プロローグ②
前世の記憶。
私は、農家兼大工をしていた父と、その町唯一の美容師だった母。それと整体師をしている兄と保育士をしている姉の5人家族だった。
私は幼いころから母の仕事をしている姿が好きだった。楽しく話をしたり、時には相談を乗ったりして、お客さんが望むヘアースタイルにしていく姿は、まるで魔法だ。と幼少期に思い、憧れ、いつしか私が目指す職業となった。
私が高校生になり美容師の勉強をするために色々な学校のパンフレットを見ていると、トータルビューティーというメイクやエステ、ネイルなどの知識を学べる学科があった。私はそのパンフレットを見つけた時、直感でこれだ!と思い、両親を説得し、高校の3年間は遊ぶことなくバイトに明け暮れ、高校を卒業後一人上京した。
そして、日中はトータルビューティーを学び、美容師の資格は夜間学校で学び国家資格を取得した。
専門学校を卒業後は美容師見習いとして1年働き、働いていたサロンの試験を受け美容師として働き始めた。その後サロンの経営拡大をするため、ネイルとメイクの部署が設立された。私は学生時代に勉強をしていたということもあり、設立メンバーに選ばれ、約1年間ネイルとメイクの複合サロン1号店をオープンするための準備に奔走した。奔走している間にネイリスト技能検定試験1級とジェルネイル技能検定上級を取得した。1号店をオープン後、私は副店長として働くことになった。
毎日が楽しく、充実していた私は気が付いたら30歳になり、そろそろ結婚も視野に入れ、婚活を始めようとした矢先、左胸に乳がんがあることが発覚した。気づくのが遅く発覚した時には、ステージ3だった。私が小学生のころに祖母が乳がんで亡くなっていたこともあり、私は絶望した。すぐに放射線治療、左胸の全摘出、抗がん剤治療をしたが、年齢が若いこともあり、がんの進行スピードが速く、最期は家族に見守られ34歳でこの世を去った。
……はずだったんだけど、目が覚めたら、天幕付きのキングサイズのベッドに寝ていて、起き上がって光が入っていた窓を見たら、中世ヨーロッパみたいな街並みが見えるわ、空には鳥には似ても似つかわしくない生物が飛んでいるわ、私のことを坊ちゃんと言うし。