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彼氏のフリをしてと言われても。~姉気取りの幼馴染は今日もオレに甘えてくる~  作者: 遥風 かずら


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第19話 睡魔に友達申請!?

 桃未が最近おかしい。いや、前からおかしいが、何かの幼児向けアニメにでもハマったかのごとく、語尾に必ず『ニャ』をつけるようになった。


 前々からふわふわとした天然であると認識しているけど、新葉さんの呪縛から解放されたからなのか、特にそんな傾向が強くなった気がする。


 しかしそんな不思議キャラでも時と場合はわきまえているみたいで、俺を迎えに来る時はいつものように美人お姉さんとして振る舞っていたりして無駄に人気者だ。


 そんな不安を抱える中、一緒に帰る最中に桃未は奇妙な呪文を唱え始める。


「み~んみんみんみん……ニャ~?」


 なんだなんだ?


 なんだその可愛い声と仕草は。


「一応訊くけど、セミとネコの魂でも入った?」

「違~う! 悠真くんの学校での状態は見えないし、お家でもきっとそんな変わらないから悩みなんて無いだろうけど、あたしは悩みまくりなんだぞ?」


 悩みがあるからセミとネコなのか?


「何の悩み?」

「みんみん……睡眠! ちっとも眠くないの! 全っ然、眠くならないんだよぉ。悠真くんはお姉さんのこの苦しみが分からないのかね! 苦しみが分かり合えない悠真くんよりも、理解してくれる睡魔さんに友達申請するんだからね!」

「あ……眠れないって悩みなんだ」


 あまり見るつもりは無かったが、確かに桃未の目の下にはうっすらとクマが出来ている。


 悩みが尽きない桃未でも眠れなくなるとかがあるんだな……などと、俺は妙に感心してしまった。


 それはともかく、


「友達申請? え、実在する人?」

「この中にいるじゃん!!」


 そう言って桃未は自分の携帯を俺の目の前に出して、アプリを見せてきた。


 画面上には、かなり昔に流行ったペットゲームのようなキャラがうろうろと動いていた。そのキャラはネコタイプのようで、特に何も操作しなくても勝手に寝たり起きたりしている。


「……ネコを育てるゲームか」

「違うニャ!」

「じゃあアラーム機能があるキャラアプリ?」


 なぜ語尾にニャが付くのかはスルーしとくとして、何かどこかで見た気がしないでもないがどこで見たやつだろうか。


 もう一度携帯の画面を見ながらネコに触れてみると、広告が流れだした。


 ――あ。この広告の奴、桃未が出たやつか。


「気づいたようだニャ? そう! このアプリは無料で遊べるうえに、心地よい音楽で眠ることが出来るかもしれない放置ゲームなのだぁ~!」


 眠くなりそうなBGMではあるけど、すごい無駄な気がする。キャラ育成でも無くて鑑賞用っぽいし。


「これはこれでいいかもだけど、俺もオーソドックスな方法を知ってるんだけど、聞きたい?」

「そ、それは何なのニャ?」


 ニャを言うのはあまり意味が無いけど可愛いからいいや。


「じゃあ、桃未。目を閉じて」

「ニャ? あたしに何をしようというのかニャ?」


 何を想像したのか、桃未は体をこわばらせながら首を傾けて目を閉じた。


「……こんな道の途中で桃未が想像したようなことはしないけどな」


 もし桃未が想像するようなことをしてしまえば、この関係がすぐに壊れてしまいかねないし。


「羊を数えるんだよ。知ってるだろ?」

「羊? あたしは人ですよ? そしてここは住宅街のはずだニャ」

「そうじゃなくて、眠れない時に羊を数えるやつね。どこかで見たことあるでしょ?」

「あー! モフモフさんだぁ!」

「モ……そ、それな! そのモフモフさんを一匹、二匹……って数えていればそのうち眠っているかもって話」


 実際に成功した話を訊いたことないけど。でも少なくとも携帯、しかもアプリを作動させたままでベッドの横に置いてるよりは眠れるはず。


「ふんふん、モフモフさんを何回もモフれば眠れるわけだね!?」

「……そ、そうだな」

「悠真くんを信じて部屋に戻ったら試してみるぜ! あざっす!」

「それでもどうにもならなかったら――」


 これを言うのは反則かもだけど、この前俺がやられているし逆にやってみたら変わるかもしれないから言うだけ言ってみる。


「お、俺が添い寝するから」

「うひょ!? そ、それはラッキースケベな奴だね?」

「断じて違う!!」

「……ううむ。そうかそうか、悠真くんもきちんと男の子してるんだな~……うん、どうしても眠れなかったらお願いするとしようじゃないか!」


 言った俺が恥ずかしそうになりながら、そのままお互いの家に帰った。


 そして夜、寝る時間になったので眠ろうとした時。


「悠真くん悠真くん!! モフモフさんであくびが出たよ! ありがとありがと!!」


 ……などと、寝る寸前で電話が鳴り響いた。


 電話の相手はもちろん桃未だ。


「お、おぅ。いや……どんなモフモフさんを想像したのかなんて分からないけど、その勢いでぐっすり寝ていいから」

「うんうん、おやすみっ!」

「おやすみ……」


 俺も眠気がきていたので電話を切って寝ようとすると、まだ電話が切れていなかったのか桃未の声が聞こえてくる。


「悠真くんが眠れなくなったら桃未さんをたくさん抱きしめていいんだからね? 悠真くんなら、いつでもどこでもウエルカムさ!!」

「えっ……お、おい! 今のどういう意味――」


 ……寝言かどうか不明ながら電話は切れていた。


 あぁ、くそ。今度は俺が眠れなくなりそうだ。


 睡魔ネコに友達とか、色々どうなるかと心配していたのに結局俺だけが桃未に振り回されたってことみたいだ。


 それでも桃未の俺への甘え方は反則すぎるものだった。

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