プロローグ
俺たちは入学式の2日前に学園に到着した。そこから荷物の搬入や足りないものを買っていたらすぐに入学式当日になった。個室なのでルームメイトもいない。俺がいる寮はドラゴンをエンブレムに掲げたドラコ寮だ。特別入試で入学した生徒は選択した科目によって寮が振り分けられ、一般組は結果によって寮に振り分けられる。そして男子は3,4階、女子は1,2階に住むと決められている。俺がいる魔法選択のドラコ寮、地理や数学と言った一般教養分野を受験した生徒が入るティグリス寮、魔法を使用しない戦闘の分野を受験したルプス寮だ。因みに寮内でも派閥争いがあるようで、ドラコ寮では理論派と実践派、ティグリス寮では文系と理系、ルプス寮では近接、遠距離武器と言った派閥があるらしい。関わりたくないけど恐らく派閥が互助会的な役割を持っていると考えると入らざるおえないと思う。そして他の寮に入るには許可がその都度必要なので、俺たちがみんなドラコ寮なのは幸運だった。まあ俺の従者であるから同じ寮に入れられたと考えるのが自然か。そして、新入生をざっと見た感じでは、ドラコ寮は女子が多く、ティグリス寮は半々、ルプス寮は男子が多い。全体的な男女比は3:7くらいか。魔力は女子の方が多いという研究もあるし、男子なら寄宿学校という選択肢もあるから女子が多くなるのは納得がいく。そんなことを考えて退屈な入学式の暇をつぶしている間に入学式も佳境に入ってきた
「最後に、学園長からの挨拶です」
「初めまして、皆さん。私がこの学園の長であるネーデルハイト=フェン・ドロップです。まず皆さんに言いたいのは、ここは学び舎であり、そこに貴族や平民は関係ありません。皆さんの身分に関わらず、平等な学生として我々は扱います。なので皆さんも一度身分という垣根を越えて交流してみてはいかがでしょうか。思わぬ経験や知見を得られるかもしれません。では挨拶を終わらせていただきます」
ぶっこんだなあ!学園長。確かにパンフレットにも平等な指導を目指し、身分の垣根を越えてという文言が書かれていたが、身分制の社会にそんなこといっていいのか?来賓の国王や枢機卿の眼が笑ってない!だが、その意見には賛成だ。天才というのは身分の差は関係なく存在する。身分でいちいち気にしてたら有能な人材を取り逃す。後貴族の言葉遣いがめんどくさい。だから言わんとしていることはわかるが、身分社会を壊さんとする、革命的思想をそんな大っぴらに言って大丈夫?下手したら弾劾裁判で免職された後殺されても文句は言えねえぞ?……けどこのスタンスで10年以上その地位を確保しているのだから何かあるんだろうなあ。他の人間はどんな反応をしているか見てみると大半の人間は面喰った表情をしているか怒っている表情をしている。面喰っているのは平民が多く、怒りの表情をしているのは貴族のなかでも崖っぷちではその一歩手前の家系の人間たちだ。調度品でわかる。貴族というのは上に行けば行くほど余裕が出てくる。逆に下の方の貴族、特に騎士階級なんかは市民出身のものもいるためそこまで抵抗はないのだろう。一番抵抗があるのは男爵あたりか。王族に関してはどういう表情かわからん。宗教系もまちまちか。まあそうか、貴族出身のやつもいれば平民出身のやつもいるし。一方面喰っている方もまちまちだな。そりゃあブルジョワのやつとマジの一般家庭出身のやつを一緒にされたらいやだろうなあ。俺たちからしたらあまり変わらないが
そのようなことがあっても波乱なく進み、教室に移る。教室では全寮が混合したクラスで、基本的に新しい新入生が入る4回生まではクラス替えがない。俺はリシュリーノとスヴォーフと同じA組でマリーはD組だったので、マリーとは離れた。悲しい。最低でもあと3年は同じクラスで受けるということはなくなった。後の目ぼしい人は、クラウスさまはマリーと同じクラスで、この国の第5王子と教会区の推薦枠、後は平民と貴族がごちゃ混ぜになった感じだ。男女比は女子の方が多い。チラッと見た限り火種になりそうなやつはいなかったからいいかな。そう考えているとおもむろに王子が教卓に立った
「皆さん!初めましてこの国の第5王子のクライス=フォン・ヴォルクーネです!これから3年間よろしくお願いします!学園長が言っていた通り、ここにいる私たちは貴族であるとか市民である前に1人の学生です。だから私のことも気軽にクライスと呼んでください!」
呼べるか!一国の王子に対してそんな気軽に呼べるか!せめてさん付けだよ……
「わかったぜ、クライス!」
?????見た所貴族階級ではなさそう。だけど普通王子に対してそんな気軽に呼べるか?こいつ。いや、もしかしたら留学で来た別の国の王子や昔からの付き合いなのかも……いや明らかに初対面っぽい。別に貴族とか関係なく王族に対して呼び捨てとか不敬すぎんだよなあ……ほら、お付きの貴族が信じられない眼をしてる。王子も心なしか引いて……ないですね、本当に呼び捨てにされてうれしそう。器広過ぎるだろ……
「俺はボローネ。居酒屋の息子だから料理は得意。苦手なことは魔法。これからよろしく!」
こいつ貴族より貴族してない?いやまあ俺的にはそっちの方がいいけど、王子が学園長みたいなこと言ったから必然的に俺が貴族寄りになる必要があるのでは?しかも俺の前のやつだし、流れ的に俺じゃん
「……皆さま、お初にお目にかかります。ミリバーブ=アーベル・ニナーナルと申します。気軽にニナーナルと呼んでください」
「わかったぜ!ミリバーブ!」
「話聞いていました?」
こいつ……。わぁ……リシュリーノがすごい目で見てるよお……リシュリーノ、スヴォーフは頼んだ。スヴォーフはまじで王子のこと呼び捨てにしかねないしタメ口ききそうだから、本当に頼んだぞ!
その後は特に滞りなく進んだ。ボローネはマジで貴族に対してもタメ口だし、王子に積極的に話しかけていってた。こいつのことをバカだと思っていたが案外大物かもしれない。こいつのお陰で緊張も多少和らいだ。貴族、平民関係なく話しかけるからな。しかも悪気が一切感じられないから貴族も貴族でなんも言えてない。当たり前だ。仮に身分違いを言おうものなら王子の言ったことを全否定するし、学園の理念にも反する。せめて集まりで愚痴るくらいか。あと、数少ない男子を敵に回したくないという本音もあるんだろう
「私が最後ですね。私はショガート・タペインと申します。教会からの推薦で来ました。より見識を広め良き聖職者になれるように頑張りたいと思います。そして皆さまとも仲良くなりたいです。これからよろしくお願いします」
ショガートねえ……どっかで聞いたことあるんだよなあ……なんだったっけ?教会関連で……
【ショガートは歴代の聖女候補が名乗る仮名だね。とはいっても聖女になるためのギフトを持っているだけで本人の資質も関わってくるから確定ってわけじゃないけど。ショガートは回復系だったはずだよ】
なるほど聖女候補……圧倒的厄ネタ感……!こういうのは全部ボローネに任せればいいだろ
【ねえ知ってる?聖女と妖精と契約した者って結構つながりを持つことが多いんだよねえ。特に回復系のギフト持っているのって。なにせ、そのギフトは魔力を渡せるし、回復もできるから相性がいいんだよねえ】
……悩ましいな。と考えていると扉があき教師が入ってきた
「皆さん、初めまして。今日から3年間このクラスを受け持つマサーノ・フォルクと申します。担当教科は魔法薬学です。ぜひ取ってください。知っての通り、この学校は取りたい科目を自由に選択できます。基本的に最初の3年間は基本自由に選べますが、残りの4年間は選んだ学科によって取らなければならない必修の授業が出てくるので今のうちに自由に選んでください。そして週2回このクラス全員が集まる必修の授業がありますのでそこにかぶっている授業は受けられませんのであしからず。ですが学年が替わると必修の授業の日程も変わるので絶対に取れないということはないです。授業は明日からになりますが明日から1週間は体験授業となります。体験授業を経て取る授業を決定してください。授業日程は今から配る冊子に書かれてあります。その冊子と共に授業選択をするうえで大切なものを渡すので無くさないようにしてください」
そう言い授業日程などが書かれた冊子と板のようなものが配られた
「この板に魔力を注ぎ込んでください。……そそぎこみましたね?この板で曜日の時間を選択すると、その時間に選択できる授業が表示され、それに触れるとその授業を取ったことになります。各授業の詳細は冊子に書いてありますし、体験授業の際は途中入室や退室は可能なのでぜひ、見て確認してください。この板は魔力量や強さと言ったものを可視化する効果もあります。その数値を見て選択するのも1つの手です。自身の長所を伸ばしても、短所を伸ばす、様々な選択を取れるようにするためのものです。ぜひ活用してください」
スマホかな?にしてもステータスカードか。家で貰ったのは身分証明書的なステータスカードで、これはなんというかゲーム的なものだな。そういえば家の方のは自動更新だからあまり見ていなかったな。今の俺のステータスはどのような感じなのだろうか
ステータス
名前:ミリバーブ=アーベル・ニナーナル
年齢:12
魔力:あり
レベル42
消耗度(体力):0%
消耗度(魔力):32%
魔力量:AA
魔力質:S
筋力:A
俊敏性:B
精神:B
【ギフト】
【完全翻訳者】Ⅱ
【魔闘】Ⅲ(不可視)
【スキル】
【大妖精の寵愛(火)】:契約魔法の威力増加、身体能力向上
【龍に勝った者】:龍種に対するダメージ増加。龍種に勝った時の武器を使用した際の能力向上
【妖精を墜とす者(水)】:妖精に対するダメージ増加。妖精が与えた武器を携帯している時能力が向上する
冊子を見ながら俺のステータスを確認した。まず基礎能力は魔力と体力の消耗度、魔力量・質、筋力、俊敏性、精神があり、S~Gまである。俺は全体的に高いな。すでに魔力が消耗しているのはカグラによるものだろう。ギフトはそのまま。スキルは戦闘や特訓で生えてくるらしい。スキル同士が合体する場合やすでにあるスキルに取り込まれ、進化することがある。俺のスキルが少ないのはそういう理由なのか?そしてその画面をスライドすると
名前:ミリバーブ=アーベル・ニナーナル
筆記:62点(基礎:20点,展開:40点,構築2点)
測定:100点
実践100点
合計262点(全体3位)
お、試験結果はいいじゃん。全体3位だし。構築の2点は術式だけを描いた部分点だろう。構築に関しては勉強しないとテストで赤点を取る可能性もあり、基礎でも取るかあと、構築関係の授業のページを確認した。授業のページをペラペラめくっているとある文言があった。『定期試験は一般教養の5教科と魔法・戦闘の筆記・実践、戦争史の中から2つ選ん7教科で行われます』一般教養は必須なのか。ならその基礎は取っておくか
そこから俺が取るのは魔法実践の発展、一般教養の基礎、戦闘技術の発展、魔法理論の基礎は確定としてあとで決めるか。マリーと一緒のやつ取りたいし合流してから決めるか
「皆さん一通り操作をしましたね?では今日のところは解散です」
どうすっかなあ。……マリーたちと一緒に学園内の施設とかを見るかと思っているとマリーの従者から連絡がきた。まだ掛かりそうだから待っていてとのことだった。ならここで時間をつぶしておくか
「やあ、今時間いいかい?」
「クライスさま……」
「クライスでいいよ。ここでは王侯貴族や平民関係ないんだから」
「貴方様が良くても私共からすれば本当に胃が痛くなるので呼び捨てなんてできないです……」
「そうかい?遠慮せず言ってくれよ?王子命令だぞ?」
「ここは平等なのでそれに従う必要はないですね」
「なら呼び捨てでもいいじゃないか!」
「……クライス。これでいいか?」
「!ああ!じゃあ本題に移ろうか。……今日の夜僕の部屋に来てくれ」
「……内緒で?」
「ああ。頼む」
……なんか裏があんのか?まあ行けばわかるだろ。王子と話していて気が付かなかったがなにかすごく見られている気がする。方向的にスヴォーフの方向だ。後で聞くか
その後マリーの従者が来たので一緒に売店や食堂を見て回り、部屋に戻った。その際中スヴォーフに王子と話した後のことを聞いてみた。すると
「ああ、えっと教会の子と一部の子が向けてたかな。教会の子は興味、他は動向を探っていたって感じ。教会の子と会ったことあるの?」
「ない。あったらお前経由で話しかける」
「それもそっか」
恐らく妖精関係か?生憎俺は教会関係と接点を持っていない。それは教会も同じだ。というよりも実家自体があまり教会と関わっていない。それのパイプ作りか?
夜になったので王子の部屋に向かう。王子はティグリス寮だったので忍び込んだ。3度ノックをして名前を言うとドアが開けられた。中に入ると俺の部屋と変わらない内装だった
「やあ、よく来てくれたね。楽にしてくれ。ここには人の目がない、砕けた喋り方でいいよ」
「ではお言葉に甘えて。で、私に何の御用で?」
「簡単なことさ。聖女候補のシュガート・タペインのことだよ」
「あああの」
「君の方を見ていたけど関係があるのかい?」
「知らない。てかなんでそんなこと聞いてくるんだ?惚れたか?」
「ハハ、そんなわけないじゃないか。私の好みは黒髪清楚でも私と2人になると独占欲を剥きだして清楚を投げ捨ててくれる女性なんだ」
「へぇ、現実にいるといいな」
「ふ、そのために寄宿学校という男苦しい学校よりも女子の比率が男子より多いここを選んだのさ!」
「俗物だな。てか婚約者は?王子ならいるだろ」
「それがいないんだよ。候補はいたよ。それがシュガートさ」
「つまり、アイツは結構高位の貴族か?」
「クルーノ大司教の娘。その裏は現教皇の娘さ」
「これはまた。厄ネタだな」
「しかも、今現在大司教の養子として育てられている。なのに、教会からの推薦なんだ」
教会からの推薦。大司教の娘がそれを使うのはおかしくないように思える。しかし教会からの推薦の条件は平民だ。シュガートが大司教の養子であるならその要件は満たせない
「他人の空似という可能性は?」
「ない。僕のギフトを使って見たけど彼女、文章ギフトが2つあるんだ。そのうちの1つが」
「候補だった奴と同じか。文章ギフトだけは同じ名前のギフトは存在しない。つまり本物か」
「で、俺はその調査をすればいいのか?」
「ああ、君に適任だと思ってね。同類だろ?」
こいつ……他人のギフトを見ることが出来るギフトは厄介だな
「別に君のギフトが何個あろうが私には関係ない。だって君たちは王国と封建関係があって、利益が出ていればついてきてくれる。けれど彼女、教会はだめだ。利益が出ていても忠誠を誓うのは総本山、ひいては神だ。だから何とかしてギフトが2つある絡繰りを調べてくれ」
「わかりました。その分報酬は期待しても?」
「前払いで王家に伝わる神についての写本。残りは調査が終わったらだ。期間はこの学園を卒業するまで」
「ええ、かしこまりました。貴方との良き関係を願っていますよ」
「私もだ」
ギフトが2つねえ。俺もそうだ。考えられる可能性は俺と同じ転生者。後は教会が他人のギフトを移植できる術を持っていることだ。仮にそうなら欠点を克服できる超人を作り出せて、その出来事を「奇跡」として民衆にアピールが出来る。そうなれば熱狂した民衆を使い俺たちにも圧力をかけることが出来る。今現在世俗権が教権を上回っている。それを逆転する武器としてギフトの移植か。ではなぜ教会の推薦という枠を使った?大司教の養子なら聖職者枠でいいはずだ。ではなぜ平民の枠を?王子の話を信じるなら姿形は同じはず。だから聖女のギフトを持った子供にシュガートのギフトを移植したのではなく、聖女のギフトをシュガートに移植したはずだ。ああ、わからん。地道に調べていくしかないな。にしても、
「どの顔の王子が本当の王子なんだろうな」
そう呟き俺はベッドに潜った。俺の学園生活は波乱万丈になりそうだ
こんにちは、月照です。誤字脱字、誤記等ある場合は報告してくださると幸いです
今回から第2章学園編です!ここから冒険や仲間が増えていくと思います。頑張ります
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