第6話-1 【急募】ここから入れる保険
俺は王子の依頼解決に大きく前進した。しかし、その前進を自分の中で消化できずにいた。アイツにとって俺はちっぽけな存在だ。大いなる存在と小さな存在。その価値観というのは決して理解が出来るものではない。しかし、その根底にあるのは愛だ。それは俺たちと何ら変わりない。けど、それでも……俺はあの人の存在が否定されたみたいで嫌だった。あの人と過ごした時間も少ないし、そもそもあれが初めましてだ。けれど、それ以上に濃い時間であり、あの人が無作為に殺されかけたのが許せなかった。最後に見せた笑顔は、彼女が孤児院の子供たちへの優しさが詰まっているように見えた。この気持ちが何なのかはわからない。たった数時間、1回しか交流がなかった彼女。しかし、それでも彼女がいなくても問題はなかったと聞いた時、俺は怒りに支配された。同情によるものか? いや、違う。これは同情なんかじゃない。これは、親しい人が貶されたときの感情だ
ああ……そうか……俺は彼女を好敵手だと感じている。だからだ。だから、あんな素晴らしい戦いをして、裏切られても最後まで信仰を捨てなかった彼女の存在を軽んじられるのが嫌だったんだ。けれどこの気持ちを晴らす手段はない
「やるせないな……」
「クゥ~ン」
「ハハ、ありがとうな、フェル。って何言ってるかわかんないか」
「バウ!」
そういえば俺はフェルに対して、というか魔物に対しての翻訳をオフにしていた。理由は戦いのときに断末魔がモロで聞こえるから。流石にきつかったからそれ以降ずっとオフにしていた。今はなんとなくフェルの声を聞いてみたかった
「……よし、これで聞こえるはず。フェル、この前はすごく助かった。ありがとう」
俺はそういいながらフェルを撫でる
【いや~、どういたしまして。ご主人!】
案外声が高かった。テンションも高めで陽キャって感じがする
「声を聞くのは初めてだね。所でフェルって他のヴェローと違うけど実際のところどうなの?」
【だって私ヴェローじゃないしー】
「え、そうなの?」
【うん、サラ……いやカグラだっけ? カグラがそう言ってたのかわからないけど私はヴェローじゃないよ。ここで問題です。私は何者でしょうか?】
!? カグラのことを知っている? なぜだ? 俺とカグラの会話を聞いていた? そんなことが出来るなら普通の召喚獣じゃない。俺はともかくカグラという大妖精の精神世界に入り込んでいる時点で絞られる。フェルはカグラのことをサラマンダーという前の名前で言った。つまりカグラの前の名前を知っている。そしてカグラを知っているような口ぶり。つまりは……
「カグラと同類?」
【ピンポーン! 正解! 私は神により創造された闇の大妖精! その名をフェンリル!】
フェンリルねえ……ルシフェルと言い前の世界では神に対して逆らった名前なんですけど、この世界では少なくともまだ神に反逆していないのは単に名前が同じだけ? けど、ルシフェルも現在進行形で神しか干渉できないギフトに干渉してるし、フェンリルもなんか神に対して一線を越えているんだろうか
【あれ~? どうした~? ここは、『フェ、フェンリル!? 俺は大妖精に愛されているのかぁー!?』っていう反応があると思っていたんだけど】
「いや、確かに大妖精とよく接点はあるけど、これまでの大妖精ってなんか名乗った時にすごいオーラみたいなのがあったけどそんなのがないなぁ~って」
【あ~……まあこんな小さいしね。本来はもっとオオカミの姿なら大きいんだけど小っちゃくなったんだよ。……ねえ、私と契約しない? 契約獣としてじゃなく大妖精として。そうしたら戻るかもしれない】
「……俺はもう大妖精1人と契約しているんだけどそれは大丈夫なの?」
【やってみて出来なかったらしょうがないって感じでやればいいんじゃない? もう召喚獣としては契約しているんだし】
「カグラと契約が切れるくらいならお前を切るからな」
【ヒュー、愛されてんねー】
「で、契約ってどうするの?」
【え、わかんない。私契約したことがないし】
「俺もカグラにやってもらったからわからんよ」
気まずい沈黙が場を支配した。カグラ! ヘルプ! 助けて! 君しかいないんだ!
【あのさぁ……】
【あ、カグラおねえちゃん!】
「妹なの?」
【違うよ。僕たちに性別はない。両方になれる。僕は……まあ、うん。】
【うわ、ガチ照れじゃん。流石に年の差すぎるでしょ……年齢を考えろよ】
【次、何か言ったら燃やすから。あと、カグラっていうな燃やすよ】
【酷い!】
なんか姉妹(?)同士の喧嘩を見てるみたいで、カグラの新たな一面を知れた。やいのやいの言いながらもフェルに契約の仕方を教えてるのを見て世話焼きなお姉ちゃんだなあって思う。もし、カグラが姉だったら俺の性癖がねじ曲がってたかもしれない。絶対そうだ。なんならマリーとカグラのせいでハードルが高くなってる。次転生したら絶対まともな恋愛が出来なんだろうなあと思うくらい癖が曲がっている。なんなら現在進行形で曲がっている気がする
【ええ、では契約の儀を執り行います】
【まるで私と君の結婚式だね!】
【コロスゾ】
【ごめんって】
【じゃあ、教えたとおりに】
【貴方は私と契約しますか? はいかハイで答えてね!】
「それ、選択しないと思うんですよ……はい、契約します」
そういうとフェルと繋がった気がする。これが魂のつながりってやつか? あと何となく魔力量が上がった気がする。妖精と契約したらそうなるのか?
【?? あれ? なんか違うぞ】
フェルやカグラが違和感を覚えた所で空から1枚の紙が降ってきた
[ 親愛なる我が子フェンリルへ
あなたがずっとニートのままなので、荒業を使いました
今のあなたはペットです
けれど安心してください。魔法は使えるので活躍できます
あなたの活躍を心から期待しています
P.S.
ミリバーブくん、大切な子供たちが2人お世話になるので維持のための魔力軽減と魔力量増大、魔力の回復スピードを上げておきます
トリテイア]
【え、私ペット? 首輪付けられてるの?】
【wwwwwwww】
呆然とするフェル、笑い転げるカグラ、手紙を読んで理解を拒む俺。いや、もしかしたら翻訳のバグなのかもしれないと切ったら意味の解らない文字列だった。神が使う文字ってこんなのなのかぁ……学会に発表したら下手したら俺殺されるんじゃねえかなと思いつつ翻訳をオンにしてもう一度読むが内容は変わらない。けど、こんな丁寧な手紙を寄越すということは、トリテイア様はあの邪神じゃないことがわかる
【……一旦仕切り直ししない?】
【これ、お母様が決めた契約だから私らじゃ到底切れないよw】
【お母様!!!】
「てか、これどういうことなの?」
【僕と君は契約して、その立場は同等、君とフェンリルが契約獣だった時の関係も同等。前者は戦友、後者はビジネスパートナーだね。けれど今の君とフェンリルの関係は飼い主とペット。君が上でフェンリルが下。フェンリルは逆らえない。まあ、フェンリルはニート歴が長かったからお母様がなにかしたんじゃない? 君って、僕ら以外にも神にも愛されてるよね】
これって下手したら俺殺されるよね? 教会に殺されるよね? トリテイア様? 貴女様が行った行動はだめかもしれません。多分、恐らく善意だと思うのですが、その結果俺の命が狙われる可能性が高くなりました。ここから入れる保険ってありますか?
こんにちは、月照です。誤字脱字、誤記等ある場合は報告してくださると幸いです
皆さん年末年始どう過ごされていますか?僕はバイトに執筆です。
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