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彼氏のフリをしてと言われても。~姉気取りの幼馴染は今日もオレに甘えてくる~  作者: 遥風 かずら


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第18話 金縛りレベルで納得? 番外編

 桃未なりのなぐさめを受けた翌日。


 俺は()()()に電話で呼び出され、るるポートの広場に来ていた。俺のことをあっさりとフった彼女なわけだが、何故か記念デートをしたいといって呼び出した。


 このことを桃未に一応伝えておいたが、桃未は勝者の余裕なのか――


「――うんうん、行っといでよ! その方が悠真くんにとってもいいと思うし、彼女にとっても踏ん切りがつくんじゃなぁい?」


 俺としては桃未なりに気を遣って添い寝してくれたおかげできれいさっぱりな気持ちになっているし、会うこと自体今さら感がある。


 フラれた俺から言うのもなんだけど、むしろ俺からも彼女に別れの言葉をかけてやろう……などと思っていた。


 思っていたのに……新葉わかばさんの隣を歩く女性を見ただけで、俺は一瞬にして金縛り状態になってしまう。


 新葉さんも美人過ぎる人なのに、まさか新葉さんをも上回るレベルの人がいるだなんて、予想すら出来なかった。


「や、やぁやぁ、はろぅ! 悠真! じゃなくて、結城くんじゃないか!」

「…………はい」

「おやぁ? まさかと思うが、この期に及んであたくしの美貌に痺れて動けなくなっちまったのかね? そいつぁ、大変だ! 今すぐこの身で抱き締めてやるぜぇ~」


 残念ながら新葉さんにじゃなくて隣の――あっ。


 身動きが取れないと思っていると、隣の最強美少女さんの鋭い手が新葉さんの頭に小突かれていた。


「全く、何をしているんですか? 新葉さん。彼に謝りにきたんじゃないんですか?」

「おっおぉぉぉぉぉ……よ、容赦ない手刀を頂いちゃったよ~」


 新葉さんは相当なダメージを負ったのか、その場にしゃがみ込んでいる。手刀を浴びせた女性は俺に微笑みながら軽く頷いてみせた。


 俺は未だにこの美少女さんの綺麗さで金縛りが解けない。見た感じ桃未と同い年くらいで、俺より一つ上っぽく見える。


 そうなると桃未とはどこかで会っていてもおかしくないのだが、桃未からその手の話を訊いたことがないから別の大学の可能性がある。


「げふんげふん。お見苦しいところをお見せしちゃったわね、結城くん」


 ダメージから回復したようで、新葉さんはすくっと立ち上がって俺の前に立った。


「あ、いえ」

「ん~? 何でそんな緊張してんのかな? あたくしの……じゃなくて、この子がそんなに気になるのかな? でも駄目だぜ? この子にはもう意中の~げぼっ!?」


 新葉さんが何かを言おうとすると、またしても言葉を遮るようにして新葉さんをホールドしている。


 あれ? 実は立場的に新葉さんよりもこの人の方が上なのか?


「ふざけてないで、困っているこの男の子に言うべきことを言ってください! そうじゃないとわたし、容赦しないですよ?」

「ぎぎぎ……ギブギブ」

「わたしが何のためについて来たのかお忘れですか?」

「わ、分かったよぉ~。時間が少ない中でふざけたりしてあたしが悪ぅござんした」


 ……なるほど。そういう関係性か。そしてこの美少女さんは、新葉さんの為に忙しい合間を縫ってここに来てくれたという話みたいだ。


 とてつもない美少女さんだし、多分この人が美少女コンテストの優勝者なんだろうな。


 俺に話しかけてくれないのは寂しいけど。


「コ、コホン……。結城悠真くん。この前はごめんね! その、簡単なお別れをしちゃって何というか傷つけるつもりは無くて、でも……その~あたしが曖昧な態度を見せたからきっとそうなのかなぁと思って~……」


 あぁ……これは新葉さんの本気の本音ってやつだ。今はもう心がどうなるわけでもないからいいとしても、新葉さんにはもっとお似合いの人が現れてくれるはず。


「大丈夫ですよ。俺、もうこのとおり清々としてるんで!」

「そ、そうかい? するってぇと、あの子で本決まり?」

「……それは分からないですが~」


 桃未のあの態度だけで判断するのはあまりにも性急すぎる。彼氏のフリを継続するつもりらしいし、俺が勝手に思い込むのは危険だ。


「そ、そうなのかい!? おかしいぜ、それは」

「新葉さん……いい加減に…………」


 どうしてもふざけてしまいたいみたいだが、美少女さんが鋭い眼光と握り拳を鳴らしながらこの場を制している。


「おおう。あ、あたしも結城くんに本気になりたかったけど、あの子の方に軍配が上がりそうだった気がしたからあたしの負け! なのだ。そういうわけだから、あの子のことをもっと見てあげなさい! 分かったね、結城くん!」


 桃未の方が気持ち的に俺を見ている……か。それは何とも言えないけど、新葉さんにも事情があるだろうしこれ以上言うことは無いな。


「はい、分かりました。それでその、その人は――」

「ふふん、やはりそうか……無理もないね! 何せここにいる美少女はあたしの弟分である奴に射止められた――」


 何かを言いかけた新葉さんに対し、目の前の美少女さんは凄まじい力でヘッドロックを喰らわしている。


 これは多分俺が訊いちゃ駄目なやつだ。


「じゃ、じゃあ、俺は帰ります。新葉さん、俺は新葉さんの男にはなれないけど、友達にはなれるのでいつでも声をかけてきていいですから! じゃあ!」

「むぐ~むぐぐ~!!」


 おそらく伝わったはずだし、とっとと帰ろう。


「結城悠真さん。この人を元気づけてくれて、ありがとうございました。わたしはもうすぐ日本を発つんですけれど、またお会いしたら声、かけてくださいね」

「えっあ……は、はい」


 何て綺麗な人なんだ。タレントさんなのかどうでもいいけど、普段は外国暮らしだとしたらそれは会えないよな。


「――というわけですので、ほら、行きますよ新葉さん!」

「ひっ、ひぃっ……逃げないから優しくしておくれ~! つ、つららちゃ~ん」

「はいはい、行きますよ」


 綺麗な人に首根っこを掴まれながら、新葉さんはこの場からいなくなった。


 結局名前を訊き出すことは出来なかったけど、とんでもなく綺麗な人に話しかけられただけでも良かったと思うことにしよう。

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