お兄ちゃんたち、カッコよすぎない?
歳が離れたお兄ちゃんって、頼もしいよね。
食堂に向かっている間も、この体が覚えているのか迷うことなくついた。
食堂には、すでに二人の男の子が席についていて、あの二人がこの子の兄なのだと認識をした。私は執事さんらしき男性が椅子を引いてくれたので、その席に座り周りを見渡した。
私の部屋は豪華だったけど、廊下やこの食堂は質素だ。絵や花瓶などもないし、どこか薄暗さを感じる。でも床や壁には何か置いていた跡が残っていたから、売り払ったのかな?
「オシリス、ぶつけた頭は痛くねぇのか?」
座って右側にいる黒色の髪をツーブロックにし、アイスブルーの瞳を持つ男の子が声を掛けてきた。この子は2.5次元のミュージカルに出てそうだな。
「はい、お医者様に診察してもらったので大丈夫です。あ、でも2.3日は安静にしておくように言われましたけど……」
「そうか。ならよかった。だが、あまり無理はするな」
そう言ったのは右斜め前に座る黒のウルフミディアムで、ダークブルーの瞳を持つ、チョコボとかいう鳥が出ていたゲームに出ていそうなぐらい、美男子だ。
「そうだぜ。なんたって俺と兄貴は明日から学園に行くんだ。お前が寝込んじまうと、学園に行きづらくなるからな」
「学園ですか?」
「そうだ。始業式はまだ2週間ほどあるが、ここから学園がある王都までは馬車で2週間かかるから、早くいかないといけないんだ」
「そうよ。だからマールスとアレースとオシリスと私を入れた4人で夕食を取ることは、二人が夏の長期休暇から帰ってくるまでお預けなの」
「「「母上/母様/お母様」」」
最後に食堂に入ってきたお母様が誕生日席に座ると、メイドたちが一斉に動き出し、食事を配膳し始めた。
「マールスは今年で15歳になるから、あと2年で卒業なのね」
「えぇ、本当は飛び級などの制度が認められていれば、とっくに卒業しているのですが……」
マールスはお母様を見て凄く残念そうな顔をした。
「そんなに早くに大人にならなくていいのよ。あなたが領主になるまでは母が頑張りますからね。それに、今年はアレースが入学ですもの。学科は違うけれど、アレースのことよろしくね」
「はい」
お母様はマールスの返事に笑顔で頷き、次にアレースを見た。
「アレースがもう10歳だなんて、時間が経つのはとても早いわ」
「俺は、兄貴みたいに主席にはなれないかもしれねぇけど、10位以内には絶対に入って学費免除を申請できるようにするから、安心してくれ」
僕の右側に座るアレースはにかっと笑って言った。
「ごめんなさいね。私が不甲斐ないばかりに苦労を掛けて……」
お母様は悲しそうな顔をして謝ると、アレースは首を横に振り笑顔で言った。
「3年前のスタンピードのせいで、領民たちの住む場所がなくなったり、仕事を失ったりしている。そのために我が家の家財などを売り、領民たちの生活を守ろうとする母様の思いを理解しているからこそ、俺や兄貴は勉学が苦じゃないんだ。俺たちが学んだことが、将来この領に住む民たちに還元できるのだから」
「……あぁ、カストルがいれば、あなたたちの成長を涙を流して喜んだでしょう」
アレースの言葉に頷いたマールスを見たお母様は、泣くのを堪えるような笑顔で言った。