1_5.
足を踏みはずした。ばれてない。多分。ばれてない。大丈夫。...だといいな。
親切な御者さんは屋敷まで先導してくれた。
重厚な扉が開かれると...メイドさんに料理人さんに...なんというか、ずらーっと人が並んでいる。
いや、ちょっとまって、私メイド!働きにきているから!そんな総手でお迎えしないで!
困惑する私を見てさらに困惑する使用人さんたち。
でも顔にはでていない。さすが公爵家。私もあの中にまざらなきゃいけないのか。
ん?顔に出てないのになんでわかったか?女の勘みたいなやつじゃない?自分でもよくわからんけど。
そんなことを考えていると、御者さんが先頭のメイドさんに耳打ちしていた。
メイド長さんだろうか。サバサバしてそうでかっこいい人だ。
御者さんが離れると、メイド長さん(たぶん)は使用人さんsの方へふり返り言った。「説明はあとでするわ。私はラナ様を案内するからあなたたちは使用人用の厨房へ集まって」
その声に綺麗にそろった返事が返ってくる。なぜか一拍間があった気がするけど気のせいだろう。
「えぇと、メイド長さまでしょうか?なんとお呼びすればいいのでしょう?」
「メイド長、と。呼び捨てでまいません」
「いえ、仮にも上の立場に立たれる方にそのような...。では、メイド長さん、とお呼びしても?」
「えぇ、それで」
そんな感じでお上品にとりつくろいながら歩いているが、大丈夫だろうか。何コイツとか思われていないといいけど。
そんなこんなで着いた部屋は...ひぃっつろ!いや広すぎる!実家の父の部屋よかよっぽど広い!
伯爵嬢の私に気をつかってくれたのかもしれないが、いくらなんでもやりすぎだ。
まぁ、1万步ゆずって納得するとして、ベッド!大きさでごまかせたりしなないから!あれはどう見てもダブルだって!なんで!?
あっ、もしかしてあれか?数代前の当主の側室の部屋だったとか!?わかんないけど!
以上の思考を表情に出さずコンマ1秒ですませ(たぶん)、メイド長さんを見る。
「あの、この部屋はいささか広すぎます。これでは数日前に婚姻を結ばれたという奥様もいらぬ心配をしてしまうかもしれません。もっと小さい部屋を用意していただけませんか?」
「...、旦那様が帰られたらお話ししてみます」
「ありがとうございます」
「私は用があるので、しばらく離れます。夕食の時間にはお呼びするので、それまではこちらでお休みください」
「わかりました。ご丁寧にありがとうございます」
そういえば、みんな話しはじめる前に沈黙するのだカが最近の流行りだろうか。
それに、メイド長さんの口調は客人対応のままだが、指適するのも野暮だろう。
本来自分よりも立場が上の人が部下になるのだ。他の使用人さん含めみんな迷惑に思うだろう。
しばらくはお互いに大変だなと思いながらベッドに腰かけた。
本でも持ってくればよかった。暇をつぶせるものが何もない。
私が無意識にイスではなくベッドに腰かけてしまったのは、自分で思う以上につかれていたのだろう。
そのまま寝いってしまった私は、タ食を知らせに来たメイド長さんにも、勘違いを正しに来た旦那様にも気づかなかった。
活動報告でたぶん週3くらいとか言っときながら今のところ毎日更新。しばらくはこの調子でがんばりたいです。