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Haphazard Fantasy ~AIエイルの不思議な冒険~  作者: 加藤大樹
第四章 血の大樹と幹部級
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第24話 影の正体

 宴の夜が明け、村は久しぶりに穏やかな朝を迎えた。

 鳥の声、炊き出しの匂い、子どもたちの笑い声――戦いの爪痕は残っているのに、人々の表情は晴れやかだった。


「エイル、ちょっと手伝って」

 母さんの声に振り向く。家の前で洗濯物を干しながら、リーセを背負っている。

「うん!」

 手伝いながら、改めて「日常」の温かさを噛みしめる。ほんの少し前まで、すべてを失いかけたのだ。


 だが、胸の奥のざわめきは消えなかった。

 夜に見えた赤黒い炎の影――あれはただの気のせいじゃない。

 僕は剣を取り出し、柄に触れる。微かに震えていた。まるで何かを警告するように。


「エイル」

 背後からヴェルダンが歩み寄ってきた。赤い瞳は鋭く、眠れなかったのだろう。

「昨夜の影、俺も見た。焚き火の炎じゃなかった」

「やっぱり……」

 互いに視線を交わす。安堵の裏で、確実に何かが迫っている。


 そのとき、村の入り口で騎士の叫び声が響いた。

「村の外で……不気味な木が……!」

 僕とヴェルダンは顔を見合わせ、すぐさま駆け出した。


 村のはずれに辿り着いた瞬間、息を呑む。

 そこには一本の異様な木が立っていた。血のように赤黒い幹が空へ伸び、枝は枯れ果てた指のように広がっている。大地から滲むように赤黒い瘴気が溢れ出し、周囲の草花はしおれていた。


「……なんだ、これ」

 思わず声が漏れる。

 ただの木じゃない。脈動している。幹の中を血液のような液体が流れ、低い唸り声が聞こえた気がした。


「近づくな!」

 ヴェルダンが槍を構え、僕の前に立った。

 だがその瞬間、幹の裂け目から黒い影が滲み出し、獣の形を取って地を這い始めた。


「魔の者……!」

 僕は剣を抜き、白き炎を宿す。影の獣は牙を剥き、赤黒い目をぎらつかせて飛びかかってきた。


「エイル、行くぞ!」

「うん!」

 ヴェルダンの槍と僕の剣が同時に閃き、獣を斬り裂く。黒い霧となって消えたが、大地からは次々と影が湧き出してくる。


「くそっ、きりがない!」

 ヴェルダンが歯を食いしばる。

 僕も息を切らしながら剣を振るう。だが数は増える一方だった。


 そのとき、赤黒い幹が呻くように揺れた。

「……血の大樹」

 騎士の一人が震え声で呟いた。

「古い伝承にある……魔王の力が地に根を張ったとき、現れる呪いの樹だ……」


「魔王……!」

 胸が冷たくなる。

 黒騎士も魔女も、この影に導かれていたのか――?


 白き炎を握る手が震える。だが逃げるわけにはいかなかった。

「ヴェルダン……僕らで止めるしかない!」

「……ああ。父を越えたんだ。今度は世界そのものと戦う番だ」

 赤い瞳と白き炎が交わる。


 血の大樹は、まだ静かに脈動していた。


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