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さて、そろそろ皆様にごあいさつをせねば。
この作品の語り部でメタ発言担当 (ついでにいうとヒロイン)のラナと申します。皆様におかれましてはご機嫌うるわしゅう。
え、機嫌悪い?ごめん、ちょーどーでもいーわ。やばい、読者が離れていくのが見えた。
たぶんここまでの流れで気付かれていると思うが、私は変な人だ。いや、嘘。関わった人全員に変人あつかいされる普通の人だ。
まあそれは置いといて、公爵家に着くまでの四半刻、私のメタ発言、もといこの国の話を聞いて欲しい。
この国はまあ、よくある中世ヨ一口ッパ風の異世界とかいうやつだ。国のトップは王様でその下に王族、公爵、侯爵...というように身分がある。
伯爵家である我が家はもともとそこそこ裕福だった。
3ヵ月前のあの水害の日までは。
我が領はもともと雨が多く、あの日の雨も多いとはいえよくあること、のはずだった。
なのに、"瘴気の森"で土砂くずれがおき、流れこんできた土砂により水位を大幅に増した川が提防を破った。
田畑も領民の家も水につかって小高い丘の上にある私達の屋敷は逃げてきた人々でうめつくされた。
けが人を医者に見せ、たき出しを行った。
幸い死者は出なかった。
でも、収穫前の麦は全部だめになってしまった。
我が領の特産品である米もこれから植えるのだから食べれるわけがないし、去年の収穫物もほとんど他領に売ってしまっていたから、残りはわずかだ。
こんなことになるとわかっていれば...なんて、そんなこと言ったってどうにもならない。
このままでは飢餓で...というときに手を差し出してくれたのが、若き俊英、私の主人となる公爵様だった。
前にも言った気がするが、顔がいい!じゃなくて、それは関係ないとして、や、確かに好みドストライクなんだけど。
それは1度置いておくが、とにかく有能な方なのだ。この国有数の穀倉地帯が消える危機だと、我が家をつぶすわけにはいかない、と判断されたのだろう。
ちくしょう、国王よりもよっぽど優秀じゃねぇか!
しかもすごいところはそれだけじゃない。
"氷の騎士様"の異名を持ち、その名のとおり氷の魔法の使い手で、国一番の騎士。氷のように美しく冷たい表情で令嬢方の相手をしているくせに、実は相手のことを気付かっているところがたまらないのだとか。
仲の良い令嬢から聞いた。あいつなぜか私よりも詳しいのだ。
そのくせ推しは王子様で最愛の人は侯爵様(婚約者)というまぎらわしいやつだ。あんただけには言われたくないっ!と幻聴が聞こえた気がしたが、気のせいだろう。
「お嬢様、お屋敷が見えてまいりましたよ」
「まぁ、本当?これからがんばらなくちゃ」そう言ってほほえむ。
我ながら、猫をかぶりすぎだと思うが、しかたない。
クビと資金援助打ち切りだけは避けたいのだ。
馬車が止まる。開けられた扉の外へ足を踏み出した。