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第16話 仮面の下の声

 黒騎士の剣を受け止めた瞬間、腕に痺れるような衝撃が走った。

 白き炎が刃を包んでいなければ、身体ごと押し潰されていたに違いない。


「はぁっ……!」

 隣でヴェルダンが槍を繰り出し、必死に黒騎士を押し返す。

 赤い瞳と赤い瞳がぶつかり合い、広場の空気が一層張り詰めた。


 砕けた仮面の奥、黒騎士の口がわずかに動いた。

 それはこれまでの無機質な声とは違う――明確に、ヴェルダンへ向けられたものだった。


「ヴェルダン……力を求めるか」


「っ……!」

 ヴェルダンの腕が一瞬止まる。

「俺の名を……!」


「守るために戦うか……それとも、力のために戦うか」

 黒騎士の声は低く、鉄を擦るように重い。

「どちらを選ぼうとも、弱さは必ず滅びる」


「違う……!」

 ヴェルダンが叫び、槍を振り抜いた。

「守ることは弱さじゃない! 俺は仲間を守るために戦うんだ!」


「守ることが力になると……?」

 赤い瞳が細められる。

 嘲りを含みながらも、どこか揺らぎが宿っていた。


 僕は息を詰め、声を張る。

「ヴェルダンは間違ってない! 守るために戦うのは、僕だって同じだ!」


 黒騎士の剣が振り下ろされ、僕は白き炎で受け止める。

 刃と刃が噛み合い、火花が夜を裂いた。


「ぐっ……!」

 押し潰されそうになったその時、ヴェルダンの槍が横から突き込む。

 黒騎士は受け止めたが、わずかに体勢が崩れた。


「今だ!」

 僕とヴェルダンは同時に斬撃と突きを叩き込む。

 白と赤の閃光が夜空に散り、黒騎士の鎧に新たな傷が刻まれる。


 それでも黒騎士は退かず、低く呟いた。

「……やはり、血か」


「血……?」

 ヴェルダンが息を呑む。


「その赤い瞳。私と同じ色」

 黒騎士の声は低く震え、どこか遠い響きを帯びていた。

「力は受け継がれる。抗おうとも、それは変わらん」


 ヴェルダンの手が震える。

「俺もいつか……黒騎士になってしまうのか……!」


 僕は彼の肩を強く掴む。

「ヴェルダン、惑わされるな! お前はお前だ!」


「……」

 ヴェルダンの赤い瞳に再び光が宿る。

「たとえ血に縛られていても、俺は俺の道を選ぶ! 父さん……俺はあんたを越える!」


 黒騎士は沈黙した。

 その赤い瞳の奥で、一瞬だけ影が揺れた――父としての残光のように。


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