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第一章4話

翌日セクメシティ 某兵舎

「はあ!?死体も何も見つかんねぇってどういうことだ!?」

ルギエスは報告に来た兵にそう怒鳴った。


遡ること深夜

「この辺に落ちたはずだ。捜せ!神子様は屋根の上にいるはずだ」

しかし、現場には何もない。屋根の上にも誰もいない。落ちて此処に兵が来るまでまだあまり経っていないというに。

「『雷銃』の一撃をくらって生きている人間なんているはずがない。もっとよく捜せ!」

結局二人は遺体も痕跡すらも見つかることはなかった。


セクメシティ 某兵舎

「つきましてはエシュールド中隊長に責任があると教主様が特命をお出しになりました」

伝令役はそう言って手にしていた書類を差し出した。

「ええと何々。賊を取り逃がした責任をとり、神子を奪還せよ。コンアートラー・レイア・イシュトル。はああ!?どこに逃げたかも分からないってのに追えってのか?」

「適当に責任押し付けとけって感じですね。詰めが甘かったようですよ」

ルギエスは、頭を掻きむしり、悪態をつくと乱暴に伝令兵に言った。

「特命受理しましたって伝えとけ!ハイギート、小隊長にこの旨伝えとけ。第一第二小隊のみ連れて行く。残りは居残りだ」

「分かりました。出立は何時ですか?」

「準備が出来次第即出立する」

ああ、めんどくせぇ、とルギエスは呻いた。


同時セクメシティ郊外

「イシス、大丈夫?」

「平気、平気。私、砂漠生まれの砂漠育ちよ。深窓のお姫様じゃないんだから」

泡沫とイシスはその頃、砂漠を歩いていた。

 セクメシティを脱出してから二人はケイロンの街に向かっていた。そこで次の目的地を決める予定なのだ。セクメシティからケイロンまで約一日かかる。

「スフレって暑くないの?この炎天下歩かせるのって可哀想じゃない?」

泡沫は、首を振って答えた。

「スフレは魔法が使えるんだよ。だから極地だろうが、砂漠だろうが、大丈夫なんだよ」

「猫なのに?」

「魔法種って言う特別な種族なんだ」

「ふうん。ねえ、ところで魔法ってどんなものなの?」

イシスはいい機会だとばかりに聞いてみた。ものごころついてすぐに、神子として祀られていたので、世間一般常識もあまり分からないのであったから当然であろう。

「んーと、魔法ってのは大気に満ちるマナを自分の内側に取り込んで、呪文によって変化させ魔力に変えて、イメージどおりに放つ。ってかんじかな?」

「???」

イシスにはイマイチよくわからなかったようだ。

「こう、息を吸って吐き出すのに似てるかな?わかる?」

「うーん。呪文ってどんなかんじなの?どんな魔法も同じ呪文じゃダメなの?」

「魔法には属性って言うものがあるんだよ。大まかに分けると八つの属性があって、使う効力に応じても呪文ってのは変わるし、取り込めるマナの量によっても規模の大きさは変わるしねぇ」

この世界でいう魔法を使える人に共通することは、マナを一定以上取り込めるということである。ある一定量のマナが取り込めないと魔法は使えないのだ。また、取り込める量には大きな個人差があり、才能による所が大きい。

「食器みたいなものだよ。魔術師はコップで一般人はお皿。入れられる水の量には差があるだろう」

イシスは、分かったような分かってないような顔をして頷いた。

「ねえ、私も使えるの?魔法」

「俺は、専門の魔術師じゃないからわからないよ」

「ふーん」

不満そうな顔をした。

(こういうことしてると本当、暗い神殿の奥にずっと一人でいて、人を殺し続けた子には見えないよな。普通だったら遊び盛りだったろうに)

「あ、見てみて町、見えてきたわよ」

(なんか、俺も変わったのかも。イシスのあの笑顔、守りたいなんて思えてきた。他人になんて興味持たなかったのに。やっぱり彼女は俺に終わりをくれるのかな?)

「早く早く!」

泡沫は軽く微笑むと、

「待ってよ」

と、追いかけていった。



 ハウレスの町は、この砂漠有数のオアシスで、交易の場だった。

 当然のようにさまざまな人や物が入ってくる。泡沫とイシスのような子供の二人連れという存在が気づかれずには入れたのもここに一因している。


「ねえ、いろんなのあるよ」

(今、誰かがこっちを見ていた)

「どうしたの?早く行くわよ」

「なんでもない。今夜の宿、先に決めようか」

「そうね」



日が、砂漠の海に沈む。


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