003-エリダナ王立学院②
「じゃなかったら、私たちがここに来る意味がないじゃないですか…。連合体がねぇ」
社は『連合体』という言葉にピクっと反応するも、言葉を発することはできなかった。
「東洋の傀儡師か…、まぁあなたも私たちのコレクションに加えてあげますよ」
黒服の男は、トリガーに指のかかった銃を社へと向けた。
連合体、通称ネクサス。傀儡師でその名を知らぬものはいないだろう。いわゆる傀儡師狩りと呼ばれる犯罪者組織の中でも、圧倒的な力を有している。
そして何より、傀儡師だった社の父親を殺したのが連合体なのだ。
(ヤシロ、仕方ありません。攻撃準備を…)
(おい何言ってるんだ。俺達なんかが敵う相手じゃないことくらいわかるだろ)
「コソコソ話はやめてもらえますか」
その刹那、爆音とともに社が倒れこんだ。
「ほえっ」
状況を理解できずにいる社の元へ、黒服の男が歩み寄ってくる。銃口からは、エリダナ王国と日本の国旗が姿を現していた。
「いやぁ、驚かせてしまいましたかね。私、エリダナ王立学院で講師をしています、フリードリヒ=ソーエと申します。日本から来られた忍野社さんですね、理事長室へご案内いたします」
ソーエは口元を緩め、社に手を差しのべた。
「勘弁してくださいよ。マジで死ぬかと思いましたよ。なぁ紫音、紫音?」
「えっ。あ…はい。」
「どうかしたか?」
「いえ別に…」
紫音は、目の前にそびえたつ建物の一点を見つめながら答えた。
「紫音さんとおっしゃるのですか。なんて美しいんだ。実は日本好きの母の影響で、私も日本という国にはまってしまいまして」
「美しい…なっ何を…ヤシロ、この男やっぱり怪しいのではないですか」
「いや、これは失礼。確か日本人は人見知りする性格でしたね」
ソーエはそう言って、紫音の頭から手を離した。
「それでは向かいましょうか。」