1_6.
次の日の朝、一の鐘と同時に目が覚めた。
まだ日はのぼっていない。
着がえようと思ってクローゼットを開けるとありえないような量の豪華なドレスがつまっていた。
クローゼットを閉めた。
開けた。
さっきと何も変わっていない。
でも新しい発見はあった。
大量のドレスにはさまれて、少し居心地の悪そうな様子でメイド服が1着かかっていた。
一応言っとくがお前らの好きなアキバとやらのメイド服じゃないからな。
あ、ちょっと待って帰らないで読者さん。別にアキバのメイド服が悪いとは思ってない。
ただ自分では着たくない、それだけだ。
公爵家のメイド服は、紺地に白い襟と袖口、肩のあたりはふくらんでいてとても上品かつ可愛いらしい。
さ骨のあたりの装飾は本物の宝石で袖口の金のボタン含め一介のメイドにはもったいない気もするが、そこはやはり公爵家、この程度ははした金ですらないのだろう。
ふわっと広がるエプロンは腰のあたりで結ばれている。
着てみるとサイズはぴったりでス力一卜丈はすねの中らへん。
同じく紺のくつ下と少しかかとのあがった上品な靴もあわせてすべて着心地、機能性ともにバツグンだった。
はやく仕事がしたい。
ろう下に出たが、誰もいない。
昨日は寝てしまったからどこに何の部屋があるかわからない。
とりあえず歩いていると1人のメイドがやって来た。
足音は立っていないが、小走りだったからか軽く息が乱れている。
「お、おくっ、じゃなくてラナ様!何をされているのですか!?」
「? ...ラナ様じゃなくて、ラナでいいわ。えぇと、仕事はないかと思ったのだけれど、歩いているうちに場所がわからなくなって...」
「ラ、ラナさん。手伝って欲しい仕事があるので、一緒に来て欲しいです!」
やっぱり伯爵嬢相手に呼び捨ては無理か...。
でも、尊敬語から丁寧語くらいになったのは嬉しい。この調子で慣れていってくれるだろう。
メイドさんにお名前を聞くとレナだと教えてくれた。
響きが似ていると言うとはにかんで笑ってくれて、たまらなくかわいい。
レナが連れていってくれた先にったのはうさぎ小屋だった。
何ここ!
楽園!?
可愛すぎ!
広い庭の中、ちょうど二階にある私の部屋からななめ下くらいの位置で、窓から外を眺めた時にやけに可愛らしい小屋があるから気になってはいたのだが、まさかうさぎ小屋だったとは!
「それにしても、うさぎ小屋だなんて、公爵様はうさぎ好きだったりするの?」
「う一ん、公爵様がうさぎ好きだとは聞いたことはないです。愛馬のことは可愛がっていらっしゃいますが、それ以外の動物と一緒にいる姿は見たことないです。うさぎ小屋は最近立てられたのですよ。奥様はうさぎ好きと聞いたので」
奥様、まだ会えていないけれど、うさぎ好きだなんて!私と一緒じゃない!
なんか後半レナがジト目だった気もするが、たぶん気のせい。
そんなこんなで公爵家での初仕事はうさぎのエサやりとなった。レナはとなりで小屋入掃除をしている。
やっぱり私は伯爵嬢だからと気をつかわれているようだ。
でも私もっと色々できるし!自分にできることは何でもやるべきだ 。
よし、仕事しまくるぞ!
私の勘違いはさらに悪化していくだけだなんて、私もまわりの人たちも、誰にもとめることなどできないのだった。
ちなみにラナちゃんのメイド服は超特急で作られて、メイド長さんによって部屋におかれました。そうでもしないと戸惑ったラナちゃんが昨日の服のままあちこちを徘徊しそうだったので。