SS07.番外研究・ナイトコールズ編③
久しぶりにやります。
知識の探求に終わりはない。目の前のすべてを知り尽くすことさえも、終着点とは言えない。今の俺にできることは、目の前に現れ続けるものを知り続けることだ。というわけで、ここからはディスクワイアのページだ。自分でも不明瞭な何かに対する覚悟を決め、そして何よりも大きな好奇心の赴くままに、俺はページを開いた。
俺が思うに、思考を巡らせることは酷く疲れるものである。下手に動くことよりも、それは大きな質量で身体を蝕んでいく。得てしてそれは、没頭からふと我に返った瞬間に、一気に襲ってくるものである。そんな中、いつしか俺は没頭の中で意識を多少保つことができるようになった。だからとて、それは知識の探求の時にしか役に立たないだろう。もっとも、今は知識の探求の最中だ。こうして違うことに思いを巡らせることができるのも、その特技のおかげだ。こうしている間にも、俺はページをめくって情報を取り入れ続ける。
「レクスレギオン……。群れを成す刃の獅子……。強大な統率種……。1つの群れが、数千規模の大軍を壊滅させた……。……凄まじいな。さて次は、レイジエタニティ……。孤高なる刃のハイエナ……。度を越した殺意の権化……。同種でさえ敵とみなす……? レクスレギオンの群れを、単独で壊滅……!? これは、また凄まじい情報を連続して出してくるものだな……」
ページをめくるたびに、常識を超えた情報が入ってくる。ディスペイジの時と同様、あるいはそれ以上の衝撃がそこにあった。数ページめくっただけでこれである。この先には、一体何が待っているのだろうか。好奇心が俺の手を動かす。
「これは……。トバリの上位種、トバリダイオウ……。トバリを凶暴化させるのか……。……過去にこれを利用し、トバリを払った事例があった……? また変わったことを考えるやつがいたものだな……。次。……ティアドロップ。噴出孔を持つ巨大蛙……。水を溜め込み、黒液として放出……。目的は依然不明……。黒液は腐敗した魂の泥であり、特にナイトコールズに対しては致命的な毒となる……。この情報は、詳しく調べてもいいかもしれないな……」
俺の手は止まらない。これ以降も次々に、ページをめくって情報を知識とする。そうしてめくり続ける中で、俺の手が突如として止まった。どういうわけか、次以降ページはどうやってもめくれそうにない。糊か何かで張り付けてあるのとも違う、まるで本自体が開かせるのを拒絶しているかのようであった。違和感を覚えて、めくれなかったページの直前のページを隅々まで見回す。……目的の記述は、ページの隅にあった。
“以降の記述。それは、しかるべき時に”
ただ短く、そう書かれた一文。俺がそれを読んだ瞬間に、ページが勝手に大きくめくれる。そして開かれたページには、ただ大きく、1つだけ。記載があった。
“ディシュヴァリエ・生ける者、死せる者”
ディスクワイアのページに、一体何が書かれていたのか。しかるべき時とは、一体いつのことなのだろうか。それを知る手立ては無い。であれば、することは1つ。
「……ナイトコールズ、ディシュヴァリエか」
俺はページに手をかける。今は、目の前の情報に手を付けるのみ。それ以外にできることが無いのだから。決して知り得ないわけではないと、信じるのだ。
次回、恐らく区切り。