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4話 囚われの身

「なんでだよ!」


 ログアウトができない!突き付けられた現実に到底納得なんてできなかった。


 俺の叫び声を聞いてモモが慌てて駆けつけてきた。

「どうしたんです。大丈夫ですか?」


「ごめん、何でもない」

 慌てて体裁を取り繕うが、俺の表情は大丈夫という顔はしてなかっただろう。


 モモは俺の不自然な様子を深く追及することはしなかった。


「お腹すきましたよね?取りあえず夕飯を作りますので、できたらお呼びします」


 それだけ言うとおり、モモはそそくさと物置部屋を後にした。


 一旦、状況を整理しよう。


 モモの不自然な言動。モモの反応をみると俺とは直接的な面識はないようだ。そして、俺の知らない母親の存在、リュウという弟。


 考えられる可能性はバグ、または俺の脳内に何らかの障害が起きて、俺の記憶とゲームデータが混同してしまったか…。


 しかし、念のために確認したが、モモのステータスバーにNPCアイコンは出ておらずプレイヤー表記だ。バグによる誤表記も考えられるが…。


 もう一つの問題はログアウトできないこと。これもバグか発生してるとすれば納得はいくが、こんな問題、すぐにサービスが停止されてもおかしくない事態だ。


 昔、ゲーム内で囚われ、デスゲームに巻き込まれるというアニメが一世いっせい風靡ふうびしたらしいが、さすがに現実でそんなことは起きないだろう。


 そもそも、ブランニューワールドでは生命が脅かされるような危険な状態に陥ったら強制ログアウトさせられるはず。

  脳による自己メンテで自身のバイタルや身体状況に異常が生じれば、直ぐに知らせが届く仕組みとなっている。


 ゲームの世界で暮らしたいと思う者は大勢いるだろう。つい先ほどまでは俺もその1人だった。しかし、実際にゲーム内に囚われてみると、そんな楽観的なことを考えれる余裕などなかった。


「レイさーん。ご飯できましたよ」

 居間からモモの声が聴こえてきた。

 できる限りの冷静に努めながら、居間へとむかった。


 取りあえず、今はゲームを楽しもう。

 無駄かもしれないが、モモから話を聞きつつ、ゲーム内でも原因を探ってみるしか出来るとこもないし。


 居間に入ると良い匂いがする。ゲーム内なのにお腹が空く気がした。


 モモはレーズン入りのパンと温かいシチューを振る舞ってくれた。


 一口食べると、現実と比べ、なんら遜色そんしょくのない、味、食感が口の中に行き渡る。

「うまい!」


 俺は現状から目を背けるように、がっついて食事をした。

「レイさん。よっぽどお腹が空いていたのね。リュウくんはどこかに出ていたっきり戻ってこないのよ」

 モモは俺の食いぷりを見て微笑みながらも、リュウの心配をしていた。


「そう言えば、助けてほしいっていってたよな?」


 モモは思い出したように話し始めた。

「あっ…、そうなのよ。最近、村の周辺に黒いモンスターがでるようになったの。それが、ただのモンスターじゃないみたいで、とっても強いの。死人も何人も出ているし、このままじゃ村が壊滅していまう」


 死人…。このゲームはNPCもプレイヤーも死ねばリスポーンする。モモの一連のセリフはNPCのイベント進行のような口振りだけど…実際はプレイヤー。


 ロールプレイしすぎだろ、と言うぐらい、このゲームのめり込んでいる事になる。


 そもそも、あのゲーム音痴のモモが…このゲームをしていること自体あり得ない。


 俺取りあえずモモに核心を突いてみる。


「モモ。リアルでは何してたんだ。俺もさっき気づいたんだけど、ログアウト画面が出せないみたいなんだ?このままだと困らないか」


 モモは薄々予想してた通り、困惑し首を傾げる。


「レイさん、さっきから外国の言葉が多過ぎて、モモにはちょっと分かんないよ」


「そうだよな。ゴメンゴメン」


 やっぱりだ。モモは不自然なくらいNPCのような立ち回りだ。これが、プレイヤーだとすると、最初からこの世界の住民であったような…。


 そこまで、考えていると、突然、激しい物音と叫び声が村中に響き渡る。

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