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オブリヴィジョン〜意志の旅路と彼方の記憶  作者: 縁迎寺
EX、SSまとめ・ペリュトナイ編
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SS03.セレニウスと在りし日のペリュトナイ③

一人称視点の方が書きやすいことに気付き始めました。

 私はこれから、ナイトコールズの討伐に向かう。それもただのナイトコールズではなく、危険な部類であるナイトコールズの一種であるレクスレギオンの討伐だ。そのためには、武器を取らなければならない。それも、ただの武器では力不足だ。私には愛用している2つの武器がある。1つは、アマツ国はマウラの里、そこで『伝説の刀匠』と謳われた職人の手による作品の1つである、『永劫』という太刀。もう1つは、同じくマウラの里の、当時新米刀匠だった少年が最初に仕上げた作品である、『壊劫』という大剣だ。普段は携行しているのだが、せっかくの休日というわけなので、整備も兼ねてある場所に預けてあるのだ。他の武器では、ダメなのだ。手になじまないものを戦地で使い、万が一の不足があっては無様でしかない。それに私は壊劫を手にした時、あの少年に誓ったのだ。この剣と共に、無限にも等しい武勇を築いてみせると。そんなわけなので、私の戦いにはその2つが必須なのである。


「こんにちは。急で悪いわね。要件はスクラから聞いてるよね?」

「セレニウス様……! ええ。お待ちしておりました。さあ、どうぞこちらへ……」


入り口で待ち構えていた職員に最低限のことだけ伝え、私は奥へと通される。ここは、ペリュトナイ総合武具研究所。通称『総武研』。ペリュトナイにおける武器の輸入、独自生産、整備、流通を一手に担っている施設だ。ペリュトナイに限らずほとんどの国が使う武具を、自治が認められた工業都市であるキュクロスに頼りきりになっている。キュクロスの武具は大量生産品にしては高品質であるが、無論それだけでは良いとは言えない。独自の武器を使いたがる者だって、少なくはないのだ。なのでここでは、そういった者たちの要望に応えるために、武器の独自生産も行っているのだ。そして、それらの武器の細かい整備なども、専門の職員が執り行っている。まさに、このペリュトナイにおける武力の要と言っても過言ではない。


「それにしてもセレニウス様がここに武器を預けるなど珍しい……。それに頼まれた整備だって、これといった懸念点は見られませんでしたよ? 普段からよく整備が行き届いているのがよくわかります」

「まあ確かに、普段は自分で全部整備するからね。でも今日は久しぶりの休日だったからさ。たまには武力から離れた日常を過ごしてもいいかなって」

「そうでしたか……。それはまた、せっかくの休日を……」

「……まあそれは少し残念だけどさ、不安を抱いている市民を見捨てるなんて出来るわけないじゃない。だったら私の休日なんて、いくらでも潰したって構わない」


そんなことを職員と話しているうちに、私は広い部屋に案内された。多くの鋼材や、加工道具や設備が置かれたこの部屋。そんな部屋の中央にある台に、鞘に収められた永劫とよく磨かれ研がれた壊劫が安置されていた。やはりたまには、本職の手による整備も悪くない。私なんかよりも、良い仕上がりだ。


「ご満足、いただけましたか?」

「ええ。……完璧すぎるぐらいよ」


永劫を鞘から抜いてみると、美しい銀色の刃が顔を覗かせる。極めて良好だ。これなら何の不足もないだろう。私が状態を確認していると、後ろで職員が何か言いたげな顔をしていた。


「……それでは、私はこれで。お代はいつものように軍に請求しておきますので……」

「いや、待って。今回は私個人の依頼だからここで払うわ。……こんなもので良いかしら?」


私は持参した布袋を、武器が安置してあった台に置く。恐る恐るそれの口を開いた職員は、中身を見て目を見開いていた。


「こ、これは……! 過払いです! 流石にこんな額……!」

「私の大事な剣の面倒を見てくれたから、これぐらい当然でしょ? あ、もしお釣りが出るなら、それでみんなと食事でも食べに行ってよ。アゴラに良いビルガメス料理屋が出来てさ。あそこの大味な味付けがまた癖になってね……」


ふと、部屋に備え付けられた窓から差し込む光が目に入る。美しい紅は、今の時刻が夕刻であることを示していた。そろそろ行かねばならない。


「おっと、もう時間のようね……。じゃあ私はこれで! また頼むかもしれないから、その時はよろしくね!」


職員の返事を待つでもなく、私は総武研を後にした。ここからが、いよいよ本番だ。


私自身の都合により、必要に迫られ続ける限り登場していない都市などの名前をバンバン出しまくります。

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