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1_3.

「あの一、お嬢様。ずっと思っていたのですが、勘違いなさっていらっしゃいませんか?」


旅の3日目。宿を出てしばらくしてから少し遠慮がちに御者さんに声をかけられた。


「勘違い?どういうことかしら?」


「ご自身のことをメイドとしてやとわれた、と。あなたさまはメイドではなく奥方として公爵家へ向かわれるはずですのに。


「あら、勘違いしているのはあなたのほうだわ。私は本当にメイドなのよ。聞くところによると、公爵様は最近ご結婚なされたのでしょう?きっと私、奥様の話し相手として呼ばれたのだわ。公爵様、奥様思いの優しい方なのね。奥様もきっとすてきな方だわ。お合いできるのが待ちどおしいわ。」


「え、えぇ、そうですね」


「私にどのようなことができるかはわからないけれど、公爵様のお役に立てるといいわ」


「...奥様はあなたなんだけどなぁ。3回目の説明、効果なしかぁ...」


「何か言ったかしら?それよりも、私はメイドになるのだから、敬わなくていいのよ。あなたの方が先輩なんだから、ラナ、でいいのよ?」


そんなことしたら公爵様に殺される...、そんな悲痛な声はやはりラナにはとどかない。


そのときのラナといえば、公爵様は私のことなど、かわいそうな伯爵家の女とかメイドとなる女の顔なんて覚えているわけないだろくらいに思っているのだろう、と考えていたからだ。


それが普通だとラナは認識している。確かに普通かもしれない。だがしかし、公爵様にあてはまるとは限らない。ラナの考えがそこまでいたらないことが公爵様にとっての一番の不運だったのだろう。



それすらも知らずラナの勘違いは加速を続ける。


公爵様は有名だから、私は顔を知っている。でも公爵様は私のことを認識すらしていないのではないか。あれだけの女性から告白されているにもかかわらず、最近まで婚約すらしていなかったのだ。もともと女性に対する興味関心が薄いのかもしれない。


しかし、あの公爵様のとなりに立つのはどんな女性なのだろうか。あのハイスペックで才能の塊みたいな人の妻になるのだ。普通の人にはつとまらないだろう。きっとすごい人なのだろうから早くあってみたい。


あぁ、でも、その方に嫌われたら公爵家を追い出されてしまうかもしれない。そうしたら、資金援助は打ち切りだろうから、気をつけねば。


まずは第一印象、それから、この家でメイドとして働いても問題ありませ一ん、あなたの恋敵にはまずなりえませーん、というのを態度で示さねば。


とりあえずああして、こーして、そんなこんなで考えているうちに王都へ入った。

立ちならぶ家が大きくて豪華になっていき、道行く人々の服装もスマートだ。


御者さんにあと四半刻ほどで着くといわれ、「よし、がんばるぞ」と小さくつぶやきながら、強く握りしめた右のこぶしを胸にあてた。

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