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治癒家  作者: 無夜
7/8

神(父)

 娘曰く、しばらくの間は蕎麦の実は確保できる、とのことで。

 蕎麦の産地どうする気だ。

「偽装、というか。地球外品なんて、書いてもね。千葉県産でいいでしょ」

 娘と婿が高校一年の、冬になった。

 夏と冬に、二人と友人達が一日近く消えて、蕎麦の実を持ってきた。

 二度目になる。

 再度、22トン。

 蕎麦粉屋に毎週持ち込んで、減ったのは9トン。半分にもならない。

「で、これを置く場所、は今回はいいが、今後、売るより多く手にはいると、溢れるぞ。販売先を増やすかしないと」

「今回、神様と交渉して、固定空間収納倉庫作ってもらうことにしたの。時間停止するから、ありがたいわね。いずれ、蕎麦の実採れなくなるし。あ、私たち4人、全員死んだら、この奇跡は解除されるから、気を付けてね。どのみち、私が子供産むまでしか、濡れ手で粟な蕎麦の収穫できないわ」

 蔵の横に、少し大きな社がいきなり現れた。

 それは、いい。よくないけど、それは諦める。我が家ではよくある話だ。腕輪の収納から、唐突に長剣出したりするからな、婿が。

 社は、まあ大きいと言っても、ひとの背丈よりは高さがあるが、横は・・・。

 ああ、大きなドア?ぐらいの、社だった。

 奥行きは70㎝ぐらい。倒れそうだな、と不安になる薄さ。

 それより気になるのは、社の横に、湯気のような歪みがあることだ。

「思ってたよりずっと広い。体育館ぐらいかと思ったら、東京ドームぐらいありそう。ありがとうございます、神様」

 と、湯気に向かって、娘が頭を下げた。


 神

 が、いるのか?



 ああ、ならば聞きたい。


 あなたは本当に、良き存在であるのか?

 娘達はあなたと関わったことで、不幸にならないのか。


 と。


 なのに、

 声が   

 出なかった




 子を持つと、神の声が聞こえなくなるそうだ。神に声を届けることもできなくなるそうだ。

 娘の友達が憶測だけれども、と付け加えて言った。

「社会的な話ではなくて、遺伝子レベルの話で、未来を編む『権利』とか『特権』みたいなのが、子に委譲されてしまって、神と対話できるパイプが消失するのかも。たぶん、神自体が選択したのかも? 何か大規模な異変が起きたときに、救う相手を、『子』に設定するために、その声以外を消去してしまった? かつて、古い時代なら、それでよかったのかも。神へと声が通る大人は、古い巫女や魔女たちだけ」




 妻が車の運転が出来るようになり、ワゴンも購入した。

 肩の荷が一気に下りた、気がした。

 一台しかない車。

 バスの路線すら通らない集落。

 免許持ちは我が家では俺だけ。


 俺に何かあったら。


 その不安が軽減した。

 そのうち、娘達二人も免許を取り、俺は居ても居なくてもいい存在になっていくんだろう。

 そんな風に思っていた矢先に。


 妻が妊娠した。

 うれしさや不安よりまず、俺は願った。



 ああ

 この子は

 神に見いだされませんように


 それは人の子にはすぎたる恩恵です






私「治癒パパが神に対してすごく不安がってる」

無夜「なにせ、『神』が善かと言ったら、まず地球人類に対しては『善』とはいいきれない。別の作品で、核が開発されて、100年以内に大半の文明は滅亡して、150年目の生存率は1割以下とか早百合さんが言っておられた」

私「別作品の王様ね」

無夜「あながち間違ってないと思われる。いつ核戦争になるのか、わかんないからね。明日かもしれないし。で、神は、このいつ滅ぶかわかんない状態の人類(あと55年以内の全滅率90パーセント超)よりは、別のデコイ惑星の復活を優先のために、治癒たちの魔法を許しているから。そうでなきゃ、僕球の木蓮超えの能力者を帰還させない。もっと能力絞らせている。親世代の声が届かないのは、いざ滅びるときは、子供だけ拾い上げて新デコイの星に移住させるんだろう。原人の登場待つより早いし。核開発以前、というか石器時代ぐらいまで戻すだろう、文明を。そうすれば、また数千年はほっとけるからね」

私「治癒ちゃん達へのサービスは、神的に『惑星地球人類閉店前の、出血大サービス』ってことね。うわあ」

無夜「神に声が届く、子供というのも。未来紡ぐ能力が高いことを優先しているから、実は治癒ママもパパも、剣君の親たちも、能力的には高かった。補助ちゃんと勇君とこは壊滅的なんだけど。子供作っても、大人や保護者、ちゃんとした親になれなかったから。前回の治癒ママの悪夢は、それこそ娘を無事に育てたいという責任が見せる夢だったから、その覚悟や自覚が神を遠ざける」

私「これ、あと5年の滅亡率の高さも怖くない?(リアル)」

無夜「核持ち国の偉い人が鬱とか煩ってある日突然に、血まみれの拳で核のボタン殴りつけながら、げひゃげひゃ泣き笑っている、なんてことが、ないとは言い切れないからね。5年と言わず、明日かも知れない、来年かも知れない。ただ、神が要所で延命措置みたいな動きをしてる気配がある」


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