1話 出会い
私は今見知らぬ場所に立っている。
服装は見た事もない…と言うと語弊があるが、普段着ることは絶対に無いと言いきれる服を着ていた。
とても簡易なエプロンドレスのようなもの。詳しくはないから構造がどうなっているのか分からない。先程見つけた川で自分を見れば、それはここに来る前の自分と相違なく…、いや、少し肌が綺麗なような…?
周りを見渡せばそこは街が少し遠くに見える丘の上にいることが分かる。風が気持ちいい。
手持ちは何も無く、普段かけている眼鏡のみ。
むしろここに来て眼鏡も無かったら何も見えていなかっただろう。
その他に何か無いかと周りを良く見るように見渡す。
そうして後ろを振り返ると…。
「わっ!!な〜んて、驚かせちゃいましたね。こんなところでどうされました?お嬢さん」
びっ…、美少年…!!いや、美青年だな!?
少し青みがかった黒髪は後ろで赤いリボンで1つに纏められており、垂れ目で優しそうな深い蒼色をした瞳は真っ直ぐにこちらを見ていた。
服は西洋の騎士が着ていそうなもので、腰にはレイピア…?とにかく剣を佩いていた。
全体的に青い美青年に応えることが出来ずに固まっていると、再度声をかけられる。
「もしも〜し?…ごめんなさい。驚かせすぎてしまいましたね…。失礼でなければ何故ここにいるのか教えていただいても?」
「わたし、は…」
私は、どうしたんだったか。
何故かここにいる理由が思い出せない。
名前は…そう、名前は分かる。私は相田奏。何故かそうちゃんって呼ばれてた。確かにそうとも読めるけど。
でもここにいる理由は分からない。それを正直に言うと驚かれたけど、それならって手を引いて歩き出した。
「もしかしたらここに来た理由を知ってる人がいる…かも知れない。とりあえず何も聞かずに着いてきてください」
その言葉に頷き、私は手を引かれるまま歩き出した。