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オブリヴィジョン〜意志の旅路と彼方の記憶  作者: 縁迎寺
EX、SSまとめ・ペリュトナイ編
51/151

SS09.セレニウスと在りし日のペリュトナイ⑤

こちらも同様に、仕上げます。

 これまでに獣を相手にすることはあった。当然、その度に討ち取ってきたわけなのだが。しかし今回は容易くいかないだろう。何せ相手はナイトコールズ。それも危険なディスクワイアなのだ。目の前で圧を放つその獅子は、重く構えて立ちはだかる。これを排除しなければ、ペリュトナイの平穏は脅かされる。そして、時間をかけてはいられないだろう。ならどうするのか。答えは決まっている。


「ちょうど、これの鍛錬も兼ねられるわね」


背中のバンドで留められたもう1つの私の剣。約束と共にあり続ける壊劫を、私は抜いて肩に担ぐ。そしてもう片方の手で永劫突きつけて二刀を構える。私の、最大の力が出せる戦闘の姿だ。そうして構えた瞬間、獅子の纏う空気が変わる。そこにあるのは私が何度も向けられた感情、それを更に濃縮したかのようなその感情は、常人であれば向けられただけで卒倒するほどの悪意と殺意だった。どうやらあちらも考えていることは同じらしい。互いに、この一撃に全てをかけている。それに満たない小細工など、ここでは無意味だと思っているのだろう。余計なことなど、もう必要ない。それは互いに一致し、その結果にあったのは渾身の一撃と共にある疾走だった。直後、力と力が衝突し、交差した。


 交差の果て、私と獅子は背を向けあう。胴体に、痛みが走っている。これはかなり深い。これほどの傷を負わされたことも、いつ以来だろうか。さて、向こうはどうなのだろうか。しかしそう思っている私をよそに、聞こえたのは何かが倒れるような重い音だった。振り返ってみれば、そこには墨のように真っ黒な血を流して倒れている獅子の死骸があった。どうやら、私の攻撃が致命傷となったらしい。近づいて確認してみれば、首にある深い裂傷と折れた刃のたてがみ。壊劫により強固なたてがみを砕いて取り去った後で、首を裂いたのだ。ぶっつけ本番だったが、どうやら上手くいったらしい。


「……依頼達成、ね」


付いた血を振り払い、壊劫をと永劫を鞘に納める。勝ったとはいえ、胴体に走る痛みは本物だ。後でスクラのところに行って処置してもらうとしよう。そもそもどうして、ナイトコールズやゼレンホスの軍は、このペリュトナイに襲来するのだろうか。このような辺境の小国家に、何の用事があるのだろうか。まあこのような考え事など、柄にもないし苦手である。それよりも、私に適したことは他にある。明日のことを考えながら、私は王都へと戻った。


 あれから数日たった。私の前で死にそうな顔でぐったりしている男たちは、私と共に戦う部隊の戦士たちだ。レクスレギオンの一件を見て、これまで以上の鍛錬が必要だと、私は考えたのだ。


「まだ今日の工程の半分しか終わってないぞ! さあ、立って立って! ほらイミティオ! 足が震えてるぞ! しっかり、しろ!!」


一見すれば、厳しいように思うだろう。だが、彼らはこの国にいる戦士たちの中でも特に優秀な者たちだ。私についてくる以上、そしてこの国の平穏を絶対的に実現する以上、この体たらくでは困るのだ。こうして私と、私の率いる戦士たち『衛星部隊』の、在りし日の姿であった。だがエリュプスの件によって衛星部隊は壊滅。在りし日の何もかもは、あっけなく失われることになるのだった。

そんなわけで、ペリュトナイ編における短編を消化し終わりました。あとは本編だけです。

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