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第8話 ニセ広告に桃未さん!?

 部屋の壁が薄い、薄すぎる。


 逃れようのない事実であり、あえて聞こうとしなくても聞こえてしまう駄々洩れ桃未の奇声。まさに今日はそんな日。


『てぇい! ていていっ! とぅっー!? こんちくしょー! あぁ、このゲームはあたしの実力じゃ無理ぃ!! 無理だよ? 無理だよぉ』


 アプリゲームで大声を出すゲームなんてほとんど無いはずなのに、何で隣にいる俺に聞こえるように助けを求めるのか意味が分からない。


「はぁ……何で静かにゲーム出来ないんだよ」

「だって協力してもらった方が楽しいもん。道連れに……じゃなくて、えっと?」

「フォローが欲しかったって意味だろ?」

「うんうん、それ!」


 最近姉気取りどころか幼くなってるのは気のせいだろうか。


「で、俺は何をすればいいって?」

「画面にいる猫ちゃんをね、いっぱい出て来るハチから守るの! 出来る?」

「何だ、良くある広告ゲームじゃん」


 桃未のスマホを手にすると、どこかでよく見る広告ゲームになっていた。


「何度やってもこの囲いがどかされちゃうんだよ」


 いつものことだとシカトすることが多かったが、これくらいならとステージをいくつかクリアしてあげたまでは良かった。


 しかしウザいくらいの広告が流れ始めたところで、俺は別の意味で桃未に説教を開始することに。


「……これ、桃未だよな? 外国語に変わってるしちょっとキャラ入ってるけど、どう見てもこの女性って……」

「き、きききき奇遇ぅ。どうしてあたしが画面の中にいるのかなぁ? 不思議~」


 どこで上手い話という名の騙され方をしたのか、桃未に厳重注意しなければ。()()()()()()桃未が変に有名になっても困るし。


「――はぁ? スカウトされた!?」

「そ、そうそう! なんかね~簡単なエキストラだよって言われたからやってみたの。そしたらまさかだよ~……」


 見る人が見れば桃未だということが分かってしまうくらい桃未そのものだ。まさか広告ゲームの宣伝に出て来るなんて、さすがに想定外だぞ。


「ゆ、悠真くぅん……どうすればよいの?」

「いくらかもらったんだろ?」

「そんなのすぐ無くなっちゃったよ~。どうしよう……あたし、もしかして――」


 いつになく落ち込んでるな。さっきまで楽しそうにゲームしてたのに。


「ほ、本名が出てるわけでもないし、キャラっぽくなってるからそんなに心配するでも無いと思うけど」

「もしかしなくても、あたしが有名になり過ぎて悠真くんより遠い世界に旅立っちゃったら悠真くんが泣いちゃうよ~」

「泣かないっての!!」


 何の心配かと思いきや、そっちの心配かよ。すでにギャラが発生してるんならどうしようもないだろうし、俺もどうにも出来ないから様子見しかない。


「おぉ~かんた~んだぁ!! そっかぁ、こうすればイケるのね!!」

「だろ?」

「冴えてる、冴えてるよ! どうした、あたし? すいすいクリア出来ちゃうよ?」


 ニセ広告に桃未が出て来たのはなかなかのインパクトだったが、多分そんな深刻に心配するものでも無さそうなのでそのままゲームに没頭させることにした。


「悠真くん」

「……ん?」

「ありがとね! お姉さん、ますます悠真くんへの株を上げちゃったよ~」

「それはどうも」


 家にいる時は姉気取りなんだよな。こういう無意識な態度もあざといと言えるが、桃未が来ている時にその部屋に足を踏み入れてしまう俺もつくづく甘い。


「進めないよぉ……悠真くぅん。へるぷみぃ!」

「……分かったよ。やるけど、ライフゼロになっても泣くなよ?」

「泣かないよ? けど、悠真くんの弱みの一つや二つほどを握らせていただ……」

「ほい、終わり」

「早っ!? えぇ!? なんでぇ?」


 桃未がやっているゲームはかなり前に全クリして削除済み。つまり思い出せば簡単にクリアが出来るわけだ。


「じゃあ、そういうことで」


 何に苦戦していたのかというくらいあっさりと倒し、俺はようやく自分の部屋へ引き返せる――と思っていたら。


「悠真くん。あたしが遊びに来た時、隣のお部屋に遠慮なく来てもいいんだからね? 悠真くんのお家なんだし、ね?」


 急に雰囲気変えるのは反則だろ。


「うっ……」

「だって幼馴染なんだよ? ここじゃ彼氏のフリなんかしなくてもあたしに甘えていいし、何ならずっとぴったりくっついてもいいんだからね」

「か、考えておくよ……」

「待ってるからね!」


 家の中での桃未は色んな意味で危険だし、外でも変な誘いに乗らないように俺が気を付けなければならない――それくらい桃未は危なっかしいと知った日だった。


「よぉし! 全部クリアしちゃうぞぉ!」

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