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2,食事

本文に出てくるクロシュとは料理の載った皿に被せられてるアレです。

銀のドーム型の蓋みたいなやつ。


コレを書く為に調べる迄私も知らなかった←

普段使わない言葉だからか違和感が凄い・・・・

(まで)の諸々を思い出していると、寝室のドアがノックされた。

はい、と返すと、

「昼食のお時間ですが、いかがなさいますか?」

とテレーゼの声が。

朝食と晩餐は基本的に家族揃って頂くけれど、昼食は余程の事が無い限り自由。私は何時も部屋に運んで貰っている。

何時(いつ)もの様にお願い」

返事をしてから、空になったカップを持って隣室に移動した。

中央に大きめの机があって、挟む様に二、三人掛けのソファがふたつ。

「今日の紅茶も美味しかったわ、有難う」

「そうですか?それは良かったです!」

カップを渡しながら言えば、花の様な笑顔が返って来た。

侍女と云う立場よりも、もっと親しげに遠慮無く、と求めた後から彼女は割と自然体でいる。(もっと)も、私と二人きりの時だけだけど。

「すぐに昼食お持ちしますね」

私がソファに座ると、彼女はそう言って部屋を出て、少ししてから数枚の皿が載った配膳台車を押して戻って来た。

次々と机の上に置かれる皿は運ぶ際に埃を被る事を避ける為にクロシュが被せられていて、料理が何かはまだ分からない。


きっちりと配膳を終えたのを見届けてから、立ち上がる。

「テレーゼ、昼食に合う飲み物の用意をお願い」

「三人分ですね」

「勿論」

問いに対する返答は流石テレーゼ、確りと私の求める人数分かと確認して来た。私はそれに返してから、廊下への扉へ向かう。

開いて直ぐに横を見れば、警護の為に扉の真横に立っていたアル様と目が合った。

「入って」

短く告げて、私は直ぐに部屋に戻った。断る時間を無くす為。

「レティシエイリア殿下、何かございましたか?」

思惑通り、私に続いて部屋に入って来たアル様は私が座るのを見届けてから困惑気味に私へ問うた。

「座って」

ふわりと微笑みながら正面を示す。

「は、・・・?」

流石にこれには驚いた様で、原作のとある事件―――アル様の人生に於いての重大な分岐点で無実が証明された時の様な顔をしていた。

思わず困惑の声が口から漏れて、私の真意を読みかねるといった様子で幾度も瞬きをしている。


沈黙が数秒。

くすくす、と笑って状況を進めたのはテレーゼだ。

「初めての方は皆さんそういった反応をなされます」

どうぞ、と私の前へカップを置いて、私がアル様へ座るよう指した場所へもカップを置いて。本人も自分のカップを持って私の隣へ座った。

「有難う、テレーゼ」

カップの中味をひとくち飲んでみると、林檎等数種の果実水の様だった。

「殿下は、私達使用人と共に食事をなさるんですよ。ただ食事をしようというだけですから、それ以上もそれ以下もありません」

ですからどうぞお座りください、と言ったテレーゼに、ですが・・・、と渋るアル様。


「職務中だ、と云う事ならば気にする必要は無いのよ?私が頼んでいるのだから。

 それとも貴方は、私達と食事を共にするのは、嫌?」

肯定されたら立ち直れないかもしれない。

そう思いながら、首を傾げてアル様を見上げる。

あぁでも、王女にこんな風に問われて否定なんて出来ないか。狡い事をしてしまったな。

「いえ、そのような事はございません。

 ・・・・ご一緒させて頂きます」

律儀に一礼してから、彼は先程示された場所へ腰掛けた。


では失礼して、と言ってクロシュを取っていくのはテレーゼだ。

銀の半球に隠されていたものは、様々な物を挟んだサンドイッチだった。

「美味しそう・・・・!」

これならば、中庭に行って食べたのでも良かったかもしれない。

頂きます、と全員で手を合わせて、サンドイッチを手に取る。

ひとくち齧れば、マヨネーズのまろやかな甘味とハムの塩気、レタスの程良い苦味が口に広がった。

マヨネーズとハム、レタスというシンプルな具ながらも、絶妙なバランスで挟まれたが為に美味しさが増していた。宮廷料理人は本当に良い仕事をする。


幾つか食べ終えて、果実水を飲んで一息つく。

ちらりと正面を見遣ると、アル様は綺麗な所作でサンドイッチを口に運んでいた。と、直ぐに上げられた目と視線がかち合う。

如何(いかが)なさいました?」

「いえ・・・・

 不愉快だったかしら?御免なさい」

つい見惚(みと)れてた、何て言えない。

そういう訳では、と首を振るでも無く否定する所が、彼らしい。


「そう。それは良かったわ。

 ところで・・・・、私は貴方を何と呼べば良いかしら?」

「何とでも。殿下のお好きな様になさってください」

アル様とか呼べば絶対問題なるけどね。

呼びたいけど流石にやめておく。

「そうね・・・・、では、アルダートン、若しくはアルで構わないかしら」

様が無ければ愛称でも多分問題無い。多分。

「殿下のお好きな様に」

これは・・・・、構わない、と()うより、どうでも良い、って感じ。

さっきから節々の言葉遣いが彼らしくない。


「そう。では、アルダートン。

 私からひとつ命令よ」

食事の手は既に全員止めていたけれど、食事中に命令とは少し不穏だと感じた様でアル様は身構えている様だ。平静を装ってはいるけれど、私には曝露(ばれ)曝露(ばれ)

何故なら、ずっと思い続けていたからか些細な変化も分かるから。一応今日初対面なんだけど。


「今の態度では少し距離を感じるわ。役職もあるし友人の様に接しろとは言わないから、もう少し砕けて欲しいの。

 無理に、とは言わないけれど・・・・」

命令なのに無理にとは言わない、と()うのは矛盾している気もするけど、其処(そこ)はスルーで。

「・・・・畏まりました」

うん、固い。

せめて、“分かりました”とかさ、もうちょっと・・・・



まぁ、初対面だしこれから変わっていく事に期待かなぁ。

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