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貴族の子息ははかりかねる  作者: 月照建速
第2章 学園編

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第5話-3 強き聖女

「ほう……どうやらお前は死にたがりらしいな」

「死にたがり? 違うな、誇り高き貴族と言ってもらおうか」


 とはいっても勝てる可能性は万に一つくらいか……。まあ俺だけなら0だから勝ったも同然だな!


「なら墓石に蛮勇貴族とでも書いてやるよ……!」


 速い! ドルティナやカグラの少し本気を出した特訓をしていなかったら普通に死んでた。けど、防戦一方なんだよなあ……なら攻めに転じる? 相手の手札は分かっていないのに?頼れるのはインロンとカグラ、後俺の経験か……。最後が一番頼りないけど仕方ねえ……


「ほらほら! どうした! 口だけは達者なお貴族様!」


 チッ、めんどくさいな……。聖職者らしく光属性の魔法で攻めてきやがる。光属性での攻撃の特徴はその速さだ。今はなんとか捌けているが……ジリ貧……カグラ、ドルティナに放った魔法は使える?


【難しいね、アレは開けた地形且つ領域内だったから打てた。けど今回は閉じられた空間で強度も凡そあの魔法に耐えられるものじゃない。下手したら崩壊に巻き込まれるよ】


 最大の切り札が封じられたか……


【……フェルを囮に使えば勝てるよ】


 は? ……OK、乗った


召喚(サモン)!」

「ほう、召喚魔法……ッ!」


 召喚に応じたフェルは召喚と同時にシュガートの基に向かった。シュガートは迎撃をするがそれを器用にかわす。まるで人に操作されてるラジコンみたいだなと思い、俺は身体強化を掛け、インロンに『原初の龍(サラマンダー)』を付与し、背後から攻める……!


 ガキンッ!


「殺気が漏れてるぜ? 人間同士の殺し合いは初めてかい?」

「あたりめぇだろ……!」

「おっと、火の付与魔法か。なら火には水だな」


 俺の渾身の一撃を防ぎ、追撃をしようとするとシュガートは水の盾を作り、防いだ。嘘だろ……? 契約魔法、しかもインロンの効果で効果が上がってんだぞ!? 化け物かよ……


「6年間もこの最奥で彷徨ってたんだ……お陰でここら辺の魔物を狩りつくしまったよ」


 化け物が……! ……いや、まだ可能性はある。シュガートはいま魂が欠けている。つまり、不安定な状態にあるってことだ。それも6年間も不安定ならそろそろその不安定さが原因で身体がぶっ壊れてもおかしくない……てかぶっ壊れてくれないと困る!


「おい、俺の自滅狙いなんてセコイ真似しねえよなぁ? 6年も壊れてないんだ、今更壊れるわけないでしょ?」

「人間健康でも急に壊れるだろ? お前も壊れても不思議じゃねえよ!」


 そう言い、俺はカグラの魔法だけを使った。相手は水属性の魔法ばかり使うが、そのお陰でわかってきた。俺の使う『原初の龍(サラマンダー)』をコイツは完全に防げない。更にこいつは俺とフェルの両方に気をつけなければいけない。このままいけば魔力切れを起こすのは相手が先だ……!


「ん~? あっ! もしかして魔力切れ狙ってんの? いい狙いだけどざんね~ん、それはできないよ?」

「エリクサーでも飲むつもりか? 飲ませるとでも?」

「ハハハ! エリクサー? 違うよ? 私が食べるのはこれ!」


 そう言って胸から取り出したのは……魔石だった。確かに魔石は魔力の塊だが、それを摂取しても普通の人間は魔力を回復できない! 魔石を食べ、魔力が回復する事例があるのは……魔物だけだ


「お、お前……魔物に……人を辞める気か?!」

「僕を捨てた人間に意味なんてないでしょ? そ・れ・に~

 もうずっと食べてるから今更引き返せるか!」


 こいつ……ッ! 最奥という特濃の魔素によって造られた魔石のせいで、攻撃力やスピードが段違いだ……! これまでのは魔石の効果が切れてたってわけか……! 増々コイツを地上に上がらせてはだめだ。もう魔石を食べることによる副作用で正気じゃない! 今のシュガートだけじゃなく教会や街を関係なく襲う厄災になる……! ここで俺が殺さなきゃ……力を持つ俺が! 弔う!


 あ゛あ゛! 速過ぎんだろ……隙がねえ! フェルも今は避けることが出来ているが、それもいつまで続くかわからない……クッソ、なんであそこであんなこと言っちゃったかな!? あんなこと言わず後ろから刺すとかでも良かったのに! 正々堂々としたいっていう騎士道精神? そんな崇高なものじゃない。ただ根底にある俺本来の臆病な性格のものだ。裏切って何か言われるのが怖かった。卑怯者という眼で見られることを恐れている。アイツらはそんな眼はしないと理解はしているが、それでも……! その可能性を考えてしまう……! 俺は弱い。俺はそれを認めたくなかった。俺はずっと心の中で普通の人間とは違うと思いたかった。特別な存在でありたかった。だが、認めるしかない。俺は漫画や小説の主人公じゃない。ただの人間だ。弱さもあって、強さもある。それを最大限生かして、今を生き延びる


「おヤ、諦めたカ? 今なら靴を舐めたら許してやる」

「お前の靴舐めるくらいなら死体とキスしたほうがマシだね。お前からは魂が腐り落ちるにおいがするぜ」

「ハハ……コロス」


 危なッ! けど核心に近づいた。こいつの威力やスピードは高くなってきている。しかし、それと同時に思考が単純なものになってる。魔石の食い過ぎで思考が魔物寄りになってる? 相手のドーピングが切れるまで我慢比べといこう。我慢比べは得意だ。なんせカグラやドルティナに散々鍛えられたからな!


「どうした? 速過ぎてあらぬ方向に攻撃が行ってるぜ?」

「コロ……ス……!」


 ピークは越えた。徐々にスピードが落ちてきている


【避けて!】


 ッ! 危なかった……あいつの新しい魔法? いや違う。ならこの場であの魔法を放てるのはフェルか! つまりこれまでは俺を認めてなかったってわけか。……まあそこまで何もしてなかったし、フェルと一緒って言っても遊んでいただけだったし仕方ない。だが、これは僥倖! 手数が増える

 フェルという新たな手数が増え、戦況は俺たちが優勢に移っていく。ここが勝機だ。俺はそう思い博打を仕掛けた


「何度……ヤッテモ……同ジ」


 俺は『原初の龍(サラマンダー)』で相手を叩き切ろうとした。相手はそれを水の盾で防ぐ。ここまでは想定通り。だから、持ってくれよ……俺の身体!


原初の龍(サラマンダー)! 原初の龍(サラマンダー)! 原初の龍(サラマンダー)!」


 俺は貯蓄していた魔力を使い果たす勢いで『原初の龍(サラマンダー)』を使った。そしてその炎は水を蒸発させ、盾を叩き斬った。腕はその威力に耐え切れずボロボロになりながらも、インロンを身体に刺すことが出来たが、握力が持たず放してしまった


「バウ! バウ!」


 一瞬の盾が無くなった隙にフェルが魔法を叩き込む。無防備な身体に直撃し、勝ったと思った。しかし、その瞬間フェルが吹き飛ばされた


「流石に今のは効いたね~」

「フゥー……今までのは演技か」

「まあね~、だって6年間もいて、その間魔石をずっと食べてたんだよ? 中毒症状も克服したよ。……さて、終わりだ。君の武器は私の左肩に刺さってる。これで終わりにしてあげるよ」

「ああ、そうだな。終わりだ……蒼き龍(リヴァイアサン)

「!?」


 インロンは魔法を覚え、インロンに蓄えた魔力を使用することで魔法を発動できる。俺は万が一のために覚えさせた魔法を一切使わなかった。刺さらなかったら確実に負けた。発動した『蒼き龍(リヴァイアサン)』は斬撃系の魔法で、その効果は魔力が最も濃い場所の切断だ。人間も魔物も多少の違いはあれど心臓の付近が一番魔力が濃い。発動した『蒼き龍(リヴァイアサン)』はシュガートの心臓諸共身体を切断した

 俺は何とか落ちたインロンを回収して『癒しの水(ネイエイス)』を使用し、腕を治療した


「あ……あ……」


 は? コイツ……まだ動けるのか……? 身体も真っ二つにされているのに……。!? まずい! 魔石付近に集まっている! このままじゃあ魔物になって第2ラウンドが始まる


「ッ……ここで、足が攣るかッ!? 癒しの水(ネイエイス)! 癒しの水(ネイエイス)!」


 だが、無意味だ。回復魔法には2種類ある。体力を回復させるものと怪我を治すもの。『癒しの水(ネイエイス)』は後者だ。だからいくら『癒しの水(ネイエイス)』を使っても筋肉の疲れは取れない。そうしている間に魔物が形成されてしまった


「まじかぁ……ああ……ごめん、みんな。俺死ぬわ」


 緊張の糸が切れた。もう満足に身体を動かせない。せめて一思いにやってくれたらいいなぁ……。痛いのは嫌だし。俺が諦めていると


「バ、バウ!」プルプル


 ボロボロになったフェルが俺の前に立ちふさがった。ああ……なんて優しいんだ。ごめんな、フェル。こんなにボロボロになって、それでも俺を助けようとしてくれる。……召喚獣がこんなにも、身体張ってるのに、契約者である俺が立ち上がらなくていいのか? いや、立ち上がらなきゃダメだ。しかも、召喚獣は最後まで諦めず立っていたのに契約者が立てないまま終わるのは……


「かっこ……悪いもんなぁ……! さあ、掛かって来いよ、化け物……第2ラウンドの始まりといこうや……!」

「ア……ア……」


 ? 急に止まった?


「ア、アア……ワタシマケタ。ダカラ……ありがとう。終わらせてくれて」


 そういうと胸にあった魔石を自ら引きずり出し、破壊した


「せめて祈って、私が天国に行けるよう」

「ええ……祈ります。貴女のお墓も作ります」

「ありがとう……最後に貴方と戦えてよかった。最後に私を元に戻してくれて……ありがとう!」


 そう言った彼女の笑顔は素敵だった

 魔石が破壊され全てが灰になっていく中で祝福教のシンボルである光輪をつけた羊の首飾りが残った。俺はそれを大事にしまい気を失った


 幾ばくかの時間が経ち、目が覚めるとそこは俺とフェル、そしてシュガートの血で染まっていた。俺はフェルの召喚を解除したのちに行く当てもなく、しかし何かに導かれるように奥に進んでいった。進んでいった先には扉があり、おもむろに開くと魔法陣が起動し、気が付けば入口にいた。入口では今まさにマリーやスヴォーフ、リシュリーノが突入せんばかりの勢いで必死に止められていた。俺が帰ってきたことが分かるや否や3人は飛び掛かり、泣かれた。その後、エリクサーや回復魔法を施され、念のため近くの療養所に入院することになった。検査の結果異常も見つからず、退院した後、事情聴取を受けたが彼女のことは言わず、ただ最奥で強敵と戦ったことだけを言った。教師たちはなにか引っかかっていたがそれ以上は何も言わず解散した

 行事だった巣窟(ダンジョン)遠足は中止となり、学園も対応に追われ、2週間ほど休校となった。俺はその間に説明兼約束を守りに実家へ帰った。事情が説明されていたみたいで心配された。両親やアイリスさんに抱きしめられた。3人は泣いていた。ああ……愛されているんだ。そう実感した

 その後俺はこっそり以前ドルティナとあった場所にお邪魔した。死者を弔うにはここが1番いいと思ったからだ。帰る前に事情を精神世界で説明していたので通された。インロンのお陰ですぐ行けるので助かった。俺は穴を掘り、その中に彼女の遺品を入れ、墓石を刻み、手を合わせて帰った

 墓標にはこう記した


[強き聖女にして我が好敵手シュガート、ここに眠る]


 また、背負うものが増えた。そして、踏み出す。真実を知るために

こんにちは、月照です。誤字脱字、誤記等ある場合は報告してくださると幸いです

第5話は初めて分割投稿をしてみました。この場合タイトルを変えた方がいいのか、同じのがいいのか……わからないのでこっちがいいとコメントに書いてください。参考にさせてもらいます

そしてこの作品のコメント・評価も是非ともお願いします

今年はありがとうございました。来年もまたよろしくお願いします

皆さん良いお年を

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