃねーかっ!これはもう占い部じゃなくて、呪い部だろぉぉー!!」
彼の私生活のみならず、恋愛まで邪魔をするあおいは、彼にとって、本当の悪魔なのかも知れない。




