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二十二.それはから~いプレゼント

 青空からお日様が顔を覗かせる、ぽかぽか陽気の昼下がり。

 彼とあおいの二人は、テーブル越しに向かい合ったまま、他愛もなく下らない雑談で午後のひと時を過ごしていた。


「そういえばさー」

「何だよ?」


 テーブルの上で頬杖をついているあおい。彼女はおもむろに、テーブルの上で腕を組んでいる彼に尋ねる。


「あんたのお誕生日って、6月9日だよね?」


 ぴたりと正解されたことに、彼は驚きを隠せない様子だ。それはなぜかというと、あおいは毎年、彼の誕生日を1カ月単位で言い間違えているからなのだ。

 忘れん坊のくせによく覚えていたなと、彼は思わず聞き返してしまうのだった。


「バッチリ覚えちゃったよぉ。6月9日をね、”ロクに死ねないヤツ”って覚えてるから」

「あのさ、もう少し、わかりやすい語呂で覚えようとは思わんの??」


 彼の窘めるような指摘を受けて、あおいはそれならば・・・と、もう少しわかりやすい語呂で言い直す。


「”ロック、五十四”でどうかな?」

「九九にすんな!数字が多くなって、余計にこんがらがるだろーが」


 どんな語呂でも覚えやすければそれでいいのと、あおいはあっけらかんと言ってのける。彼もこれについては、気持ちこそ穏やかではないものの、どうでもいいことだと深く追求しなかった。

 6月9日といえば、もう間もなくという季節。あおいはいきなり、手拍子を始めてハッピーバースデーを歌い出すのだった。


「ハッピ、バースデー、ツーユー。ハッピ、バースデー、ツーユー」


 あまり感情はこもっていないが、お祝いの歌を歌ってくれるあおいに、彼は照れくさいながらも悪い気はしなかった。


「・・・ハッピ、バースデー、ディア、近所に住んでるヨッちゃーん」

「って、俺のことじゃねーのかよっ!」


 あおい曰く、近所に住んでるヨっちゃんも、もうすぐ5歳のお誕生日を迎えるそうだ。彼にしてみたら、本当にどうでもいい話であった。

 それは置いておいてと、あおいは突然、彼に向かって身を乗り出してくる。


「ねー、ねー。お誕生日のプレゼント、何が欲しい?」


 あおいのその一言に、またまた彼は驚きを隠せない様子だった。それはなぜかというと、あおいは毎年、彼の誕生日に”おめでたうw”とメールを一通送るだけだったからなのだ。

 彼は訝るような顔つきをしている。このケチンボで世間を騒がすあおいが、そう易々とプレゼントなど渡すことはないだろうと・・・。


「・・・何が目的なんだ?聞いただけだとか、倍返ししてくれだとか、せいぜいそんなところだろ?」


 彼が思いつくままに、あおいの魂胆を見抜こうとすると、彼女は呆けた顔をしたと思いきや、彼の頭を撫でながら、哀れむばかりの声で囁きかけてくる。


「そんなに性格が歪んじゃって。きっと、プレゼントもらったことないんだねー。おー、よしよし。お姉さんの胸で泣いてもいいのよ?」

「そういう慰め方はやめてくれ・・・。それと、無闇に人に胸を貸すな」


 やましいことなどなく、純粋なままに、前向きにプレゼントを考えてあげると言うあおい。彼はちょっぴり嬉しく思い、誕生日プレゼントをもらうならと思案を始める。

 彼の頭の中に浮かんだもの・・・それは、人気沸騰中のアニメDVDや、流行りのテレビゲームソフトばかり。これでは、子供っぽいとあおいにバカにされてしまうと、彼はためらうあまり口をつぐんだままだった。


「そんなに悩むんだったらさー、肩たたき券で手を打っておきなよ」

「遠慮する。それは、おまえのオヤジさんのためにとっておけ」


 あおいがしつこく急かすこともあり、彼は悩みに悩み抜いた末、いわゆる、当たり障りのない返答をしてしまうのだった。


「おまえに任せる。気持ちが入ったものなら何でもいいよ」


 それなら、いつでもOKといった感じで、あおいはニッコリと微笑んで、お誕生日当日は韓国料理のお店に行こうと提案してきた。彼はその意味がわからず、それはなぜ?と間髪入れずに尋ねていた。


「だって、キムチの入った料理でしょ?」

「キムチじゃなくて、キ・モ・チですっ!!」


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