星遣い
魔法使い達の国とされる自国での「見録生」は憧れの存在だ。
優秀とされる魔法施設、ヘリエイナの上級クラスの中で更に限られた5名。
3年に一度の「観測期」で観測された国を1年間見聞、記録、そして自国へ持ち帰る。
この辺りは魔法、錬金術、占いの3派閥で分かれていて、魔法派閥には国が5つ。
その5つの魔法国には役割があり、この国は「攻撃国」。
攻撃・幻覚魔法に特化している為、偵察系の魔法を使える者が存在せず、他国の情報が無い。
唯一の攻撃国なのにも関わらず、脅威となる国が分からなければ対策も立てられない。
その為につくられた「ヘリエイナの見録生」。
重要な役割で、優秀な生徒で、周りの期待を一身に背負う魔法使いの中の魔法使い。
__そんな中で「星遣い」の属性を持つ俺は、見録生率いる上級クラスの、更に5つ下。
6クラス中6クラスの最底辺……の、中でも更に成績下位者だ。
星遣いとは、星の輝き、熱量、または星そのものを魔力に変えて攻撃を「撃つ」属性者。
属性としては非常に優秀、攻撃力が高く、魔法使い自身の魔力も他属性と比べて多いとされている。
が、それが「この国」では全く役に立たない。
理由の一つ。この国には夜が無い。
何故なら、基本的にこの国に集められる魔法使いの属性には、攻撃力の高い「植物遣い」が多いから。
麻痺、毒、成長力での攻撃や弾丸、精神作用までも行える植物遣いの魔力源は太陽、水。
この国はそんな属性者の力を最大限に引き出すために、星はおろか、必要の無い夜なんてものは創作の世界のものとされている。
理由のもう一つは、「星遣い」が非常に珍しい属性だからだ。
現在魔法派閥の中で星遣いは俺一人。
俺の母が占術派閥での星占い師。
父が光を魔力とする「陽遣い」。
父の属性でさえ国に10人程の珍しいものだったのに、そこに別派閥の力とくれば前例は無い。
魔力源が無い為に魔法すら発動させられないのに、使用例や具体的な魔法内容が分からない。そんな俺に付けられた評価は不名誉な「魔力最底辺」。
そんな日々で自分が本当に魔法を使えるのか疑い始めた頃。
星の力、「光力」ただ1つのみを魔力として扱える国__「アステル」が観測された。