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匣の街  作者: Mr.Y
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宇宙人は人類社会で暗躍できるか?

『「UFOは宇宙人の乗り物である」というのが定説であり、私もまたそうだと思っている。だが宇宙人は一向にその姿を現してはくれない。

 そもそもUFOは何であるか、という問に宇宙人の乗り物以外に様々な意見がある。秘密兵器、特殊な気象現象、イタズラ(ドローン、合成映像など)、妖怪や怪異(これは私が最近推している説だ)……だがこれといって有効な結論に達しない。

 私はアメリカ政府がすでに宇宙人と接触しておりなにかしらの条約を結び姿を現さないのではないか、という陰謀論を一応支持している。

 けれど一方で別の説もあり得るのではないか、とも思っている。UFOは昔の日本人がみた狐や狸のようなものであるという説だ。

 なぜならアメリカの陰謀論者、UFO研究家たちが膨大な国家予算を精査しUFO研究費をみつけ出そうとしても無駄に終わり、なんとかして宇宙人とコンタクトを取ろうとしても科学的な方法ではなにも成果を挙げられない。オカルトじみた儀式でもUFOらしき発光体を呼び寄せた例はあるが、一向に宇宙人は姿を現さない。そもそもUFOの飛行はあまりに物理法則を無視している。

 数多くのUFO映像をみてきたが、あの飛行を可能にしている科学力となると我々人類が知り得た科学知識を遥かに超える。むしろ超常現象としたほうが説明が遥かに楽だ。

 だから昔の日本人が騙された狐や狸ならば説明が容易だ。狐や狸が夜道を歩くひとを騙す。これは百年前の日本では普通にあることだった。むしろ外国人が狐や狸が出る場所で騙されないのを不思議に思っていたくらいだ。

 いわゆる狐や狸というものは動物を指す言葉だが、動物ではなく「我々を騙すなにか」であった。それはご馳走を振る舞うとみせかけ馬糞を食べさせたり、道に迷わせたり、のっぺらぼうをみせたりする。

 UFOもそれと同じく「我々を騙すなにか」ではないか、とも思う。なぜそのようなことをするのか理解不能だが理解できなさ加減ではUFOも似たりよったりだ。そしてそのどちらも(かなり低い確率だが)目視することはできるが、コンタクトを取ることができない。

 一方で宇宙人はUFOによる飛行はわずかで秘密裏に人類社会に溶け込んでいるのかもしれない。住所を持ち戸籍や免許を偽造し、我々と変わらない姿で(アメリカ政府の国家予算を必要とせず)暮らしながら人類社会を観察し、移動や彼ら独自の観察のためにUFOを使っているのではないか。

 話は少しずれるが、さきほど日本人は当たり前のように狐や狸に騙されていた話をしよう。

 狐や狸が出る場所はおおよそ決まった時間と場所があったらしい。文明開化とともに外国人が来ると日本に在住する者も出始める。そのひとたちが狐や狸が出るとされる場所に行ってもまるで騙されなかったようで日本人は不思議だったらしい。

 今日の日本人は狐や狸なんてただの迷信だ、といえる。だが百年前の日本人には狐や狸はひとを騙すものだった。それは非科学的とか迷信とかではない。一種の日常であり当たり前だったのだ。それが別の社会(外国)からみたらただの迷信にみえた。

 社会のなかで形成された常識や世界観は外からみたならば異質な迷信である場合があるのだ。

 つまり、UFOもUFOという存在を知った社会が特殊な気象現象や人工衛星、流星などをUFOに当てはめてしまったケースがかなりの数、存在している。それを精査しなければならないし、私のようなUFO研究家もUFO界隈から一度外に出て我々の推論を外から精査しなければならない時期にきているのかもしれない。

 そこで私は最近、オカルトに関して調べている。もし仮にUFOを操る宇宙人が我々の知る物理法則を超える科学力、我々人類とは違う思考、視野、社会観を持っているとする。そんな宇宙人が人類に紛れているとすればどこかしらおかしなことが起こるのではないかと思い調べ始めた。

 元々、彼らの一部は人類に擬態し社会に溶け込み観察しているという情報が寄せられてはいた。人類に紛れ込み調査をしている、人類社会の上層部に成り代わり人類を操ろうとしている、などなど枚挙にいとまがない。私はその手の情報については明るくないので、そのことに関する情報は他の方の報告に任せよう。

 今回、私は私の視点で人類に紛れた宇宙人を探してみようと思った。人類より優れた科学力、社会、医療を持つ宇宙人たちがわざわざ人類の科学や社会について調べようとするだろうか。人類社会の上層部に紛れてわざわざ陰謀を張り巡らせるだろうか。どちらも我々の科学力とは比にならない力で人類を蹂躙すれば早いだろう。

(ただ様々な宇宙人が地球にやってきていて、その牽制しあいで直接的なことができない可能性もあるが)

 それらの考えから私は宇宙人が人類社会に溶け込む理由は民族学的、または知的生命体の文明学のような調査ではないか、と位置づけた。

 彼らが天の川銀河の隅にある辺境の惑星・地球へやってきたのは、彼らがその果てなき知的好奇心か、彼らが忘れ去った知的生命体の原始社会を知りたかったのではないか。そうでなければ宇宙人はもっと積極的に人類と接触(コンタクト)をとっているはずである。

 もちろん、私個人の推察であって異論は認める。

 ただ今回はこの方向性で話を進めていきたい。

 私自身が宇宙人で人類社会を観察するとしたらどうするのか? しかも相手は自身とは思考も思想も違うのだ。人類が類人猿を間近で観察するのと同様に注意を払わなくてはならない。人類がゴリラの群れのなかに入って行動を観察することがある。他にもチンパンジーを赤ちゃんのころから育て、その生態を観察することもある。そのどちらも観察者の一瞬の不注意で死亡、もしくは不可逆的な肉体欠損もあり得る。それと同じではないだろうか。相手は野蛮な動物だ。科学力や知能で勝るが一瞬の不注意でどうなるかわかったものではない。だから人類と距離を置きながら調査しているのではないか。

 彼らの科学力を駆使すれば人類社会を調査することは容易いだろうが、もし万が一その技術を掠奪される可能性もある。(それこそロズウェル事件のように)ならば現在の人類の科学を利用しているのではないか。ゴリラが植物を食べるのを真似して群れのなかに入る研究者のように現在、存在し得る人類のツールを使って的確に。

 そこで私はインターネットに関しての宇宙人の話を蒐集し始めた。

 はっきりいえば成果はゼロだ。

 宇宙人の調査らしきものは見当たらない。あるのは怪奇現象や怪異のようなものばかりだ。

 しかし逆説的に考えれば宇宙人の人類社会調査の完成度はかなり高いといえるのではないか。彼らは今まさに人類にまったく気づかれないように自らの知りたい情報を蒐集している。

 どうしてそう言い切れるのか読者は困惑しているだろう。

 つまりは怪奇現象や怪異が宇宙人と密接に関係しているのではないか、と私は考えたのだ。

 つまり人類の持っているスマートフォンやパソコンなども彼らの手によればジャックするのは容易に違いない。

 そう考えれば検索したことがなくひととの会話での情報をスマホが勝手に集め始めたり、頻繁に起こるゴーストタッチなどの怪異も宇宙人のテクノロジーからくる些細なバグのようなものではないか、と思えてきた。

 そこで私は宇宙人というジャンルがオカルトに分類される理由がよくわかった。私は宇宙人やUFOというものは未知を追う科学的なジャンルとしてみており、MUに記事を載せながらもどうして宇宙人やUFOがオカルトに分類されるのか、憤慨していた時期もある。けれど人類社会に紛れた宇宙人とその行動を考えるとオカルトと親和性が高いことに気づかされた。彼らは彼らの理屈で動くだろうからだ。その理屈は人知を超え、不可思議ともいえる振る舞いをするに違いないからだ。

 人類に擬態し社会に紛れ込むより容易く、人類についての情報を得やすい。そして、社会を操作することも容易いのではないか。


 UFO研究家・田島精一郎(タジマ セイイチロウ)


 私はノートパソコンの前で固まってしまった。

 以前書いた原稿で秘密結社<組織>はまるで『ラプラスの魔』のようだ、と書いたことを思い出したからだ。

 いま書きながら自ら蒐集した情報を整理しながら書き出していたら様々な断片が繋がってきた。

「<組織>はもしかして宇宙人?」

 私は呟いた。電灯が照らす部屋の外はすっかり夜闇に沈み、冬の気配のする寒気が部屋にまで侵入してきていた。しかし私の身体に感じる寒気はまったくの別物かもしれない。

 フリーライターでオカルトを追っていたB氏……南魚文(ナンギョ ブン)はもしかして<組織>の正体を知ってしまった。だから消されたのか逃亡せざるを得なくなったのではないか。

 そうなると私の書いている文章もかなり危険ということになる。しかし私は怯えるより軽い興奮を覚えていた。幼き頃みたUFOに思いを馳せ、今日まで様々な情報を得てきていた。その先にこういった出会いもあるのだ。

 私はとある映像を秘密裏に保存していた。

 もうひとつの△市UFO事件の映像だ。それはいまから五年前ひとりの少女がUFOに拐われたときの映像だ。しかしその映像はMUの編集者を名乗るふたり組に強引に奪われた。

 そのふたり組の顔は間違いなく人間だった。しかし顔を思い出せないのだ。彼らに押しのけられ、床に叩きつけられた。その隙に彼らは映像の入ったメモリーカードを奪っていった。私は彼らの顔を忘れまいと近くにあったボイスレコーダーに彼らの特徴を言葉に残そうとしたが、言葉にならなかった。いや、言葉にできないのだ。あえていえばあまりに特徴がなく記憶に残らない顔ともいえるかもしれない。そのときは気が動転していたのか、恐怖により顔を思い出せなくなったのかと思っていた。しかしそれは彼らのテクノロジーのひとつだったのではないか。そうまでして奪い去った映像はなんだったのか。

 その映像は、流星群を写そうとビデオを回したが暗い夜空しかみえないという父親、それを茶化すように笑う母と娘たちの声、すると流星群らしききらめきのひとつが急接近して辺りを照らし、真っ白になったかと思うと瞬時に暗くなり、戸惑う声と娘のひとりがいなくなって戸惑う声が聞こえ終わる、というものだ。

 この映像は一時期、騒がれ出回ったが、その後五年間に誰がどうやったのかわからないが、人知れず消され、あるいは紛失していた。

 考えられるのは宇宙人にとって人類にふれられたくない映像だったのではないか。だからひっそりと破棄していたが、秘密裏に保存していた私をどこかで知り強奪した。

 その映像になんの特徴もないようだったが、なにか重要な秘密があったに違いない。UFO研究家の私が見落とすなにかが。

 だが期せずして南魚さんの所持していた映像をみることができた。彼は用心深く使い古したガラケーのなかに映像を保存していたのだ。その映像を観てもやはり私にはなにもわからなかったが、南魚さんはしきりに魚鱗か鱗状のなにかが映っていることを示唆していた。

 聞けば彼はいわゆる霊感が強いらしい。

 つまりは……五年前△山であった△市UFO事件で現れたUFOはUAP(未確認異常現象)なのではないか。

 つまり宇宙人は妖怪的ななにかを調査しているということになる。しかしなぜ私たちにその存在を知り得ないようにしたいのか? いや、そもそもオカルト雑誌MUの内部も<組織>と繋がっているようでもある。

 複雑な事件だ。これが解明される日はおそらくないだろう。

 私は窓を開け、夜空を仰ぎみた。月が雲を照らし、雲の切れ目から星々の弱い光がみえる。冷たい夜風が頬と禿げた頭を撫でる。しかし、私の心は幼いときUFOをみたときと変わらない。いつか彼らに会いたいと思い願った。なにを考え、なにを語ってくれるのか想像をいまも巡らせている。

 私は確かに宇宙人に出会っていた。

 できることならもう一度別の形で彼らと会い、彼らと語り合いたい。そんな願いもいつか叶うかもしれない。なぜなら私は彼らと一度出会っていたのだから。

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