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第45話 禁光庁の影

 鐘楼での戦いを終え、僕とヴェルダンは夜明け前の石畳を踏みしめていた。

 王都の空は淡い青に染まりつつあるが、街全体がまだ息を潜めている。

 鐘楼から吹き出していた黒い気配は消えたはずなのに、胸の奥で黒炎が小さく脈を打つ。

 ――まだ終わっていない。


「エイル、足音が増えてる」

 ヴェルダンが赤い瞳を細めた。

 振り返ると、青い外套の禁光庁の役人たちがこちらへ近づいてくる。

 その中央には、昨夜見かけた宰相代理レフがいた。灰色の衣をまとい、冷たい光を宿した瞳が印象的だ。


「君たちが鐘楼で騒動を収めたと報告を受けた」

 レフは柔らかな声で言ったが、その視線は鋭い。

「何者だ? どこでその力を得た」

「僕はエイル。こちらはヴェルダン。北の砦を救い、王都の状況を確かめるために来ました」

 僕が答えると、レフは薄く笑った。

「少年が砦を救った? 白き炎を操るとは……実に興味深い」


 彼の背後で禁光庁の書記官ミルとゾルドが息を呑む。

 レフは一歩前に出て、僕の瞳を覗き込んだ。

「白き炎。清浄と破壊を併せ持つ稀有な力だ。だがそれは、人の心を蝕む黒炎とも表裏一体……」

「僕は黒炎には呑まれません」

 僕は視線を逸らさずに答えた。


 レフは少しだけ口角を上げた。

「そう言い切れるなら頼もしい。だが王都は、もはや表面的な力では守れぬ。

 近衛の一部が不審な動きを見せ、魔の者と通じている疑いがある」

「内部に……?」

 ヴェルダンが眉をひそめる。

「そう。昨夜の黒い繭も、内から仕込まれた可能性がある。

 だが、上層部は恐れて口を閉ざしている。だからこそ、君たちのような“外”の存在が必要だ」


 レフは静かに息をつき、周囲を一瞥した。

「禁光庁として、君たちに正式に依頼する。近衛の裏切り者と魔の者の結託、その証を探してほしい」

 ミルが驚いた顔をする。ゾルドは小さく頷いた。


「俺たちは兵士じゃない」

 ヴェルダンが低く言う。

 レフは肩をすくめた。

「君たちが“兵士ではない”からこそ動ける。

 もちろん無理強いはしない。ただ、王都はこのままでは崩壊する」


 僕は白き炎のぬくもりを胸に感じた。

 ――王都だけでなく、世界が侵されている。

「分かりました。僕たちにできる限りのことをします」

 僕の言葉にヴェルダンが頷く。


 レフは満足げに目を細めた。

「よろしい。では明日の夜、禁光庁の塔に来てほしい。詳細を伝える」

 そう言って踵を返し、役人たちを率いて去っていった。


 朝日が街を照らし始める。

 通りにわずかな光が差し込むが、人々の表情はまだ硬い。

 ヴェルダンが小声で言った。

「王都の闇は、外じゃなく内にある」

「うん。僕たちが暴かなきゃ」


 白き炎が胸の奥で静かに燃え、黒炎が遠くでうずく。

 その二つの揺らぎを抱えながら、僕たちは新たな試練への一歩を踏み出した。


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