虚構
作品に関係する事ならどんなものでもいいので、ご意見・感想をいただきたいです。
これは「『他人にはない能力を持っている人』が登場する」という条件で書いたもので、800文字以内の文章です。
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「ねぇ、この人に十万払えば、年収一千万になる方法教えてもらえるんだって。」
そう言いながら、何十枚もの一万円札を扇形に並べて扇いでいる男の人が映ったインスタのストーリーを私の顔面に突き出してきたサナは、何の疑いも持ち得ないようなキラキラした目を丸くさせ、片手でポテトを取って食べている。
「いや、そんなのある訳ないじゃん。絶対ありえないよ。」
スマホを自分の手元に戻していくサナは眉をひそめ何故か神妙な面持ちだ。
「どうかした?」
「え、どうゆうこと?」
「え、何が?」
「え、いや、『ありえない』ってどゆこと?」
「えっと、『現実に起こりえない』ってこと。」
「何で?」
サナの唐突の質問に言葉が見つからず、二人して怪訝な表情で黙り込んでしまった。
先に口を開いたのはサナだった。
「じゃあ、この男の人は現実に起こりえないことを言ってるの?」
「そうだよ!そう言うこと。」
「どうやって?」
「普通に。」
「え?できるの?そんなこと。」
「は?できるに決まってんじゃん。いくよ、んー、あ、私の手の指は六本あります。」
「え?六本あるの?」
「ないよ。ほら見て。」
そうして両手をサナの目の前で広げる。
するとサナは二回ほど目をこすり、何度も瞬きして、そうしてやっと私が言っている事を理解し、スマホを私に見せた時のような表情で、
「これって私にもできるかな。私の手の指はろ、ろ、くっ、あ゛ー。ご、五本あります。」
と少し苦しそうに私の目の前に両手を広げた。