プロローグ③
どうしてそんなメイクをするの?
私は再び目を覚ました。さっき傍にいた女の子が顔を覗き込んできて、すぐに医者を呼びに行った。
私は私で、目が覚めた瞬間この男の子について思い出した。
この男の子の名前は、オシリス・ベテルギウス。この家に住む三男。この世界は私がいた世界とは違い、魔法がある世界だ。
ベテルギウス家は辺境伯爵で、母が領地を治めている。ほかに兄二人がいる。父は3年前に起きた領内のダンジョンでスタンピードが発生し、討伐のために出陣をしたが、モンスターと相打ちになり死んだ。だから今は長男が成人するまでの間、母が領地を治めている。
で、このオシリスが気を失っていたのは、次男と剣の稽古の一環として打ち合いをしていた時に、次男の剣を避けた先にあった石に足をとられて、転倒した。その際に頭を打ったらしい。
「多分、頭を打ったことで前世の記憶が蘇ったんだと思うんだけど……、これはあれかな?担当していたアニメが大好きなお客様が言ってた、転生?っていうやつなのかな?確か転生した人は、その世界のあらゆる問題を解決したり、統一したりするって言っていたような……」
私は起き上がり、膝を抱えおでこを膝に付け、どうしたものかと考えていると、扉の外が騒がしくなった。私は様子を伺っていると、扉が開きさっきの女の子とご高齢なおじいさんを連れてきた。その後ろには黒のロングストレートな髪にアイスブルーの瞳を持つめちゃくちゃ美人……、宝塚歌劇の娘役をしていてもおかしくないような女性がいた。メイクはメイドさんたちと同じ福笑いのような赤色のチークだけだった。だからなんでそんなメイクなの!?
「さてさて、坊ちゃん。どこか具合が悪いなどはありますかな?」
おじいさんはベッドの横にあった椅子に腰を掛けると、私の左腕を取り脈を確認しながら問診を始めた。
「……特にはないです」
「それはよいことですな。だが頭を強打しておるからの、2・3日は安静にしておくように」
「分かりました」
先生の話を聞いていると、反対側のベッドの横にあった椅子に座った美人な女性は私の右手を握りしめながら先生に尋ねた。
「先生?オシリスが普段とは違って、私を見てすぐ『お母様!』と言って抱き着いてこないの……。本当に大丈夫かしら?」
「え!?いや、あの、お、お父様が!」
「カストル?カストルがどうかしたの?」
女性……ではなく、お母様は心配そうな顔で私の顔を覗き込んできた。
「あの、お、お父様が夢にでてきてくれまして、その、『強くなりなさい』という感じの言葉を、わた……僕に言われまして」
嘘ですー!本当にごめんなさい!だからそんな、悲しい顔をしないでくださーい!
「そう、あの人が……。そうね。あの人は、普段はのほほんとしているのに、少しでも自分が大切にしているものを傷つけられたら怒り狂う人だったものね。強くなければ、守れないもの」
お母様は少し寂しそうな顔をして私を見つめると、立ち上がり私の頭を出て部屋を後にした。
その後、先生も必要事項をメイドの女の子に伝え部屋を後にした。