和三盆のケーキとラム酒
林田村は讃岐和三盆の産地として栄えた。林田村の農家は、新たに水田に畑地を造り、砂糖生産に取り組んだ。林田村の甘藷作付け率は元治元年（一八六四年）には六七パーセントであり、一七〇挺の砂糖車を持っていた。砂糖車はサトウキビの圧搾装置で、明から琉球に伝わった。砂糖車の歯車が噛み合う様子は、まるで村全体が一つになったかのようであった。
林田村で生産された和三盆の大半が天下の台所の大阪へ送られた。和三盆は讃岐の白砂糖と呼ばれて人気であった。金と同じ価値と言われた。砂糖は希少性があるため、贈答用に珍重され、結婚式などの祝い事に使われた。薬屋でも販売され、病人が舐めた。しゃっくりは砂糖を舐めると止まるとも言われた。和三盆は砂糖の名前であるが、和三盆を型に押して固めた和菓子も和三盆と呼ぶ。造形美のある和菓子である。目で見て楽しむこともできる。
江戸時代の讃岐の特産品は塩と綿と砂糖であり、讃岐三白と呼ばれた。林田村は讃岐三白の全てに関係する。讃岐三白の生産と販売によって林田村民の生活水準は向上した。特に商人の経済力は飛躍的に高まった。
林田は林田村の和三盆を使って、伝統的な和菓子だけでなく、洋菓子にも新たな風味を取り入れた。林田の創造力は、和三盆をケーキやドーナツなどの洋菓子に組み合わせることで、新たな味わいを生み出すことによって発揮された。林田村の和三盆が、林田の料理に取り入れられたとき、それはまるで魔法のような変化をもたらした。
「これは…新しい発見だ！和三盆の風味が、洋菓子に驚きの深みをもたらす」
試食した林田は感動した。四国の大地が育んだ砂糖であった。まるで四季折々の大地の魔法が凝縮されたかのようであった。
和三盆の製造時に生じる糖蜜も、林田は無駄にしなかった。林田は糖蜜を蒸留してラム酒を造り、また別の味覚の冒険に挑んだ。このラム酒も林田の創造力と研究熱心さの証であり、林田の料理に新たな次元を加える一環となった。
林田村の和三盆を使ったケーキやラム酒はレストランの客にも好評であった。
「この新しいケーキ、素晴らしい味だね！和三盆の風味が絶妙だ」
林田の新しいケーキを口にした瞬間、その美味しさに驚いた。その風味はまさに絶品であった。口に広がる味わいは、ひとたび味わえば心の奥底に響き渡り、永遠に忘れることのできないものとなった。客達は喜びの表情を浮かべ、料理の美味しさに感銘を受けた。
「そしてこのラム酒、なんて芳醇な香りなんだろう」
林田が提供するラム酒もまた、客を魅了した。そのラム酒は芳醇な香りと深い味わいを持ち、一口飲んだだけで、その贅沢さに感じ入った。
「和三盆は日本の魂が込められた、まさに芸術品のような砂糖です。その風味と深みは、私達の料理に新たな次元をもたらしました」
林田は説明した。
「料理と和三盆のおかげで、素晴らしいひとときを過ごせました」
「これからも、日本の食文化をより豊かにしてくれることを期待してるよ」
林田は和三盆を料理の一部として活用し、その風味を多くの人々と共有することで、日本の食文化に新たな光をもたらす存在となった。しかし、残念なことに林田村のサトウキビ裁判は廃れていった。明治時代以降に安価な砂糖が大量に輸入されるようになったためである。日清戦争後は台湾が植民地になり、台湾の砂糖も入ってくるようになった。
林田村にも前近代的経営という内的要因があった。砂糖の需要は増大したが、生産力強化による価格の低下に対応できなかった。林田村の多くの農家はサトウキビ栽培から塩田に転換することで対応しようとした。しかし、塩田も前近代経営という問題を抱え、小作争議が頻発するようになった。
