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スタート地点は魔王城でした

不健康な魔王を健康体にしていくのが最初の目標となります。

笑っていただければ幸いです。

1-0 スタート地点は魔王城でした

トンネルを抜ければ、そこは異世界だった。


……実際は意識を失って気が付いたら中世風の石壁の建物の中にいたのだが、気分的にはそれくらいあっさりと異世界に来ていた。

ネットで中世風と揶揄された、明るい部屋と違い、自分のいる場所は暗い。

ひとつだけ違和感があるとすれば、建物に並んでいる衛兵たちが、人間じゃないって事だろうか。


どう見ても魔王城じゃん!


何?生贄にするために呼び出されたの?

物語の初めに血祭りにされる役なの?

そんな事を考えていると虎の頭に2mはある長身の衛兵が近づいてきた

「おう!お前が我が軍を救う軍師か!なんか弱そうだなぁ!本当に大丈夫かコイツで!」

 獰猛な顔に鋭い牙が至近距離まで近づく。


助けて!俺は食べてもおいしくないよ!


 そんな窮状をみかねてか、女幹部らしき女性が間に割って入る

「まあまあ、マスクル将軍、我々が呼び出した客人に失礼ですよ。控えなさい」

 漆黒の髪に整った顔立ち。頭に角が生えてなければ女優かと思うほどの美人の声に虎顔の魔物は大人しく引き下がる。ほどよい肉付にすらりとした肢体。

元の世界で例えるなら、エリート秘書といった感じだ。

 女性の魔物は俺に向き直ると、一礼した。

「突然の召喚で戸惑っておられる事でしょう」

 まるで国賓を迎えるかのごとき、優雅なしぐさに息をのむ。

「急な御呼び出し誠に申し訳ありません。私は魔王様の秘書を務めておりますニューロと申します。お見知りおきを」

 いかにもデキル女という感じの隙のない女性。

 あの虎男が引き下がったのも分かる気がする。

怒らせたら怖そうだ。

だがそれ以上に気になる言葉が出てきた。

「魔王様?」

 ここは魔王城っぽいので魔王がいるのは当然だろう。

だが目の前の玉座には誰も座っていない。

魔王は不在なのだろうか?


「…フフフ……よく来られた。軍師殿」


 その声が聞こえた瞬間。

 城内にいた衛兵たちの体が『びくり』と震えた。

「魔王様!」

 声の主に対し並々ならぬ緊張を感じたようで、ニューロさんでさえ、うろたえている。

 どこだ、どこに居るんだ?

「余がこの城の主…魔王 ブレインである」

 あれ?変だな?

……今まで意識的に無かった事にしようとしていたのだが、声の主は玉座の隣に置かれたベッドから聞こえてくる。

「早速だが……うぐっ!ゲホッ!ガハッ!ごほっ!!!!」

「魔王様!無理はなさらないで下さい!」

 急にせき込みだした老人を衛兵たちが心配そうに取り囲み背中をさする。

 ベッドの上で息も絶え絶えに顔だけこちらを見ている男。

「お主には、ワシの体の治療ウォッホ!!!ゴホゴホゴホ!!!」

 これが俺と魔王の初対面の瞬間だった。

「ゲホッ!ガハッ!ガハッ!ゴホッ!」

 

うん。オープニングかと思ったけどエンディングだったわ。これ。


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