第22話 白き炎の誓い
「本当に壊れない子たちね……なら、直接試してあげる」
グックルガムは鳶色の瞳を細め、赤いハイヒールで石畳を踏み鳴らした。
甲高い音と共に、漆黒の鞭のような魔力が生まれ、蛇のように僕らへ襲いかかってきた。
「くっ!」
ヴェルダンが槍で受け止めるが、衝撃で後ろへ弾き飛ばされる。
僕も剣を構え、白き炎を纏わせて鞭を斬った。だが、黒い鞭は裂けたそばから再生し、何度も襲い掛かってくる。
「エイル、油断するな!」
ヴェルダンの声が飛ぶ。
彼はすでに立ち直り、鞭の雨を突き払いながら前へ進んでいた。
グックルガムは不気味に笑いながら、舞うように大地を蹴った。
「もっと見せて。愛するものを守るための力――私を楽しませて!」
赤い靴が閃き、鋭い蹴りがヴェルダンの槍を弾く。小さな体からは想像できないほどの重さが伝わってきた。
「ぐっ……!」
ヴェルダンが膝をつく。
僕は剣を振り上げ、白き炎で魔女の背を狙った。
だがグックルガムは振り返りもせず、黒い鞭を一閃して僕を吹き飛ばす。
石畳に背を打ちつけ、息が詰まった。視界が揺れる。
(くそっ……! このままじゃ……!)
胸の奥で黒炎が蠢く。右目が疼き、視界の端が暗く染まっていく。
「……闇に堕ちればいい。あなたはその方が美しい」
グックルガムが妖しく囁く。
「僕は……違う!」
立ち上がり、剣を強く握る。
「僕は闇に呑まれない! 守るために――白き炎を選ぶ!」
叫ぶと同時に、白き炎が爆ぜて広がった。
その光は黒い鞭を焼き尽くし、魔女の動きを止める。
「ヴェルダン、今だ!」
僕の声に応じ、ヴェルダンが槍を突き込む。
赤い瞳が閃き、槍先が魔女の胸をかすめた。
「きゃあああっ!」
グックルガムの身体が弾かれ、瓦礫に叩きつけられる。
それでも立ち上がり、不気味に笑う。
「ふふ……素敵。あなたたちの絆、本当に壊れないのね」
鳶色の瞳が悔しさと愉悦に揺れる。
「今日はここまでにしてあげる。でも――また愛しいあなたたちを壊しに来るわ」
赤い靴音を残し、魔女の姿は黒い霧となって消え去った。
広場に静けさが戻る。
僕は剣を下ろし、肩で息をした。ヴェルダンも槍を支えに膝をつき、荒い息を吐く。
「……勝った、のか」
「追い払っただけだ。でも……僕たちなら、また立ち向かえる」
ヴェルダンはかすかに笑みを浮かべ、赤い瞳を光らせた。
「……ああ。俺たちはもう幻にも、力にも負けない」




